HRBP導入を成功させるための3つの条件
HRBP導入を成功させるために、満たすべき条件は3つあると考えます。
条件① HRBP導入への機運を高める
HRBP導入は、経営戦略と密接に連携した組織変革の一環です。そのため、経営層がHRBP導入の目的や意義を深く理解し、積極的に支援することが不可欠です。
具体的には、他の経営陣や事業責任者に対してHRBPの導入意義を明確に示し、そこに経営資源を投入することが必要です。経営層がコミットメントを示さないまま導入を進めると、現場の反発や人事部門の負担増加など、さまざまな問題が生じる可能性があります。
また、導入後も、経営陣は現場の協力関係を促しながら、HRBP導入によって起こる変化に対応することが求められます。HRBPを導入した後もその活動自体を評価しながら常に改善を進めることも大切でしょう。
条件② HRBPを機能させるための環境をつくる
次いで、大切なのは、HRBPを機能させるための人事組織を構築することです。HRBPを単独で事業部門に送り込んだとしても、それはあまり効果を発揮しません。
HRBPの提唱者であるデイビッド・ウルリッチ氏は、HRBPの概念と同時に、その組織の在り方として「3ピラー・モデル(Three-pillar model)」を唱えました。具体的には、CoE(Center of Excellence)、HRBP(Human Resources Business Partner)、HRSS(Human Resource Shared Service)の3つです。HRBPを単独で導入しても大きな変化は生まれづらく、CoEやHRSSも同時に組織に備えることが大切です。
1 CoE(Center of Excellence): 人事機能の中心的な存在です。組織全体の人事戦略を練り、経営的な視点から人材と組織の基盤を築き上げます。同時に、最新の理論やトレンドを社内外から収集し、これらの情報を組織内に普及させる役割も担います。
2 HRBP(Human Resources Business Partner): 人と組織の側面から各事業に対するビジネス変革を推進する役割です。事業戦略を理解し、それに対応した人事戦略を立案・推進します。また、CoEが構築した仕組みを事業部門に導入し、その効果を最大化する役割も担っています。
3 HRSS(Human Resources Shared Services): 人事業務の効率化やオペレーション遂行を担う存在です。給与計算や勤怠管理などの型業務を担うだけでなく、これら業務の効率化を遂行することでCoEやHRBPが高付加価値な活動に集中できるように支援します。
HRBPだけでなく、同時にこうした組織を構築することが重要と言えます。
※出典:著者名、「書籍名」、出版社名、出版年、P. ○○
条件③ HRBPを担う人材を確保する
そして最後に何より重要なのは、HRBPを担える人材を確保することです。
HRBPには幅広いスキルが求められますが、特に必要だと考えられるのは次の4つに関わるスキルです。
1 企業・事業戦略の理解: 外部環境変化(過去から中長期予想)を踏まえて全社/事業戦略の方針・方向性を理解すること。また、全社/事業戦略上の課題について仮説を持つこと。
2 人事・組織開発の理解: 組織開発を含む、人事組織領域の幅広い知見をもとに、戦略実行上の組織人事課題におけるキードライバーを特定すること。
3 変革を導く実行プランの策定: 特定した人事組織課題の解決に向けて、具体的な変革施策として実行可能な形に落とし込むこと
4 実行におけるファシリテーション: これらのプロセスにおいて、ステークホルダー(事業部長・本社人事・経営等)を巻き込み、意見を抽出し、合意を得ながら計画実行ができるファシリテーション能力
さて、こうしたスキルを有するHRBP候補が社内に多く存在するかと言えば、なかなか適切な人材が見つからないのが現実でしょう。適切な人材が見つかれば、既に自社の組織文化も理解しており、組織内の他メンバーとの信頼関係も築いているため、心強いものです。ただ、実際はHRBPに必要なスキルを有している人材は少なく、実際にはHRBP候補を探し、育成する必要があります。その際、時間とコストが懸念点でしょう。
一方で、そうした人材が育つのを到底待てないとなったとき、外部調達も視野に入れる必要があります。外部調達する場合は、自社にはない経験を有しているため、新たな視点をもたらし、組織の成長と変革を促進してくれる可能性があります。また、既に他社でHRBP経験を有しているのであれば、即戦力としても期待できるでしょう。ただ、外部からHRBPを採用しようとする場合、うまく自社の組織文化に適応できるかどうかが難しさとしてあります。採用においても、しばしば高いコストを支払う必要もあるでしょう。
このように、内部登用か外部調達か。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、状況や目的に応じて最適な方法を選択することが重要です。以降は、内部登用を目指す際に押さえるべきポイントを解説していきます。
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