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Ethereumのガス代高騰にみる高額なサージプライシングへの課題感

EthereumのGasPriceの高騰

年明けからEthereumのガス代金が大きく上昇しています。(厳密には昨年の末から高い状態が続いていました)
Ethereumのガス代金は、例えるならば送料のようなもので、Ethereumで作成された商品を運ぶことに使われ、支払った金額は配送業者(厳密にはマイナー)に支払われるため、本体のサービス運営とは切り離して考える必要があります。
ガス代が大きくなったと言われてもピンとこないかもしれませんが、下記のキャプチャは、ある0.02Ether($30)の商品を購入するために、0.1Ether($180)の送料がかかることを意味しています。

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Ethereumというネットワーク手数料は、その時の需要と供給に基づいて変動するため、送金するタイミングによってその手数料が異なってきます。これらのネットワークは運営者のいない非中央集権を目指して作られているため、その時の需要と供給によって、バランシングされているため非常に公平な仕組みであるとも捉えることはできますが、一方で需要が高まりすぎると、トランザクションの発行が高額になってしまうわけです。

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https://ycharts.com/indicators/ethereum_average_gas_price

原因の主なところはDefiの注目における部分とEthereum2.0のリリースにおける点など複数の要因によるものと思われていますが、当分はこの状況が続くとみられています。DAppsRaderなどをみると、Ethereumを基盤にしたゲームより、EOSなど他基盤のゲームが上位を占めており、もしかすると、これらもEthereumのガス代高騰が影響しているかもしれません。あまりにも高いガス代は、ユーザー離れを引き起こす可能性があるため、Ethereumを基盤とするアプリケーション開発者は頭を悩ませています。

Uberでも問題視されていたサージプライシング

アメリカのウーバーは「バリアブル・サージ・プライシング」、リフトは「プライム・タイム」とそれぞれ言われている仕組みがあります。日本のタクシーのように、深夜早朝は一律2割り増しにするのではなく、都市別の利用者の動向をリアルタイムでモニタリングを行い、混雑時には、割り増し料金の倍率(サージ)が掛け合わせるようになっている仕組みです。深夜や正月などドライバーに動いてもらうためには必要な仕組みである一方、自然災害などの想定外の自体に、料金が著しく高くなってしまうことは、非常に問題であると言われています。また、ドライバーは大挙して急騰地域に向かうため、到着する頃には供給不足は解消する一方で、特定の地域のサービス提供が疎かになってしまうという課題もあります。


増えていくダイナミックプライシングのサービス

ここ数年、サブスクリプションと同じくらい話題にのぼることの多いダイナミックプライシングというキーワードですが、最近では、ネットスーパーの配送料などにも適応する事例が登場しました。

イトーヨーカ堂、ネットスーパーの配送料に「ダイナミックプライシング」導入
https://online.logi-biz.com/28984/

国内アーティスト初採用!ダイナミックプライシングによる浜崎あゆみカウントダウンライヴ開催決定
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000311.000002323.html


価格の変動は、ホテル業界などではこれまで当たり前に行われてきました。


また、スポーツ業界では客席によって価格が変動するフレックスプライシングなどというように、目新しいものというわけではありません。ただ、ホテルなど、土日や連休に価格を調整する、試合のみやすい席の価格を高くするというこれまでのシンプルな価格変化に対して、近年では、いわゆるビッグデータやAIなどの進化によって、需要を細かく予測し、それを価格に適応して、収益の最大化を狙うということが可能になってきたことが昨今のダイナミックプライシングやサージプライシングの流行に起因していると言われています。

お金という対価をしっかり支払った人に対して、コンテンツが提供されるという一見公平なように見える体型ですが、昨今の行き過ぎたEthereumのガス代金の高騰をみていると、その価格高騰によって誰もがサービスの提供を受けられなくなってしまうとすれば、少し考え直す必要があるかもしれません。

Ethereumのガス代高騰は今後どうなるか?

さて興味深いのは、このように一度高騰してしまったGasPriceに対してEthereumはどのように対応していく予定なのでしょうか。解決策の一つがEIP1559という提案です。イーサリアム考案者のヴィタリック・ブテリン氏とエリック・コナー氏によって2019年4月に提案されたものです。今のイーサリアムでは高いトランザクション手数料を払うほど早くブロックに取り込まれるため、多くのトランザクションが集中した場合、手数料が高くなってしまいます。ベースフィー (基本手数料)の仕組みの導入とベースフィーで支払われたトランザクション手数料のバーンの2つを取り入れることで解決しようとしています。これまでイーサリアムのブロックチェーン上でのトランザクション手数料は全てマイナーに渡されていましたが、多くがバーンされてしまうため、これらに反対するデモなどが行われています。


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