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担々麺屋の中華そば

今日は沖縄そばを食べに行くんだ、と決めていたのに、いざ店に行ったら「本日分は終了しました」と張り紙がしてあった。なんてことだ。僕が有名政治家の息子だったら「今日の分がないんだったら明日の分を出せ!」と大暴れして店の扉を破壊、警察沙汰になるがもみ消してもらい、気分転換に地下室で秘密のパーティーとしゃれ込むのだが、残念ながらというか幸いにというか僕は有名政治家の息子ではない。終了したものはどうしようもないのですごすごと引き下がることにした。

しかし、食べられないとなるとなおさら食べたくなるのが人間あるあるである。逃した魚は大きい、という言葉を思い浮かべるにも沖縄を引きずるあまり映画「ソナチネ」のポスターの真っ青な魚が思い浮かぶくらいには後ろ髪引かれていた。なんくるないとはとても思えない。全然なんくるなくない。むしろなんくるある。なんくるあるさぁ~。

引っかかるのは「本日分は終了しました」という文言である。張り紙としては、店が閉まっていることを伝えられればいいのだから「準備中」でも「CLOSED」でもいいはずだ。それをあえてこの文言を選ぶのは、「あまりの人気でもうなくなっちゃいました!サーセン!(片手を後頭部にあてて舌をペロリ)」的な意識が多少なりともあるのだろう。もちろん早々に完売するのは店としては誇らしいことだからその気持ちは否定しない。腹が立つのは、それを見てまんまと飢餓感を煽られている自分の単純さに対してである。

沖縄そばへの思いを引きずった僕は、近くの担々麺屋に入って中華そばを注文した。担々麺屋で中華そばを頼むのは、方言が売りのタレントをわざわざゲスト声優に起用して標準語を喋らせるくらい意味不明な行為に思えるがこればかりは仕方がない。今の僕の口の状態には、担々麺よりも中華そばの方が圧倒的にフィットするのだ。

沖縄そば屋には後日リベンジしよう。僕は決意を新たにした。できれば平日の開店直後に行くのがいい。そうすれば確実に食べられるだろう。ここは沖縄ではない。のんびりしてはいられないのだ。担々麺屋の中華麺はとても美味しかった。

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