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memo:医療の現場からみた「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの現状と課題」

今年はなるべく行ったシンポジウムとか勉強会のメモを残しておこうと思っています。レポートにも満たないメモだけども。

シンポジウム:医療の現場からみた「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの現状と課題」
2019年1月26日@弁護士会館 主催:日本弁護士連合会

■第1部 基調講演
「病院拠点型ワンストップ支援センター設立に向けた課題とは」

講師:加藤治子氏(産婦人科医師・性暴力救援センター大阪SACHICO代表)

・性暴力被害者の診療とケアは産婦人科医師の任務であると考える。
→けれど産婦人科の医師は研修などで性暴力被害者の診療について学んでいない。医師になったあと、自分で勉強会や研修に参加するしかない現状がある。
・性暴力に関する調査では内閣府の「男女間の暴力に関する調査」が一番信頼が置けるのではないかと考える。「異性から無理やり性交をされたことがある」女性の割合…7.8%、13人に1人(男性は1.5%)、3年おきに調査しているが、この数値はほぼ一定している。
→警察庁の強姦(現・強制性交等罪)の認知件数は年間約1000件ほど。実際起きていると考えられる数(年間6~7万件/加藤さんによる推計)と、大きく違う。
→相談先 「警察」…女性2.8%(男女3.7%) 「医療機関」…女性2.1%(男女1.8%) 警察や医療機関に相談している割合は非常に少ない。
→警察に相談した被害者は、「犯罪被害者等基本法」に基づいた支援が可能。しかし警察に相談していない人の相談機関がなく、支援のための根拠法がない。
→SACHICOへの相談者は比較的警察へ行っている(警察に相談した後で警察からSACHICOを紹介されることもある)が、それでも警察へ通報した人はSACHICO開設から8年間で43.5%。それ以外は通報していない。
・被害時にできる膣の傷は小さくて、すぐ消えてしまうことが多いので72時間以内の診療が必要。一方で、性感染症や妊娠の有無については少し時間が経たないとわからない。
・実感としては、被害者にとって頼りになるのは警察より弁護士。時間をかけて警察に話しても逮捕に至ったり、起訴されることは少ない(強姦の起訴率は40・1%、強制わいせつは36.1%/H28/性犯罪の起訴率は年々低下傾向)。警察に相談したときに被害者が二次被害を受けたり、無力感を味わうことも多く、同時に弁護士さんに動いてもらうことが必要と感じている。
・検察からSACHICOが意見を聞かれることがある。たとえば、「性器がどれほど挿入された際に強制性交(強姦)と考えるか」。被害者が子どもの場合など、挿入しようとして挿入できないことがある。どの程度で強制性交となるか強制わいせつとなるかの判断が、現場の検事の間でも曖昧なままなのではないか。
・DVの中でも性的なDV(コンドームをつけないなど)は警察が取り合わない場合が多い。「二人で話し合って」などと言われてしまう。DVによる妊娠は妻側の意思だけで中絶手術を可能にしてほしいという意見書を出しているが認められていない。
・性行為のリスクについての知識がない状態で「性的な同意」ができるとは言えないのではないか。
・性被害に遭った子どもの診察は、その後の裁判のためにも非常に重要。小児科医が診ることがあったが、性器の診療は産婦人科がやるべき。ただ、産婦人科医の全員ができるわけではない。
・病院拠点型のワンストップセンターの需要が多いが、少ない(第2部に詳細)。
・性犯罪・性暴力被害者支援交付金の予算案、平成31年度概算要求は3億4600万円だったが、「財務省にばっさり切られて」2億1000万円に。平成30年度は1億8700万円だったので増額ではあるが…
子ども同士の性暴力も深刻。男児が自分の性器を女児の口に入れさせる被害が保育園児でもある。小中学生でもある。中学生はオーラルセックスなら妊娠しないと思っている。性感染症が口腔性交でも伝染ると知らない。

■第2部 全国のワンストップ支援センターへのアンケート結果報告
報告者 横山佳純氏(埼玉弁護士会) 木村倫太郎氏(兵庫県弁護士会)

・第4次男女共同参画基本計画(2015年12月閣議決定)で2020年までに、全都道府県に最低1か所のワンストップ支援センターが成果目標として掲げられる。
※ワンストップ支援センター…性暴力被害者に対して、医療的ケアやカウンセリング、法的支援などを可能な限り1か所で行う機関。
※2018年10月、奈良県性暴力被害者サポートセンター「NARAハート」が開設され、これで全都道府県全てに1か所以上のワンストップセンターが設置されることに。
・現在、全国に54か所。そのうち、「行政が関与する(性犯罪・性暴力被害者支援交付金が出ている)ワンストップ支援センター」は、47都道府県に49か所。49か所の一覧はこちら
・弁護士会が54か所にアンケートを行った結果が以下。
病院拠点型…12か所、相談センター拠点型…1か所、相談センターを中心とした連携型…39か所、その他…2か所
・病院拠点型のセンターは、拠点病院が、ほかの協力病院と連携して支援にあたっている。連携している協力病院の数は1~56か所。拠点病院から遠方に住む被害者が来院しやすいように配慮。
・病院拠点型センターが病院拠点型を選択した理由は、医療機関とのスムーズな連携のほか、24時間緊急事例に対応できること、夜間の運営を行う上で支援員にとっても安全な環境であることなど。
・一方で、拠点病院となる医療機関の確保や資金面などに苦労があり、「性暴力被害者支援を医療が担うという認識が低い」という指摘も。資金面や運営で補償や制度、研修、専門医師、看護職の確保や養成が必要。
・病院拠点型以外のセンターで病院拠点型創設を検討しなかった理由の中で「県土が広いため、単独病院を拠点にした場合、被害者の利便性が損なわれるおそれがある」というものが見られたが、現在の病院拠点型は全て協力医院と連携しており、運営の認識に誤解があるかもしれない。
・病院拠点型と比べると、その他のセンターでは急性期対応が不利と思われるが、支援員の夜間のタクシー代の予算を確保するなど体制を工夫しているところもある。
・病院拠点型センターを増やしていくために、拠点病院となる病院の確保や、人員不足の解消が必要。1都道府県に1か所以上、病院拠点型センターが必要。
→国からの財政的支援、国費による病院への補償、診療報酬制度の改善、国がワンストップ支援センターのある病院について医療機関として高く評価する施策が必要。

■第3部 パネルディスカッション「医療の現場からみた 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの現状と課題」
<パネリスト>加藤治子氏(SACHICO代表)、宮地尚子氏(精神科医)、山本潤氏(性暴力被害者支援看護師SANE、一般社団法人Spring代表理事)、望月晶子氏(東京弁護士会/レイプクライシスセンターTSUBOMI代表)
<コーディネーター>長谷川桂子氏(愛知県弁護士会)

・(山本)看護師の勉強の中で性暴力被害対応を教えられたことはなかった。被害者は自分を強く責めるため、「あなたは悪くない」というメッセージを浴びることは必要。
・(望月)TSUBOMIはセンター連携型の支援センター。私達は被害者がしたくないことはしないという前提があるが、その中で唯一、さりげなくでも伝えるのは、「一刻も早く病院へ行きたいね」ということ。妊娠や性病のことを考えたら。急性期の相談は、連携してくださっている病院や、東京のワンストップに案内したりしている。どこの病院でも性暴力被害対応ができるようになったら一番いいが、そうでないのが現状。
・(宮地)被害者にとって被害自体ももちろん恐怖だが、その恐怖を話したときにわかってもらえるかわかってもらえないかで、その後が大きく違う。急性期(被害後すぐ)に誰もわかってくれない気持ちを経験すると、その後にPTSD、うつ、引きこもりなどの症状が出やすい。被害時の写真がネットに載せられパソコンに触れなくなる人も。
・(宮地)急性期対応、中長期対応、どちらがより必要ということではなく、どちらも必要。被害者支援はないないづくしのところから始まってここまで来ている。少ないパイを奪い合うのではなく、1つの県に病院拠点型と相談支援型両方あるのが普通にしたい。ただ、急性期対応ででしかできないことがある(診療、証拠採取)ため、急性期に対応しやすい病院拠点型を増やすことは急務
・(望月)各都道府県に1つのワンストップ支援センターという目標が達成されたので、次は病院拠点型を各都道府県に1か所以上。ただし、それでも絶対に足りない。
※国連は女性の人口20万人につき1か所のワンストップ支援センターが必要と提唱している。その基準では日本には300か所必要。
・(宮地)通報されるレイプ被害は2~3%。もし窃盗被害の2~3%しか警察が対応できないのだとしたら大変恥ずかしいこととなるはず。社会全体の認識が必要。
・(加藤)適切な性教育が行われず、性は怖い、危険、汚いという認識で留まっている。性は素晴らしいということを子どもに伝えないといけない
・(加藤)現状、ワンストップに協力する医師の負担は大きい。女性医師を希望する被害者が多いこともあり、一晩で3回呼び出された女性医師もいる。しかし支払われる診療報酬は少ない。思いを持ってやってくれている医師に負担が大きい現状。
・(加藤)最近は(性暴力被害者の診療についての)研修に来てくれる男性医師が増えた。協力してくれる医師はまだ足りないが、医師の意識は変わってきていると思う。
・(望月)TSUBOMIに寄せられる相談のうち1割は男性から。未成年だけではなく成人男性からも。男性、LGBTへの支援の拡充を。
・(山本)全国のワンストップの約半数ほどの方とお会いした経験があり現場の方が一生懸命やってくださるのは知っている。この30年間で前進したと思う。一方で、どうしてこんなに進まないのだろうという気持ちもある。(性暴力被害当事者として)議員さんのところで実情を伝えても、話が平行線、伝わらない。社会の問題ではなく、被害者の問題と思われているのかと思うとしんどくなる。道のりは長いから、道筋が見えればいいのだが……。

■シンポジウムを聞いての個人的な感想
弁護士会の方がまとめてくれたワンストップ支援センター一覧によれば、全国で初めてワンストップセンターができたのは沖縄(強姦救援センター・沖縄REICO)。1995年10月25日開設(沖縄米兵少女暴行事件の翌月)。

2か所目のワンストップセンターができたのはそれから15年後の2010年、性暴力救援センター・大阪SACHICO。それからの8年間で、全都道府県に1箇所以上のワンストップセンターが開設されたので、2010年までの何十年間に比べたら、ここ数年の動きはめざましいのかもしれない。けれども、未だにそれ?っていう感もある。

性暴力の被害を受けた人が、どこに相談したらいいかわからず、自分で医者や支援先を探して、断られて戸惑われてそれでも探してっていう状況がこれまであり、今でも続いている。交通事故に遭ったら救急車を呼べばいいし、強盗に遭ったら警察を呼べばいいし、火事なら消防車。でも性暴力被害に遭ったときにどうしたらいいか知っている人は少ないし、まだ本当に支援先が少ない。

ワンストップ支援センターの存在や、警察が開設した性暴力被害専門ダイヤル#8103(ごめんなさい、最初に公開した中で#189と書いてしまいました。189は虐待の通報です)。のことを、もっと伝えていかなければいけないと思う。支援を受けることで警察に行く気になれる人もいる。通報しなければ認知件数にカウントされないので、支援先の少なさは暗数の多さにつながる。たぶん、議員さんの中にも「日本は海外に比べて性被害が少ないのだからワンストップも少なくていい」と思っている人がいるのだろうが、ワンストップがなければ見つからない被害はある(よくネット上で引用されている国ごとの10万人あたりの強姦発生件数は、カウント方法やレイプの定義が国によって異なるので一概に比べられない)。

性犯罪・性暴力被害者支援交付金は2億1000万円……。前澤社長のお年玉の約2倍。1年に支払う税金の半分ぐらいは、自分が寄付したい支援機関に寄付させてくれる制度がほしいよ~。

パネリストとして登壇していた望月弁護士が代表理事のレイプクライシスセンターTSUBOMIも寄付を募っています。


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ヤフーニュース個人:小川たまかのたまたま生きてる https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/