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娘が、歩いたんだ。(エッセイ)

娘がついに、歩いたんだ。
自分の足で、歩き始めたんだ。

娘が歩いたということは、入園規定を満たしたので来月から保育園に通い始めるということだ。
娘が歩いたということは、数年後にはその足で大きなランドセルを背負って学校に行き始めるということだ。

立ち上がったけれどまだほとんど歩けなかった1歳4ヶ月。
(周りの子はみんな歩いている…娘も早く歩かないだろうか)

手を繋げば少しずつ歩けるようになったが、まだハイハイが主な移動手段だった1歳5ヶ月。
(ちょっと待て、本当はできることならずっとこのハイハイ姿を見ていたいし、入園だってしばらく後でもいいのだ…)

親心は、いつだって複雑だ。

手を離してでも大分スタスタ歩けるようになった今、1歳半。
私は未来のいろんな娘の姿を想像する。

幼稚園の運動会のかけっこで一生懸命に走る娘。
ぴかぴかのランドセルを背負い、緊張した様子で桜の木の下を歩いていく娘。
遅刻しそうになりながら、食パンをくわえて中学校へと駆けていく娘。
いつか頬を赤らめながら、好きな人のもとへ走っていく娘。

これから長い道のりのなかで時には大きく躓いて、挫折することもあるかもしれない。
私はいつも半歩後ろで見守って「こっちの道はどう?あっちはどう?」とおせっかいをしてやるのだ。

胸を熱くしてそう決心している私の数歩先の路上、繋いでいたはずの手を離して気付けば娘が先を急いでいた。
ほらほら、一緒にゆっくり進もう。

娘がついに、歩いたんだ。
自分の足で、歩き始めたんだ。

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