ショートショート:闇の迷宮と光のモヤ

私は元気のない君の心の中に足を踏み入れてみた。そこは真暗な迷宮の中。おどろおどろしい黒い者達がこちらの様子を伺っていた。心細く歩みを進めるが、不思議と真暗も黒い者達も悪さはしてこなかった。そうだ、ここは大切な君の心の中。この暗闇は不安や恐れの象徴なのかもしれない。もしかしたら、君が私のことを守ってくれているのかな。そんな気がした。それで、もしかしたらきっと先には泣いている君がいるのかな。助けに行くからね。と思い直して、私はそろりそろりと進んでいった。大丈夫だからね。大丈夫だからね。と小さく唱えながら。

前方にぼんやりと明かりが見えた。大切な君の心の芯についたのかな。辺りがぼんやりと明るく、そして温かくなった。優しい光に満ちていた。そうさ、こんな風に君は優しいんだ。光のモヤは優しく温かく辺りを照らしていた。その光のモヤの中に映っていたのは、君が大切にしている人たちの笑顔だった。君のお父さんお母さん兄弟姉妹お友達……。あれ? 私も? こんなに優しく笑っている。私はとてもおどろいた。なんでなのかな、不意に涙が溢れてきて、涙に君の心の中の光がキラキラと反射して揺らめいた。その光と温かさの揺れに、どうしたら良いのかわからないまま、たまらなくなり……。

私は目を覚ました。目の前の君は、スヤスヤと眠っている。少しだけ安心したように寝息を立てている。ありがとう。大切な君へ。おやすみなさい。大切な君へ。

#忘れられない恋物語

#眠れない夜に

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