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「故人らしさ」が苦手な人は、「納得のいく」葬儀を

「あなたらしい葬儀を」「故人らしいお葬式」と聞いて、「何がその人らしさだろう?」と考え込んでしまう人はいませんか。難しく感じるようなら、「納得」をキーワードにしてみてはいかがでしょう。納得のいく葬儀を叶えるためのヒントをご紹介します。

「故人らしい」という表現に躊躇してしまう人へ

故人らしさを大事にした葬儀を行えば、遺族にとってきっとかけがえのない想い出になる。最近、多くの葬儀社はそんな葬儀を目指し、「らしさ」を大切にしましょうと遺族に提案しています。

葬儀社が「らしさ」にこだわる背景には、これまでの反省があります。かつてほとんどの葬儀社は、同じような内容の葬儀をパッケージ化し、販売してきました。同じ祭壇、同じ棺、同じ葬儀演出、同じ花。「違うのは遺影だけ」というのは、決して大げさな言い方ではありません。

しかし今は高齢多死社会。さらに個々人のスタイルを尊重する時代。まわりの人と全てが同じ葬儀では、満足してもらえません。必要な物をひとまとめにするパッケージ商品という基本は変えないにしても、遺族へのヒアリングで生花の色味を故人の好きだった色に統一したり、供物に好物を取り入れたり、会葬御礼の挨拶状をオリジナル文面にしたり。葬儀社は、「故人らしさ」を出すことに尽力してきました。

ただ、「らしさ」という表現に立ち止まり、考え込んでしまう人もいるはずです。「お母さんらしいって何?」と考えをめぐらせたとき、何を思い浮かべても「らしい」と感じられない。葬儀の準備をしているとき「自分らしい葬儀」について考えてみても、よく分からない。そういう人は、きっととても真面目なのでしょう。

また、「故人らしさ」「自分らしさ」をと言われても、「何となく気恥ずかしい。普通のお葬式であればそれで構わない」と首を振る、ちょっと照れ屋な人もいるでしょう。

「納得」という視点で葬儀を考えてみる

「らしさ」という言葉が苦手なら、「納得」という視点で葬儀を考えてみてはいかがでしょう。例えば葬儀の価格が破格に安いとしても、祭壇や棺などの葬祭用品が粗末すぎる物だったら、納得度の低い葬儀になってしまいます。一方で、高額の葬儀プランを組み、葬祭用品や料理の品質レベルが高かったとしても、スタッフの対応が悪ければ、やはり納得度は高くなりません。

葬儀の納得度を高めるには、以下の5点について、「他のものではなく、なぜそれを選んだのか」を自分で理解する必要があります。

  • 規模感

  • 祭壇や棺などの葬祭用品

  • お料理

  • 葬儀社とそのスタッフ

  • 費用

それぞれ、どう選べば納得につながるかを解説します。

規模感に納得するための考え方

親族だけでなく故人や遺族の友人、近隣関係、会社関係など、縁ある人全てを参列対象にする葬儀を「一般葬」といいます。対して、親族を中心とした少人数の葬儀を「家族葬」といいます。人間関係が希薄化した現代では、家族葬の方が主流になりつつあります。

多くの葬儀社には「一般葬プラン」や「家族葬プラン」が用意され、それぞれ想定される参列者の規模が違います。一般葬は50人以上、家族葬は20人~50人を想定しているのがほとんどです。

規模感に納得するために大事なのは、「たくさんの人に偲んでもらいたいから一般葬プランにしよう」「親族しか呼ばないから家族葬プランにしよう」とざっくり決めるのではなく、葬儀に来てほしい人をしっかりリストアップすることです。

親族、友人、知人など、さまざまな人の顔を思い浮かべながらリストアップしていくと、他でもない自分の葬儀に何人訪れるのかが分かります。大事なのは、あくまでリストの人数によってプランを選ぶこと。すると「一般葬だから、あの人も呼ばなきゃ」「家族葬だから、この人は呼べない」などと、言葉に縛られることがなくなります。

葬祭用品のデザインや素材は納得度に大きく関係する

祭壇や棺のデザインはどの葬儀社も同じと考えていませんか。実は、意外にそうでもありません。とくに棺は、取り扱っている棺メーカーによって、葬儀社ごとにラインナップが違います。

できれば複数の葬儀社に祭壇や棺のパンフレットを見せてもらいましょう。祭壇については、パンフレットに載っていない事例をタブレットなどで見せてくれる葬儀社もあります。自分の感覚で「これが好き」と思えるものが見つかれば、それが正解です。

また、とくに棺は素材に注目してみましょう。合板材の棺は安価ですが、安価であればあるほど他国で不法伐採されたものである可能性も否めません。出所の確かなものに頼るのが安心です。

エコロジーに関心のある人、亡くなってもなお社会貢献をと望む人には、環境に配慮した棺がおすすめです。例えばオーク材を再現したフェイクウッドと国産杉の間伐材でできた「エコフィン オルタナ」は、木材の使用量を半分にし、森林を守りつつ燃焼時のCO2削減に寄与します。

エコフィン オルタナ

料理の質はおもてなしを重要視する人ほど大事

葬儀に参列する人にとって、料理の「美味しい」「美味しくない」は最大と言ってもいいほど重要なポイントです。後になって、「他の葬儀と比べて○○だった」と語られるのも、大抵は料理のことです。おもてなしを重視する人ほど、料理の質についてはこだわりましょう。

しかし料理については、葬儀社が提示するパンフレットからはその品質がなかなか伝わってきません。写真で分かる料理内容や金額のランクを見て決めざるを得ませんが、もし「あのお通夜で食べた料理が美味しかった」と言った記憶があるなら、そのときと同じ葬儀社を候補に入れて検討しましょう。実際に自分が食べて美味しかったという記憶は、選択の納得度を高める大きなポイントになります。

葬儀スタッフの対応がよいと納得度はかなりアップする

どんなに素敵な祭壇、高品質の棺、最高の料理で葬儀ができても、葬儀スタッフの対応が悪ければ納得度はかなり低くなってしまいます。一方で、葬儀スタッフの対応が良ければ、それだけで納得度は高まります。

以前、参列者の立場で利用したことのある葬儀社の中で「スタッフの対応が良かった」と記憶しているところは、ぜひ候補に入れましょう。また、最初に電話で打ち合わせの申し込みをするときから、スタッフの対応には注目しておきます。あまりにぞんざいと感じるところは、やめておいたほうが無難です。大事なのは、スタッフの受け答えを聞いて、自分がどんな気分になるかです。

「このサービスがこの費用で行えるなら」という感覚を得られればベスト

最後に、費用の納得度について。安ければ安いほど納得度が高まるとはいえません。「選んだ葬祭用品や料理の品質から見れば、妥当な金額である」という感覚が大事です。もちろん、自分が考えている予算に沿った金額かどうかも、検討材料になります。

予算をオーバーしてしまっても、「このサービスにこの金額なら」と納得できるのであれば、そのままのプランでいけるかどうか家族で話し合いましょう。もし、どうしても金額を抑えなければならなくなったら、「どこを削れば、納得度の高い状態を保てるか」という視点で見積もり資料を見直してみましょう。

複数の葬儀社を落ち着いて比較しよう

ここまで読んでくださった方はお気づきでしょうが、納得のいく葬儀を行うためには、できれば生前に準備しておきたいものです。複数の葬儀社をリストアップし、見積もり相談や見学を重ねる中で、自分なりの「納得のしどころ」が見えてくるでしょう。

生前の準備ができなかった人も、あきらめることはありません。病院からは「早く故人を霊安室からお連れください」と急かされ、病院からの搬送を依頼した葬儀社からは「搬送だけでもいいですが、割高になります」と言われ、焦ってしまうかもしれません。しかし、可能であればいったん故人を自宅に休ませ、落ち着いて複数の葬儀社を比較検討しましょう。

身内からも、親族からも「早く葬儀社を決めなさい、葬儀日程を決めなさい」と急かされるかもしれませんが、今は火葬場に空きがなく逝去日から葬儀まで1週間かかるといった事態も珍しくない時代です。葬儀社探しに1日ほど使っても、さほど支障はありません。「納得」をベースに、一度限りの葬儀を後悔のないものにしましょう。


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