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【夫婦巡礼】無職の夫婦が800km歩いてお店を出す話【旅物語】③

こんばんは!おぐてらです。

日中が暖かくなってきて、幸せな気分です!

お花見したい気持ちを抑えつつ、今日もお付き合い頂けたら幸いです!

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■宿探し(アルベルゲとは)

僕達夫婦とモモちゃんは、一先ず今夜の宿を求めて歩くことにした。

カミーノ(巡礼の旅)では、主にアルベルゲと呼ばれる巡礼者用の宿に泊まる事が多い。

公営の宿と私営の宿があり、公営の方が安い。(大体6ユーロから12ユーロのイメージ)公営のアルベルゲは収容人数が多い宿が多いけど、設備自体は簡素なものが殆どで、自炊設備と男女混合ドミトリー形式の二段ベッドのある簡易宿と言うイメージ。

一方で私営のアルベルゲは収容人数は多くないが、オーナーのセンスが良いとオシャレな内装だったり、設備も快適だったりする。その分公営のアルベルゲよりは、少し割高な印象。

その他の宿としては、野宿(宿かな?)ホステル、ペンション、ホテルから、贅沢にパラドール(国営の、とっても素敵なホテル)と言う手もある。

その時々の体調や気分、予算で自由に選べるのも、巡礼の楽しみの一つだと思う。

僕個人的には、たくさんの旅人で埋め尽くされるドミトリー形式の公営アルベルゲは、「これぞ旅!」と言う雰囲気を感じられるのでおすすめだと思っている。

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僕達の記念すべき最初の宿は、石畳の坂を登りきった所にある【refuge】と言う公営アルベルゲに決まった。1人10ユーロ。日本円で1100円程度だから、日本の感覚で言えば格安だ。

何より、refugeと言う名前が気に入った。

refugeは、【救済】の意味がある。

昔の巡礼路は現代のように整備されたものではなく、人々は厳しい条件の中、日々歩き信仰を深めようとした。そんな過酷な精神の旅路の途中で、まさに救いの手をさしのべる場所だったのだろうからrefugeと言う名はこれ以上無いほどピッタリだ。

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■はじめての晩ごはん

夕食を探しに皆で街をふらつく。

色々迷ったあげく、夕食はパンにした。

【ボカディージョ】と呼ばれる、サンドイッチを作ってみたかったから。

ボカディージョは巡礼におけるスタンダードフードと言うか、皆さんのソウルフード。

固めのパンに色んな具材をはさんで食べちゃう、シンプルだからこそ病みつきになる!

皆で食料品店に入って具材を物色。

こういう時に飲食業の血が騒ぐ…とは言え、余計な物を買い込むと次の日の歩きがキツそう…そんな買いたい欲求と買っちゃダメな理性が交差しながら、結局は無難なトマト、ハム、レタス、チーズ、それとリンゴだけ買うことにした。

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それなりに美味しい仕上がり!

「色んな食材挟んで楽しいね!」とは妻。

妻はお酒も好き、結構美食家な所もある。僕自身は質より量なところがあるから、「こんなものも良いんじゃない?」なんて目新しいものを教えてくれるのは本当に助かる。

■夕食後の1人散歩で

夕食後、僕は1人で街を散歩に出掛けた。

時刻は20時過ぎだが、まだ周りは明るい。

ヨーロッパは日本より日が暮れるのが遅い。旅慣れた人に言わせれば「そんなこと」だろうが、そんなことでさえ初体験の瞬間は新鮮で刺激的だ。

日々暮らすことに精一杯になっていると、そんな些細な気付きや刺激に鈍感になる。

旅は、そんな日常をリセットして、自分を真っ白にしてくれるから好きだ。

真っ白な自分に、色んな刺激が色とりどりに染め上げていく感じ。

800km歩いていくと、僕や妻はどんな色になるんだろう?楽しみで仕方ない!

色々考えていると、丘の上のシタデルに出た。シタデルとは一言で言えば【城塞】だ。

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ここから街が一望できる。

不思議な感覚だ。この街は、そこに暮らす人々の日常と、これからスペインを横断しようとする旅人たちの非日常の入り交じった場所なのだ。どちらも同じ時間軸で進むのに、意味合いが全く異なる。

そして、(これは日記と言うか、振り返って今僕が思うこと)この旅人たちの非日常も、歩みを重ねるごとにまた捉え方が変わっていく。

何と言うかこの旅は、うーん…【不思議】

今はそうとしか言えない。

しかし、間違いなく言えるのはこの丘の上から見る街並みは最高だ。

それだけは、僕も、かつてこの街を統べていた王様も同じ想いだと確信できる。

ピレネー山脈に抱かれたサンジャンの街並みは、間違いなく美しい。

■キムさん

アルベルゲに戻って寝る支度をしていると

1人の初老の韓国人男性に話しかけられた。

「こんばんは。巡礼は初めてですか?」

そう声をかけた男性は、キムさんと言った。

巡礼は2回目で、今回は奥さんと弟夫婦と一緒に歩くのだそうだ。

「日本には仕事でよく行ってね。とても良い国、良い人たちだ。」

「明日から一緒に歩く仲間だ。宜しくお願いしますね」

そう言ってニッコリと微笑んだ。

とても柔らかな印象で、素敵な人。

普段色んなしがらみを持つ日韓の関係だけれど、少なくともそんな確執は二人の間にはありようもなかった。

言葉と表情には不思議な力があるものだ

キムさんのお陰で僕は、巡礼の初夜をとても穏やかな、温かい気持ちで過ごすことが出来たのだった。

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本日もありがとうございます。

これで初日がようやく終わるわけですが

【カミーノ】【クレデンシャル】【アルベルゲ】【ボカディージョ】など聞きなれない言葉が出てくるのでそれも少し説明させていただきました。

明日から本格的に歩き始めるわけです。

宜しければ、またお付き合いくださいませ。

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