
起業で一番大切なことは『原動力』
第14回起業セミナーレポート
セミナー講師:岩井 将太郎 氏(株式会社CAMPFIRE 執行役員・VP of Customer Success)
2017年4月株式会社ZUUに入社後、共同事業やBtoB事業の立ち上げを経て、グループ会社に兼務出向し執行役員に就任。2021年5月株式会社CAMPFIREに入社後は、キュレーターやBtoBマーケティング・インバウンドセールスの立ち上げを行い、カスタマーサクセス部長、2023年3月より同社執行役員に就任している。
テーマ:「クラウドファンディングで起業を加速!~資金調達の新たな戦略~」
国内最大級の購入型クラウドファンディングを運営する株式会社CAMPFIREでの豊富な経験をもとに、
起業とクラウドファンディングの関係性
具体的な活用方法
クラウドファンディングの現状と可能性 について語っていただいた。

クラウドファンディングとは何か?
「お金がない人がやるもの」という誤解があるが、実際には銀行や投資家などの専門家に頼らず、多くの一般の人からインターネットを通じて資金を集める仕組みである。
自分のやりたいことを実現するために、インターネット上でお金や仲間を募る。
新商品や新サービスだけでなく、社会的活動や地域のプロジェクトなど幅広い分野で活用可能。
クラウドファンディングは、単なる資金調達手段にとどまらず、「共感のプラットフォーム」として新たなコミュニティを創出する可能性がある。金銭のやりとりだけでなく、支援者同士のつながりや地域との連携など、多方面への波及効果に注目すると新しい価値が見えてくる。

クラウドファンディングの2つの方式
クラウドファンディングには大きく分けて2つの方式がある。
ALL-or-Nothing方式
目標金額に到達しなかった場合、支援金を受け取れない。
「目標金額を集められないとプロジェクト自体が成立しない」場合に選択。
ALL-in方式
目標金額に到達しなくても、集まった支援金を受け取れる。
目標に満たなくてもプロジェクトを進めることができるケースに向く。
「ALL-or-Nothing方式」しかないと誤解されがちだが、実際には多くのプロジェクトで「ALL-in方式」が利用されている。

起業のファーストステップとしてのクラウドファンディング
テストマーケティングとして活用
新商品や新サービスの発売前にクラウドファンディングを行い、実際にお金を出して購入・利用してくれる顧客層の存在を確かめられる。
市場ニーズを検証できるだけでなく、支援者のフィードバックを受けて商品・サービスをブラッシュアップできる。
2.資金調達
起業時に必要な初期費用・設備投資費用を不特定多数の人々から集められる。
銀行融資や出資者からの投資を受ける前に、まずは小規模に始めたい場合に有効。
3.集客・販売促進
プロジェクトを公開することで、自社や商品の存在を広く知ってもらえる。
「応援したい」という気持ちを原動力に、ファンコミュニティを形成しやすい。
面白いリターンを設計する:活用事例
高専発!学生ベンチャー企業の事例
岩手県の一関工業高等専門学校の生徒たちが「映像で地域を盛り上げたい!」と起業を目指したプロジェクト
支援金目標:25万円 → 実際の調達額:57万1,000円
プロジェクトのポイント:
自分たちのスキルを活かし、地元を盛り上げるために起業を計画
地元の魅力を発信し、町おこしや地域活性化に貢献
地元企業からスポンサーとしてリターン商品を提供してもらい、多くの人を巻き込むことに成功
特筆すべきは、自分たちの商品やサービス以外をリターンとして設定し、地元企業も巻き込んだ点だ。支援者は、応援したい気持ちが高まるだけでなく、地域の魅力ある商品を手にすることでプロジェクトへの共感が一層強くなる。この事例は「自分たちだけで完結しようとしない」ことの価値を示している。地域社会や関連企業を巻き込むことで、個人のプロジェクトが社会課題の解決にもつながっていく。クラウドファンディングを“共創”の場として活用すると、一歩進んだ地域連携モデルが構築できる可能性がある。
Creo Creatorsプロジェクト掲載HP
クラウドファンディング活用のポイント
数百万円から数千万円のような高額を必ずしも集めなくてよい
メディアで大きく取り上げられる高額事例だけが注目されがち。
実際には数万円〜数十万円程度を集める小規模プロジェクトが大多数。
小規模な成功体験から始め、ステップアップしながら成長できる。
リターンはアイデア勝負
自分たちが開発した商品に限らず、「手紙」や「オンライン対談」「広告掲載」など無形のサービス・体験も提供可能。
アイデア次第で無限のリターン設計ができる点が魅力。
多くの人を巻き込む姿勢が大事
一関高専の例のように、プロジェクトの目的や想いを共有して共感者を増やす。
支援者や地元企業など、広く巻き込むことでプロジェクトの成功確率が高まる。
「何のためにやるのか」を明確にする
課題設定を明確にするほど、ページを見た人の共感を得やすい。
「解決したい課題」「叶えたい未来」を丁寧に言語化しよう。
クラウドファンディングを行うタイミング
テストマーケティングの段階:ニーズや顧客の課題を正しく把握したい。
販売開始の段階:最初の顧客を獲得したい。
ファンマーケティングの段階:さらに多くの支援者を集めてブランド力を高めたい。
どの段階でも活用価値はあるが、初期段階に行うメリットは大きい。
1. ピッチのレベル・クオリティが上がる
クラウドファンディングのページを作る過程で、アイデアやプランを深掘りし、どう伝えるかの訴求方法を磨ける。
2. アイデアの納得度が高まり、実績になる
支援者からの資金や声援はプロジェクトの実績となり、客観的評価として他の出資者やパートナーにも示しやすい。
3. ビジネスプランの実現性を高める
一定の資金や仲間を得た状態で事業をスタートできるため、実行力が高まる。

起業を考えている人にとってのクラウドファンディングの価値
●ビジョンを言語化する訓練
自分の想いやアイデアを他者へ伝える力が身につく。
●責任感と実行力が育つ
支援金を受け取り、期待を背負うことで、プロジェクトを前に進める原動力となる。
●市場適応度の検証
実際に支援を集めてみることで、事業アイデアが市場に受け入れられるかを確認できる。もし問題があればブラッシュアップする機会になる。
「ファン」と「ストーリー」を作るプロセスエコノミーとしてのクラウドファンディング
10回以上プロジェクトを立ち上げ、初めは10万円単位だった支援金が徐々に増え、最終的に数千万円規模の調達に成功したケースもある。支援者の声を取り入れてプロジェクトを柔軟に修正していくことで、商品やサービスに対する愛着や共感が生まれる。この継続的なやりとりは、まさにプロセスエコノミーの本質である「共創の物語」を育む。
従来の“完成品を売る”だけの経済活動(アウトプットエコノミー)ではなく、作る過程自体を価値化するプロセスエコノミーが注目されている。クラウドファンディングで支援者と一緒にプロジェクトを育てることは、社会を巻き込む新しい経済圏を生み出す可能性を秘めている。
参加者からの質疑応答

Q.「ALL-in方式」を採用した場合、足りなかった資金は、どのように調達されているのですか?
A.そもそも補わないで、集まった資金の範囲でプロジェクトを進める場合もあるし、再度クラウドファンディングに挑戦してみるという場合もあります。再度チャレンジする場合は、プロジェクトをアップデートする場合が多いです。
終わりに
岩井氏が語ったように、クラウドファンディングは起業を加速させるうえで強力なツールとなるだけでなく、社会やコミュニティとの新しい関係性を生み出す可能性を持っていそうです。これから起業を志す人々にとって、クラウドファンディングは「自己実現」と「社会的価値創出」を両立できる貴重なプラットフォームだと言えるのではないでしょうか。
株式会社キャンプファイヤーHP
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