あなたの生きる世界が今日も美しくありますように。

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最近の記事

朝のおにぎり

今日はご飯を柔らかめに炊いた。 固めが好きなあの人はもういないから、好きな加減で炊ける。 昨夜から土鍋で浸けている白米の様子を見ると水が少なそうだったので、少し足して火にかける。湯気の出具合と音でタイミングをみて止める。 実家のご飯炊き土鍋は蓋の縁が欠けていて、そこから溢れる泡の量で止めるタイミングをみていたっけ。私のは欠けていないから、泡が出なくてこの間底を焦がしてしまった。 20分蒸らしたら炊き上がり。 ぎりぎりおにぎりにできるくらいの柔らかさ。今日のお腹の調子にはち

    • 夏の夜

      景色に紛れていられるように今日は既製品の服を着た。昨夜遅い時間に食べたものたちが腹の中で重い。向かいの家の屋根に落ちる雨の音を聞いていた。 幼い私に母が買ってきた歯磨き粉の味を唐突に思い出す。おそらくいちご味。好きではなかったが人工甘味料は記憶に残りやすいのだろうか、はっきり味を感じる。 自らの手で命の幕を引けると知ったのは、小学校へ上がる前の夏だった。あの時もひとり畳に寝そべって、天井の模様がぼやけたりくっついたりするのを眺めていたのだった。 なんとなくもったいない気

      • 私はかわいそうじゃない

        鬱の体験談を読んで完治できると知った。 それでも心の奥底では治らなければいいのにと思っている自分がいる。そもそもこれは病気じゃなくて気合いでなんとかなると無理したことだって何回もある。今までそうしてきたから。そうしなきゃいけなかったから。 治ると私が一番信じてあげなきゃいけないのに全然できてなかった。 鬱のままでいたらみんな気を遣ってくれるし優しいから。自分が一番かわいそう、だからこっち見て、慰めて、優しい言葉ちょうだいって。どこまでも他人に求めている。これじゃいつまで経っ

        • クルクマ

          ちくちくと心に棘がはえた 相手に対する棘のはずなのに 自分もそれに傷付いている 眠りにつく前に考えていたら 夢の中にも持っていってしまったらしい そして分かった ああ そうか 私だ お前もこうだったと見せられているのだ 共感してもらえず正論を言われ むくれている私が重なるのだ 真っ直ぐに私を見つめる あの瞳にはなれない

        朝のおにぎり

          羊と眠る

          朝、目が覚める前から今日はどこかへ出掛けようと決めていた。昨夜からそんな予感があったのだ。カメラを2つ鞄に入れたが重かったのでフィルムだけにした。 今日はあちこちで入学式らしい。 真新しい大きめの制服に身を包んだ新1年生とパステルカラーの着物のお母さんが桜吹雪の下を歩く姿はまさに春。途中電車で通りすぎた駅の名前が桜駅だったのも気分に合っていた。1本前の電車が遅れ、それに続いて速度を落として運行していたので、ゆっくり景色を眺めることができた。 電車を降りた後バス乗り場が分から

          羊と眠る

          掌小説 オートミールクッキー

          少し早めの夕飯を作っていたら、突然君がオートミールクッキー食べたいと言い出した。 今?ご飯作ってるんだけど。 最近オートミールにはまっているらしく、今食べたいと言う。仕方ない、言い出したら聞かないので作ろう。そんなに時間かかるものじゃないし。 刻んだチョコが入っているのがいいとのリクエスト。レシピでは一口大に丸めて潰すとあったが、ザクザク割るのが好きらしいので、ざっくりとまとめて大きな1枚のクッキーにした。 オーブンに入れたら20分。 ベルが鳴ったが聞こえてないので、出し

          掌小説 オートミールクッキー

          ビーガン3年目になったので、改めて食について考えてみた

          ビーガンは好き嫌いなのか ご飯を作りながらふと考えていた。 ビーガンという概念がなかったら、私は好き嫌いが多い人ということになる。 例えば、子どもがピーマンを嫌いというのにはきっと理由があるはずだ。でもそれをうまく言えない。苦いとか美味しくないとかそういう言葉になる。それで大人は納得しないので、嫌いなものもちゃんと食べなさいとなる。 大多数の大人はピーマンを食べられないほど苦いと感じてはいないだろう。自分も通ってきたであろう道なのに、今自分が苦くないものを苦いと言われても

          ビーガン3年目になったので、改めて食について考えてみた

          繊細な感受性を持って生まれたことにはきっと意味がある

          Highly Sensitive Person→HSP 英語の意味通り繊細な人という意味。 障害や病気ではなく、そういう気質を持っているということ。 人口の2割がHSPと聞くと少ないような、5人に1人と聞くと意外と多いような気もする。実は身近な人もそうだったりするのかもしれない。 思い返してみると、私は小さい頃から「よくそんなこと気付くね」とか「神経質すぎる」「刺激に弱い」と言われてきた。アトピーがあったり、街での生活がうまくいかなかったり、今は食生活がビーガンなのもきっ

          繊細な感受性を持って生まれたことにはきっと意味がある

          冬の朝

          目が覚めた時、風の音を聴いた。 何時に寝ても、朝6時に目が覚めるようにできているらしい私の体内時計は、今日も正確だ。 階段を降り、ストーブの前でぼんやり窓の外を眺めていると、黒から青へ、そして白へと色が変わっていく。 グラデーションな景色に名前をつけた人がいたのだろうな。人々はこれを朝と呼ぶ。 ストーブの温度を上げた。 それでも部屋は寒い。 蛇口から流れる水に触れると、体中の細胞がきゅっと音を立てて目覚めそうな冷たさ。 触れたのは指先なのに、その冷たさはすぐさまお腹まで

          冬の朝

          初めてのお葬式

          葬儀に出席したのは初めてだった。 胃がんで胃と十二指腸を全摘出した叔父が亡くなったと母から連絡が入り、2日後の飛行機を予約して実家へ向かった。 葬儀に出るという実感はあまり無く、実家に行くけどそんなにわくわくしちゃいけないよな、くらいの感覚。 初めて喪服を着たときも、いつもと違うテイストの服を着たくらいにしか思わなくて、こんなに普段の気持ちでいいのか少し戸惑ってしまった。 当日も葬儀が始まるまでは改まった場所で少し緊張していたものの、ほぼ普段通りだった。 が、いざ葬儀が

          初めてのお葬式

          理想の暮らし

          私の家にはカーテンがない。 なので、晴れた日はおひさまの明るさで目が覚める。 起きて正座して背骨を伸ばす。 部屋の窓を開け天気を知る。 家の中を抜けていく風が少し肌寒いくらいだ。 トイレに行って顔を洗って歯を磨く。 そして塩水で朝の鼻うがい。 床の埃が気になったら掃き掃除。 舞い上がる埃が多かったら、吸わないように畳の部屋だけ掃除機を使うときもある。 掃除は気になったらする。 気にならなければしない。 毎日しなきゃと思うとしんどいときもあるから。 朝ごはんは朝決める

          理想の暮らし

          ビーガンやめました宣言とその後

          自分がビーガンですと言っていたときは、100%喜びではなかった。 ビーガンやめましたと宣言してから、実際に肉魚などを食べているかどうかよりも気持ちの面で楽になった。 これは食べていいもの、こっちは食べないものと知らないうちに区別をしていたのだ。 大好きなパン屋さんへ行っても、これはちょっと卵が入ってるから食べれないとか、牛乳使ってるから買えないとか、アレルギー表示ばかりを見て気にしていた。(表示してくれているのはとてもありがたかったし、アレルギーを持っている人はこういう気持ち

          ビーガンやめました宣言とその後

          自己表現としての服作り

          服を作る仕事をしていますと言うと、お仕立て屋さんですかとか、どこかで縫製を担当してるんですかと訊かれることがある。 私がやっていることは、自分の内にある言葉にならないなにかを、言葉にすることなく自分にも自分以外の人にも見える触れる形にすること。衣服という形には実はそんなに拘っていない。物作りが好き、手仕事が好き、細かい作業が得意、布や糸が好き、そして日本のもの、となると着物に関わる手仕事を選ぶということになった。 自分では覚えていないが、母の話では3歳から針を持っていたらし

          自己表現としての服作り

          ビーガンやめました。

          夜ご飯にカツ丼を食べた。 カツはお肉のカツ。 卵もかつお出汁も使っている。 完全にビーガンになったのは、去年の6月。 つまり1年と2ヶ月間動物性のものを選ばない食生活をしていた。 卵は2年ぶり。お肉はおそらく3年ぶりだろう。 卵の殻を割る感覚が懐かしく新鮮だった。 ビーガンだった間に、かつお出汁を使った味噌汁を2回、知らずに飲んだことがあった。 1回は飲み終えてから「ごめん、かつお出汁使ってた」と言われ、自分が気づかなかったことに驚いたしショックだった。味覚が敏感になって

          ビーガンやめました。

          アトピーというメッセージ

          朝起きると腕が疲れている。 寝ている間ずっと体中を掻いていたからだろう。 目を開けても全部開かない。顔を洗って水で冷やしてようやく普段の半分くらい開いた。 肘の内側、鎖骨周り、胸から脇にかけて、お腹背中、下腹部、鼠径部、膝の裏。ひりひりじわじわして触らずにはいられない。1箇所掻き始めると続けてあちこち痒くなる。止まらない。エンドレスだ。 来る日も来る日も治まらない痒みと、掻いたあとがひりひり痛む。服を着るのも躊躇われるほど肌が敏感になった。 出始めたのは今年の2月頃。 精神

          アトピーというメッセージ

          食べるということ

          私にとって料理や食事は大切なことだ。 食べることは好きだし、誰かのためにご飯を作ったり、どんな料理を作ろうかと考えながら買い物するのも好きだ。 でもひとつだけ苦手というか、避けてきたことがある。それは、誰かと一緒にご飯を食べること。 ひとりで食事をすることは「個食」と呼ばれたり、あまり良いイメージはないと思うのだけど、私にはどうしてもそれが落ち着くのだ。 誰かと食事をしていると、きっと楽しいには楽しいのだろうし、楽しめているところもあるのだろうけど、ずっと緊張している。ひ

          食べるということ