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晴れの日の美しさと雨の日の美しさと

「ミルフォードはスペシャルだよ。」

その言葉を聞いて、行きたくなった。


私は基本1人で旅している。でも、完全に1人ということはなく、色んな国の人と出会って話をする。それはトレイル上であったり、泊まったキャンプ場や山小屋だったり。集まる人はもちろんトレッキングが好きな人ばかり。景色の素晴らしさをシェアしたり、情報交換をしたり。その時、他のオススメのトレイルを聞くようにしている。

「次はニュージーランドに行こうと思ってるよ。」そう言うと、ニュージーランド出身の人や行ったことがある人が皆、口を揃えてこう言うのだ。「ミルフォードはスペシャルだよ」と。


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世界一美しい散歩道と称されるミルフォードトラック。山が好きな方は名前を聞いたこと、あるかもしれない。苔むす森と、氷河によって削られた壮大なU字谷、花崗岩の山々。そしてゴールはニュージーランドの代表的なフィヨルド、ミルフォードサウンド。53.5kmの美しい道を4日間で歩く。ここは世界中のハイカーの憧れの場所だ。
私もずっとずっと、いつか行きたいと思っていた1人。3年ぶりのニュージーランドで、ハットの予約を取ることができ、4日間歩いてきた。

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ミルフォードトラックがあるフィヨルドランド国立公園は、雨が多いことで有名だ。年間で200日以上雨が降る。それ故に、様々な苔が生えている。ニュージーランドで500種類の苔があるというのは驚きだ。

ハットの予約は半年以上前にしている。歩く日に天気が良いかどうかは運次第。もちろん私も雨が降ることを覚悟で、トレッキングに臨んだ。

初日と2日目は素晴らしい快晴だった。歩いている他のハイカーと、ラッキーだねと話をする。どこを切り取っても絵になる。ここは気軽に来れる場所じゃない。天気が良いうちに沢山の写真を撮ろう。夢中でシャッターを押して、自分の目に焼き付けた。

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3日目は雨だった。それもバケツをひっくり返したような豪雨と強風。晴れていたらなんてことない道に、苦戦する。土は泥濘み、滑りやすい。トレイルは水かさを増していき、それは小川のよう。水を避けられる所はなく、じゃぶじゃふと浸水した道を歩く。ゴアテックスの靴や服はもはや機能しておらず、全身ずぶ濡れ。大雨ではザックカバーだけでは足りず、バックパックの中にも水が入ってくる。雨対策が甘かった。寝袋が濡れてしまった。

視界はゼロだし、写真も撮れない。カメラを出せば、防水カメラ以外は水没してしまうくらいの雨だ。

ニュージーランドの雨をナメていた。こんなに違うのか。洗礼を受けた気分。でも、ミルフォードなんだから、雨が降らないと歩いた気がしないもんね。そう自分に言い聞かせる。

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それにしても、雨は当たり前のこととして受け止めているハイカーが本当に多い。

ニュージーランド出身の方に聞くと、雨が多いのは普通みたいだ。天気は予測できず1日で夏と冬の両方を体験することだってある。日本よりも自然に触れることが身近で、ハイキングが国民的趣味であるニュージーランド。みんな自然の美しさと厳しさを知っている。ハイキングのことはトランピングというのだけど、しっかり準備して、みんなトランピングを楽しんでいる。


女性のハットレンジャーはこう言った。
「私たちは太陽が、晴れがいいな、と思うけど、木々や苔にとっては雨は大切なの。彼らは保水力がないから、晴れ間が続くと、元気がなくなってしまう。私は雨の日の翌朝の森が一番好きよ。だって植物たちが生き生きしているもの。」キラキラ目を輝かせて、彼女は私に教えてくれた。


雨の日の翌日は青空だった。山々が素晴らしいのは以前からだったけど、びっくりしたのは、木々たちの、その緑の色だった。

まるで自分の目が緑のフィルターを通しているような、そんな錯覚におちいる。本当にリアルな色なのだろうか、自分の目を疑う。それほど、雨の日の翌日の緑は美しかった。

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雨での経験と、翌日の美しさと。今までより雨が好きになれた。

ミルフォードトラックは私に、晴れの日の美しさはもちろんのこと、雨の日の美しさも教えてくれた。そしてみんなが言う「特別な場所」というのを感じることができた。



◆ミルフォードトラック◆

ニュージーランド南島、フィヨルド国立公園にある53.5kmのトレイル。 一方通行で3泊のハットの予約は必須。定員40名。毎年6月上旬に来シーズンの予約がスタートするが、ミルフォードトラックは予約開始日に全ての期間のハットが埋まってしまう。ハットの予約ができた人のみ、交通機関の予約可能。食事はないので、全ての食糧を持ち込むこと。トレッキングを開始する前日か当日にテアナウのDOCへ行って、ハットチケットをもらう必要あり。

https://www.doc.govt.nz/parks-and-recreation/places-to-go/fiordland/places/fiordland-national-park/things-to-do/tracks/milford-track/

個人で歩く以外に、ガイド付きツアーがある。値段は3倍以上するが、ハットとは別のゴージャスな宿泊施設に泊まれる。食事も提供してくれる。

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