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「とじこまめ」(熊本県菊池市)

原材料:小麦粉(熊本県産)、大豆、きび糖、米粉、しょうが粉末
製造:渡辺商店
販売:自然派きくち村ネットショップ
http://www.kikuchimura.jp/

ネットショップでは「和菓子」に分類されているものの、ラップを開けたときの香りが和菓子のそれではない。小麦粉の香りが強いのか、どちらかというと、わさび醤油でもつけて酒のつまみにしたい感じだ。ひときれつまんで頬張ると、きび糖のほんのりとした甘みとしょうがのスパイシーな香りが口のなかに広がった。その味わいの隙間から、大豆のつぶつぶとした食感が顔を覗かせる。

熊本県菊池市のかつての暮らしでは、この「とじこまめ」がおやつの王道であり、祭りやお祝い事の場では必ず出されたという。豆を閉じ込めたから「とじこまめ」。シンプルなネーミングだけど、ひらがなで表記すると、呪文みたいに不思議な響きがある。とじこまめとじこまめとじこまめ。

「とじこまめ」に関心を持ったきっかけがひとつある。それは自然派きくち村のネットショップで販売しているものが、昭和55年に初版が発行された「菊池野の手帳」という郷土資料に掲載されたレシピを元にしているという点だ。この本は菊池の食文化を調査・研究を行ってきた伝承料理文化研究会が監修するかたちで発行され、制作には10年もの歳月をかけたという。ただし、オリジナルのレシピをそのまま再現しているのではなく、自然派きくち村のアレンジを施しているらしい。確かに我が家にやってきた「とじこまめ」の味は、訪れたことのない菊池の風景を想像したくなるような滋味に溢れていながらも、決して食べにくいものではない。そのバランスがうれしい。

なお、この「とじこまめ」には大豆の代わりにピーナッツを使ったり、紫芋や黒糖を練り込んだものもあるらしいし、牛乳や油、ゆずの皮を入れるパターンもあるという。おそらく菊池のなかでも地区や家によって異なる味が受け継がれていたのだろう。

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