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本当に「生徒のためにすべきこと」が分かる!学校改革スタートブック【書籍レビュー】

はじめに

これは「希望の本」です。誰にとっての希望か。
僕は以下の4つの立場の人にとっての希望だと感じました。

①教師
②生徒
③親
④社会

つまり、全ての人の希望です。

特に読んでいただきたいのは①の教師の方々です。
校長・教頭先生や教育委員会などの権限のある方だけでなく、
主幹・指導教諭や学年主任、
または
教師そのものは好きなのに、
「働き方」がきつく、この先続けることを想像すると、笑顔になれない若手の先生に、一度読んでいただきたいです。

何が書かれているか

異動の希望者も少なく、長時間労働が当たり前になっていた150年近い歴史のある学校の
「思い切った改革のほぼ全て」 
が書かれています。


目次と別に書かれていることをまとめると、

・なぜ、改革をすることになったのか
・どのように始めたのか
・教師・生徒はどう変わったのか
・どんなトラブルがあったのか
・改革の真っただ中にいた人(元校長、PTA会長)や、
 その変化を見てきた方々による振り返り
などです。

あなたの学校でも可能なのか

「これはこの学校だからできた」と言ってしまいたくなる人もいるでしょう。上司次第だと考える方もいるでしょう。
しかし、現場で奮闘する先生でも、年度の切り替わりでできるようなことも書かれています。

逆に、できることならそうしたいと日々感じているリーダー的な立場の方には、どのように組織として変えていくのかのポイントがまとまっているように感じます。

「昨年していた」は理由ではない

この本に再三出てくるワードとして、「ゼロベースで考える」があります。
年単位でやること、その流れが決まりがちが学校では、特に難しいけど大切な考え方に感じます。
「○○って、毎年しているけど、何のために?」
これを考えることが大切なのだと感じます。

もちろん、全てのことに(過去には)前向きな理由があり、行うメリットがあったのだと思います。
それを7つの視点という明確な基準で、どうするかを見極め、義務教育機関としてより優先順位の高いことに集中することができたのだと受け止めました。

で、何が希望なのか

ここからは、最初に書いた希望の理由についてです。

①先生方にとっては、誰も異動したがらない学校がこれだけ変わったのだという前例を知ることができます。
「みんな耐えているから」
「学校ってそういうものだから」とならずに、
「こんな事例があるんだ!」とまず知ることは、知らないことと大きな違いではないでしょうか。

②生徒にとっても、「よかれと思って」「昨年もしていたから」のような理由でさせられることが減ります。先生が時間的・精神的な余裕をもって関わってくださることは、日ごろからの声かけや態度に少なからず影響します。


頭ごなしに否定されたり、困りごとを聞いてもらえなかったりすることも減り、信頼できる大人が増えるのでないかと思います。

生徒の成長に家庭が大切なのはいうまでもありませんが、家庭の事情も様々です。私自身、特別支援教育支援員として生徒に関わる中で、学力やコミュニケーションに困り感のある生徒の多くは、家庭にも課題はありそうなのは事実です。

しかし、家庭に介入促すよりも、そんな子供らも「学校ではのびのびと、成長を実感できる」場所になるのは大切なことだと思います。

③親にとっても希望です。昨今「別に公立学校に行く必要もない」という意見の親御さんだっているでしょう。そんな意見の根底には、今の公立学校の時代に沿わない指導内容や、教師の関わり方に対しての価値観が表れているのではないかと感じます。

「生きる力」というざっくりした、しかし大切な力を、似たような年齢の友達とともに学んでほしいという思い。一方、指導要領を詰め込むのにいっぱいいっぱいで、できない困り感に寄り添うこともできず、自己肯定感を下げられるような生活なら、僕だって他の選択肢を探します。

しかし、今回書籍に書かれたような事例を通して、子どもがこんなに元気に成長してくれるんだとなると、「公立学校で学んでほしい」と思う親も増えると思います。

④社会にとっても希望です。これから日本・世界を支える未来ある子ども達に、時代にあった教育が実践されることはとても価値のあることです。
「学校で学んだことなんて意味ない」なんて揶揄されることは昔からありました。そういった社会とのずれが徐々に拡がってきて、今が働き方、学び方双方を大きく変えるチャンスなのだと思います。その1歩目が学校改革なのだといえます。



真面目で一生懸命な集団(=先生方)だからこその自己犠牲に終止符を

当たり前なのですが、1日の時間は限られています。
当たり前ですが、働く時間だって決められています。
「したらいいこと」を判断基準なくやるとしたら、働く「以外」の時間を「がんばって」使うしかありません。
このがんばりが、日本の学校全体で限界にきています。
つまり、頑張り方を見直す必要があります。

やめる=サボる(などのネガティブな価値観)に対して


書籍ではこの点についても言及されています。ビジネス界の名著「なぜ人と組織は変われないのか」でいう、行動を阻む価値観ともいえます。

生徒のために「積み上げる」ことばかりしてきた学校業界は、同じく生徒のために「削減する」ことも同等、今となってはそれ以上に価値のある事だと意味付けを変える必要があります。それを組織としてしてくためのヒントも書かれています。

学校以外の組織改革でも有効です

 この本に書いてあることは「学校以外でも転用できる」と気づきました。
僕が元々働いている医療・介護・福祉業界も、この積み上げ方式で苦しみやすいです。

対象となる「患者・利用者さんのために」という大義名分のもと、やることばかり増やしがちです。
「明確な方針・判断基準をもって、今している業務をゼロベースで見直し、勇気をもってやめる」これができていない組織に属する人なら、ヒントをもらえる本です。

おわりに

教員でもない私を、モニターとして選んでくださった学陽書房の皆さん、そして学校というほぼ全員が通る道に、新しい希望の道を拓いてくれた大分大学教育学部付属小学校に関わった皆様に、深く感謝いたします。

※一人でも多くの先生が読んでくださるよう、この本は僕が支援員としてお世話になった学校にも献本させていただく予定です。


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