見出し画像

人の顔ってモザイク処理されてるよね?っていう話。

家族でも友人でも、仕事関係でも、
私はあまり人の顔を覚えられない。

というのも、どうやら先天性の相貌失認症というものらしい。
病気というより個性だと思っているし、そもそも生まれつきずっとそうなので、自分がおかしいと思ったことはあまりない。

ただ大人になって仕事関係やら交友関係が広がるにつれ、
あれ……? もしかして私って他の人より覚え悪くね……?
と考えることが増えた。

打ち合わせで話が弾み、「ではまた!」と意気揚々と別れた直後、
その人の顔が思い出せないことはザラだ。
だから次にお会いしたとき、
たとえ目の間にいてもすぐに見つけることができない。
「たしか背が大きい人だった」「こんな髪型だったはず」と必死にアンテナをはり、それっぽい人を見つけるたびにニコッと笑顔を見せては不審がられる日々……

くそが……笑顔にそんな白い目むけるなや……泣くぞ…………

と、よく思うようになったのは上京してからなので、
東京の人は、ほんなこつ冷たか人の多かことぉ……と思っていた。
が、ある日、テレビの特集で相貌失認の特徴が紹介されているのを見て衝撃を受けた。
いや、これ、ワシじゃないかーーーい( ゚Д゚)と。

ちょうど実家で同じ番組を見ていたらしい母からも電話がきて
「今ねぇ、まんまあなたのことっぽいこと言ってる番組見たの~」
と言われた。
のんびりしてるな母よ。

その後、たまたま大学で相貌失認の研究をしている方と巡り合い、
研究協力の一環としてワクワク度98%くらいで検査してもらったところ、
人の顔を60%くらいしか認識できていないらしいということがわかった。

私の場合、ものすごく認識しずらいという感覚はあまりない程度なので、
なんとなくぼんやりしていても見えてはいる――
という感覚に近いのかもしれない。

相手と対峙しているときは、なんとなく理解している(と思っている)。
目や鼻や口のパーツがどこにどう分配されている、というのもわかっている。
決して全部にモザイク処理がされて見えているなんてことはない。
ほくろがどこにあるとか、八重歯だなあとか、えくぼがあるとか、
一重か二重か、輪郭や髪型の特徴等もちゃんとわかっているし覚えている。
ただ、顔全体として見たり思い出そうとすると、うすいモザイクがかかった状態で見えているというか……?

うん。
髪型変わったり帽子とか被られるともう全部はじめましてです\(^o^)/
なイメージ……???

そういえば、「YOU、相貌失認ですYO!」
と言われてなるほどと思ったことのひとつに、
『トイレの鏡でびっくり事件』がある。

どういうことかというと、私は毎度トイレで鏡に映る自分を見るたびに、
「うおっ、なんか知らん人と目があった!」とちょっと驚いて、
「ああこれ鏡か…ということは私か……」とホッとしていたのだが、
つまり、自分の顔をぼんやりとしか認識できていないので、
映っているのが自分だと理解するまでに若干のタイムラグがあったわけである。

そういうびっくりの原因がはっきりわかったので、鏡で目が合っても不自然にビクついたり、逸らしたりしないでよくなった。
これぞまさしく診断の効。ありがとうドクター。
ついに私は、堂々と目を見つめてにこっと笑える力を手に入れたわけだ。
いや、まあ、自分の顔を見てニコッとするかと言われたらしないけれども。

人をどこで認識してる?

相貌失認というと、よくこう聞かれる。

先天性でも後天性でも、
たぶん相貌失認の人は多かれ少なかれ同じかなと思うけれど、

おそらくは、その人の雰囲気。
声、髪型、におい、リズム。

とか、なんかそういうのを総合的に判断している気がする。
仲が良くなればなったぶんだけ、その総合判断スピードが上がるだけだ。

いうなれば、超絶そっくりの双子を家族や友人が見分けられるのと似ているのでは……?と思っている。
あと視力の悪い人の見え方って似たようなものなのでは……??

ものすごく失認度が高い場合は、全面超モザイクっぽくなるらしいので、大変さは想像を絶する。
生まれつきならまだしも、事故などで後天的になった場合は、相当以上の恐怖もあるかもしれない。

だがまあ私の場合、家族や友人の顔もぼんやり、自分の顔もぼんやり、
みーんなぼんやり。
なので、みんな平等にハッピー薄モザイクライフを送る毎日である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?