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訃報を葬儀後に出す人が増えてきた?進む葬儀のプライベート

近親者のみの参列とする家族葬が流行する中で、周囲への訃報を葬儀後に行う動きが見られます。その狙いはなんなのでしょうか。そして、デメリットはないのでしょうか?訃報のタイミングについて解説し、葬儀後に出す訃報の例をご案内します。

従来、訃報は亡くなってからすぐに出された

訃報とは、人が亡くなったことを知らせるものです。訃報には、亡くなった人の氏名、年齢、葬儀の日程、式場案内など葬儀参列に必要な情報が盛り込まれます。訃報の手段はさまざまで、ハガキや手紙、電話、メール、新聞のお悔やみ欄などなど。ご近所が葬儀の手伝いをしてくれる地域では、分担して訃報を関係者に配ることもあります。

訃報の目的は2つ。故人が亡くなった事実を知らせることと、葬儀の日程を知らせることです。訃報を受け取った人はその時点から葬儀参列や供花の手配など準備を始めるので、訃報は早ければ早いほど良いとされてきました。訃報が遅れると、供花や弔電の手配が間に合わなくなったり、喪服を調達できない人が出たりと、悪い影響が出やすくなるためです。

亡くなる人が増えても記載が増えないお悔やみ欄

長い間、訃報を出すのに重宝されてきたのが新聞のお悔やみ欄です。新聞の地域欄にあるお悔やみ欄では、その新聞の購読エリアの人が亡くなった際、故人名や葬儀の情報を掲載します。遺族が連絡先を知らない人も、お悔やみ欄で情報を見つければ葬儀に参列してもらうことができます。広告面を利用する死亡広告とは違い、お悔やみ欄は無料で、葬儀社を介して依頼します。

高齢多死社会となり、新聞のお悔やみ欄がだんだん増えてきたかといえば、必ずしもそうではありません。一部の地域を除くと、お悔やみ欄は縮小傾向か、ほぼ変わらない分量を保っています。なぜかといえば、お悔やみ欄を利用する人が減ったためです。

近年、近親者のみが参列する家族葬が流行しています。家族葬をするのであれば、お悔やみ欄は利用しません。お悔やみ欄を利用してしまえば、新聞を読んだ誰かが葬儀に駆けつけるかもしれないためです。

また、お悔やみ欄の利用者の中には、葬儀後の報告をする人が増えました。故人の氏名や年齢を記載し、「葬儀は家族葬にて執り行いました」とするのです。その後に、故人や遺族による感謝のメッセージを添える人もいます。

葬儀後に公表される著名人の死

訃報を葬儀後に行う著名人も増えてきています。所属事務所の発表が、逝去からかなり経ってからのものである場合、「葬儀は近親者のみで行った」と付け加えられていることが少なくありません。

高名であればあるほど、訃報が流れれば全国に動揺が広がり、葬儀にはたくさんのファンが駆けつけるかもしれない。混乱を避けるため、遺族に負担をかけないためにも、葬儀が終わってから公表しよう。所属事務所の、そんな配慮が見て取れます。

家族葬なら、葬儀後の訃報は理にかなっていてデメリットなし

もし家族葬を行うのであれば、訃報は葬儀の前と後、どちらが良いと思いますか。

「葬儀が終わってから知らせるなんて不誠実」「もっと早く知らせて欲しかった」そんな言葉を投げかけられるのを恐れると、葬儀前に訃報をすませてしまいがちです。しかし、葬儀前に訃報を行うと、喪主の電話が鳴りっぱなしになったり、近親者以外の人が葬儀に駆けつけたり、大量に寄せられる供花や香典へのお礼が大変になったり……せっかく家族葬を選んだのに、喪主の負担は減りません。

もちろん仕事関係など、参列対象者でなくとも身内の死を知らせなければならないところはあるでしょう。しかし、こと家族葬にあっては「不要不急」の訃報は負担を招くもと。心静かに葬儀を終えたければ、訃報は葬儀後が正解です。

「でも、それでは『もっと早く知らせてくれていれば』といった苦情が出てしまう」と不安な人もいるでしょう。心配だったら、葬儀後に出す訃報には、喪主の電話番号を載せるのをやめておきましょう。住所を記載すれば、連絡先としては十分です。

葬儀後に出す訃報の例

ここで、葬儀後に出す訃報の例をご案内します。ポイントは3つ。「最初に故人の名前、年齢を明記すること」「葬儀は家族葬で済ませたと伝えること」「香典、供物を辞退する意向があれば、それを伝えること」です。

【葬儀後の訃報の文面例】

去る○月○日 (続柄)(名字)(名前)が永眠しました
葬儀は故人の遺志により家族葬にて執り行いました
ここに生前のご厚誼を陳謝し 謹んでお知らせ申し上げます
弔問 香典 供花につきましては辞退申し上げます
○○年○月
(住所)
(氏名)

葬儀後の訃報の文面例

喪中はがきで知らせるのもあり

訃報は、葬儀後すぐに知らせなければならないわけでもありません。逝去をすぐに知らせる必要がないと感じる人に対しては、年賀状を欠礼することを伝える喪中はがきで知らせてもいいでしょう。喪中はがきは11月から12月上旬頃までに出すものです。逝去のあと、すぐ喪中はがきのシーズンになるようでしたら、全ての人に喪中はがきを出すことで訃報に替えても差し支えありません。

【喪中はがきの文面例】

喪中につき年末年始のご挨拶を謹んでご遠慮申し上げます
本年○月 (続柄)(名前)が○歳にて永眠いたしました
早速お知らせすべきところでしたが 故人の遺志により
葬儀は家族葬にて行いました
生前のご厚誼に深謝いたします
なお弔問 香典 供花につきましては辞退申し上げます
○○年○月
(住所)
(氏名)

喪中はがきの文面例

プライベートな死、ミニマルな見送り方

人間関係が希薄化してきた昨今。それを寂しいと感じる人もいれば、家族を大切に思う機会が増えたと気づく人もいるでしょう。死が思い切りプライベートなものになった現代には、ミニマルな見送り方が似合います。誰にも気兼ねすることなく、自由な送り方ができる時代ともいえるでしょう。

かけがえのない人を、こぢんまりと、ひっそりと、しかし濃密な時間を感じながら送るために。

どんな見送り方ができるか考えた上での葬儀なら、きっと心穏やかな時間が過ごせます。


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