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巡礼の路を辿る

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熊野古道や大峰奥駈道、高野山など、霊場といわれる場所の巡礼道を辿る。
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時の流れから降りし場所【2014.07 山上ヶ岳・稲村ヶ岳】

前日の夜、レンタカーを借りて大阪を出発する。目的地は奈良県天川村だ。夜道の運転、光のない真っ暗な道を、鹿の飛び出しに注意しながら進んでいく。ふと車を止め、ライトを消すと、吉野杉の林の合間から満天の星空が顔を覗かせていた。その場には僕一人。冷たい空気が肺に一際染みこんでいく。良い登山になりそうだ。 山上ヶ岳というのは、日本でも類をみない女人禁制の山である。かつては富士山や立山などの修験道の山々はみな女人禁制であったが、戦後のGHQの施策により、軒並み廃止されていった。そんなな

自然の暴威、それは人智の及ばぬ力【2013.08 八経ヶ岳】

南アルプスの仙丈ヶ岳登山以降、2014年夏までの写真データが吹き飛んでおり、ついぞ復旧できず。携帯データも漁ってみたが、どうやらこの時期は写真なぞ撮らん、おれは自然を感じるんやという無骨な登山スタイルをしていたようで、登山以外の写真しかなかった。したがって、この空白の1年は写真抜きにして、印象的な登山だけをピックアップしようと思う。 南アルプスを終えた後、私と砂丘(鳥取砂丘で仲良くなった友人)は大峰山最高峰の八経ヶ岳を目指した。大峰奥駈道で知られる修験道の一部。果ては熊野本

祈りの道程を辿る[2013.09 三嶺山]

大学3年生の時分、ありあまるエネルギーを歩いて発散させていた私は、訪問術Cというお堅い名の授業に出会った。授業の中身はお遍路について。短期集中講座といわれる授業で、簡単に言えば、ゴールデンウィーク中の4日間に受講者と先生でお遍路に行って、帰ってからレポートを出せば合格という激ゆる授業である。 総距離1200kmといわれるお遍路。当時、無限に歩けそうな気でいた私にとって、お遍路との出会いはまさに青天の霹靂であった。力尽きるまで歩くのに、これほどうってつけのものはないだろう。授

ビスターリ、ビスターリ【2011.11 高野山町石道】

大学1年、マグマ溜まりのような爆発寸前のエネルギーが身体の内側にずっとあって、それをどう発散させて良いのかわからず、あほみたいな距離を歩いたり走ったり自転車漕いだりしていた。遠出で電車に乗るときはほとんど始発、しかも最寄り駅の電車だと始発が遅いとかで、わざわざ大阪駅まで10kmくらい自転車漕いで、あるときは歩いて行ったりしていた。 夏休みになるといよいよ暇、大阪~奈良を1周するように100kmくらい歩いた。わざわざ神戸まで30km歩いて行ったのも理由などなく、いや理由はあっ