Dark Age 第一章 分裂した世界の中で

「お互い命張った者同士って訳か……。」
「土居さんは、さすがですよね。そんな環境の中でも、新しくビジネスを確立していらっしゃる。」
清水は、ふと土居の顔を見る。
「あぁ、火葬屋のことか。そんな大したものじゃないさ。ラーメン屋時代のお客さんが、政府関係者で、潰れたあと、たまたまその人と出会う機会があってな。S.E.に入ったあと、肉体がいらなくなるからって、どうするかって話をされてな。自分が焼きましょうか。って笑いながら言ったのが、ビジネスになったってだけさ。」
 点滅している信号を見て、土居はブレーキにそっと足をかける。そのあと、土居は、その信号をじっと睨んだ。
「自分の肉体を処分するって、どんな気持ちなんでしょうね……。」
清水は、視線を下げながら、尻つぼみになりそうな口調でそう呟いた。
「わからねえし、考えたくもねえな。魂は、体があってこそだと俺は思ってる。……と、思っていたとしても、時代はテクノロジー中心の世の中になっちまっている。気持ちだけで、生きていける世の中じゃねえってことだ。……テクノロジーが、人間を支配している現状……か……。」
土居は、フロントガラス越しに映ろう自分と世の中の移ろいを照らし合わせていた。歩道の信号が点滅し、土居が再び、アクセルにそっと足をかける。
「時代は、自分たちを待ってくれませんね。テクノロジーの進化は、とても便利なものだと思っていました。しかし、現実は違いましたね。とても苦しいものにさせている。Grounderにとっては……。」
再び、車は音を立てて走らせる。車の外の景色には、人がまばらにぽつぽつと姿を見せているだけで、以前のような賑わいを見せない。見せているのは、閑散とは違った別の静寂だ。S.E.に向かえば向かうほど、人の気配や賑わいを見せなくなる。
「そろそろ、S.E.のエリアに入っていくぞ。旧式の軽で向かっているとはいえ、気を抜くなよ。」
深く息を吸い、眼つきが変わる。ハンドルを静かに握り直し、備えつけのナビシステムを見た。
「土居さん、現在位置が民家の中を走り抜けてますよ。ちょっと笑えますね。」
ほんのかすかに笑みをこぼす清水。S.E.に向かっている緊張感は拭えなかった。
「清水、なぜ旧式か、わかるよな?」
「もちろんです。」

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