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『東都駿台』−影が薄くなる富士、屋敷の屋根の延長?−『富嶽三十六景』

キョキョキョキョ今日はサントリー美術館で開催されている『もののふの心』を見にいきました。最初は「とりあえず見に行くか」くらいのノリで見に行ったもので、刀剣に特別興味があるわけではありませんでした。

しかし刀剣を見ると武士が本当に生きて、それを抱えて自分が生き抜くために強くなっていった事実が存在することを実感し、絵巻を見ると武士だけでなくその取り巻きも将軍に忠信を持って人生を尽くしていたことも感じます。涙がホロリと出てきました。他には絵巻ももちろん、扇の美しさに初っ端から圧巻でした。

あああああ、ほんとにこの感動というか、余韻を誰かと共有したい!とは思いつつ誰も共有できる人はいないのでちょこっとここで放ちました。笑

図録も当たり前に購入。カバーが銀色にギラギラしてる。キラキラじゃないんです。縦に何本も太さ違って伸びていますが、刀剣を表現しているのかな?ジャケ買いしちゃう。私は屏風絵とか翁面の絵、武者絵をもっと凝視したいと思って購入しましたがもう部屋に飾りたいほど満足。

本当にいい日を過ごしました。写真を撮れなかったのは残念だけど、今も目に焼き付いています。次行く予定の美術館も楽しみでなりません。


さて、本題に入りますが、今日も葛飾北斎『富嶽三十六景』を見ていきます。今回は『東都駿台』

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大きなお屋敷に向かって人々が坂を登ったり降ったり。街並みの奥に聳える富士山。絵の左上にに伸びている大きな松かな?その大きさと富士の小ささが遠近法でコントラストを生み出しています。この木の生えている丘にも家かな?屋敷が立っています。この絵に写る地形が想像つかないほど複雑なんではないかと思えてしまいます。


この絵の舞台は神田川南岸にある高台の駿河台。現在の東京都千代田区神田駿河台です。

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この区画のこと。ここら辺は当時幕臣たちの屋敷が多く集まっていた町であり多くの記録が残されています。一つに斎藤月岑著の『江戸名所図会』の「駿河台」の項目で富士の名所であることが記されています。

因むと、これまたお馴染みの河村岷雪さんの『百富士』「駿河台」が富士の名所として記載があるようです。

もっと因むと、駿河台の近くの現在でいう千代田区神田小川町三丁目に「富士見坂」という坂があるらしく富士の眺めのよさが直接地名になっています。


この絵の右下、というか真ん中下あたりに秘かに流れている川があります。これは神田川であり、富士を眺めている立ち位置からして神田川の北岸。この大きな木がある丘は神田上水の懸け樋と水道橋の付近に位置する本郷1丁目のあたりだと言います。

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ちょうど東京ドームシティのあたりでしょうか。


この駿河台という土地を題材にしたのは、他にも歌川広重『不二三十六景』「東都駿河台」を描きました。

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丘の下の武家屋敷が並んでいるのは北斎とも同じ描写ですね。右真ん中奥に見えるのは江戸城であるらしいです。広重のは富士は富士、屋敷は屋敷、丘は丘。でそれぞれの存在感を持って描かれています。

それに対極して北斎は斜面の茂りや人々の動き、屋敷の屋根、大きな木の手前の景色に意識を持って行かせる。そして「あ、これは富士を描いてる作品集。富士はどこだ、、あった。そこかい。」と思わせる富士の素朴さを生み出しています。誰の絵を見ても存在感を放つ富士を、ここまで影を消せる北斎の腕はすごいのですね。


今日はここまで!


#葛飾北斎 #北斎 #富嶽三十六景 #東都駿台 #駿河台 #歌川広重 #サントリー美術館 #もののふの心  

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