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「モダンアート」のコンポーネントデザイン

この記事は、2017年に公開されたものを転載したものです。

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※この製品は、ドイツを中心としたドイツ語圏でのみの販売予定です


私たちは Essen Spiel ’17 にて、ライナークニツィア氏の名作オークションゲーム「モダンアート」を販売いたします。「モダンアート」は、既に多くのバージョンが存在し、なぜまた新しいバージョン?と思われるかもしれません。私たちは「モダンアート」が大好きで、決定版となるバージョンを私たちの手で作り上げたいという、強いモチベーションがありました。過去に「スタンプス」という、他のものとは大きく違うバージョンを作ったこともありますが、そうではなく、「これぞモダンアート」と言えるようなものです(なお、スタンプスは権利の関係で再販が難しいという理由もあります)。そのために、私たちが培ってきた技術、特にコンポーネントデザインにおけるノウハウを、とことん注ぎ込みました。

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この記事では、そんな想いと共に完成した、オインクゲームズ版「モダンアート」のデザインをご紹介します。細部に至るまでのこだわりをご覧ください。

サイズ

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私たちが最もこだわったのは、そのサイズです。一見カタンのような大箱に見えますが、いつものオインクゲームズの箱が二つぶんという非常に小さなサイズに納めました。

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私たちは、「コンパクトであること」には大きな価値があると思っています。どこにでも気軽に持っていくことができ、スペースを取らずに遊ぶことが出来ます。

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多くのコンポーネントを小さな箱に収めるのは簡単ではありません。単に小さいだけで、安っぽかったり、扱いづらいコンポーネントには価値がありません。これらの両立は、過去に多くのコンポーネントを小さな箱に収めてきたオインクゲームズだから出来たデザインです。

イーゼル

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コンポーネントのひとつに、なんと木製のイーゼルが入っています。これはオークショニアの前に置き、オークションに掛けられる絵を飾るために使います。

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このイーゼルは、正直に言って、箱のサイズを小さくするためには余計なものでした。しかし、これがあると断然プレイの雰囲気が向上し、誰がオークショニアかも分かりやすくなります。これ、本当に最高でマーーーベラスなので、皆様にはぜひ楽しんでいただきたいポイントです。

衝立

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「モダンアート」において、衝立は大切なコンポーネントです。裏にはオークションの種類が書いてあるのが一般的で、サマリーの役割も兼ねています。

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オインクゲームズ版では、サマリーとしての役割をさらに強化し、「各オークションの説明」「人数に応じた、カードを配る枚数と補充する枚数」「ゲーム開始時の所持金の内訳」を掲載しました。久しぶりにモダンアートをプレイする場合でも、あなたはもう説明書を開く必要はありません。

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衝立には伝統的に、著名な都市の美術館がモチーフとして描かれています。オインクゲームズ版でもそれを踏襲しつつ、モダンなアートスタイルに仕上げています。美術館のバイヤーになった気分で、ロールプレイをお楽しみください。

お金

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お金は、コインを入れず、すべて札束のモチーフで統一しました。絵画が非常に高額でやりとりされる雰囲気を味わってください。

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金額ごとに形状を変えて識別しやすくし、同時に、札束が厚くなっていく感じを表現しました。

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また、2mmの厚さを使用することで手に取りやすくし、両面に同じ情報を印刷して表裏の区別をなくしています。小さいながらも、扱いやすさを重視してデザインしました。また、枚数についても、プレイ中に不足することがなく、しかし最小限の枚数になるように研究して構成しています。

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このゲームには、もうひとつのタイル状のコンポーネントが登場します。得点タイルです。お金と得点タイルが混ざって混乱しないように、違う形状を採用しています。

カード

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カードについては言いたいことが沢山あります。

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最も気を遣ってデザインしたのは、カードの両上隅の部分です。手に持って広げた時に、ここだけ見れば、各作家とオークションの種類が完全に判別できるようになっています。作家名の頭文字をとったアルファベットと、オークションの種類を示す名前とピクトグラムが記載されています。両側に同じ情報を入れることで、右利きでも左利きでも、どちらの方向に広げても、同じ情報が見えるようユニバーサルなデザインになっています。

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オークションの種類を示すアイコンが分かりやすいのも特徴です。そのオークションで「実際にする行動」をピクトグラム化することで、何をするオークションか、がすぐに思い出しやすいように考えられています。

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中央には、作家名、存在する枚数、同数の場合の勝者を示すドット (ドットが多い作家は、枚数が同点の場合に勝者になります) が入っており、もはやボードとにらめっこする必要がありません。

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作家の選定にも気を遣っています。アートスタイルが異なり、また、特定の色の印象が強くなるような方々を選びました。これによって、各作家が同じように見えて混乱する、ということを避けました。お気付きの方もいるかもしれませんが、あのモンドリアンも入っています。どの作家も非常に個性的で魅力があるので、ぜひバイヤーになった気分で一枚一枚じっくり鑑賞し、値付けをしてみてください。時には、勝敗とは関係なく、買いたくなってしまうかもしれません。


KAMINSKIとIVORYの絵にはAbleArtCompanyという組織のアーティストの絵が使用されています。AbleArtCompanyは、障害のある人のアートを、デザインを通して社会に発信する組織です。今回、障害者の就労支援に少しでも繋がればと思い、このような選択をしました。

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ゲーム中に最も手を触れる機会が多いカードは、大きさが重要です。小さくても持ちにくいですし、大きくてもシャッフルがしにくくなります。小さすぎず、大きすぎず、ちょうどいいサイズを考え設計しています。

ボード

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ボードは、一目見て必要な情報がすべて分かるようにデザインしました。カードと同様、作家名、存在する枚数、レア度を示すドットが書かれています。もし手札になくても、ボードを見ればすぐ分かります。

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一般的なボードは、作家ごとの縦のつながりは分かるものの、ラウンドごとの横のつながりが弱いものが多く存在しました。そこで、横の繋がりが分かりやすくなるよう、ラウンド数と得点をつなぐ線を入れました。

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また、得点が、ラウンドをまたいでも合計されることが分かりやすいよう、「+」マークを配置しています。

最後に

「モダンアート」は私たちにとって思い入れのある作品です。このような形に仕上げられたことを大変嬉しく思います。ぜひ Essen Spiel ’17 では 6-D101 にお越し頂き、実物をご覧ください!


Game Design: Reiner Knizia
Direction: Jun Sasaki
Design: Hiroko Izumida, Jun Sasaki
Art: Wataru Hikichi, USHIKUBO Ivory/AbleArtCompany, Kanako Okamoto, Piet Mondrian, KAMIJO Mika/AbleArtCompany

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