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ファミリーマートのこども食堂について考える

2/1にファミリーマート(以下ファミマ)が出したニュースリリース「ファミマこども食堂」について賛否が沸き起こっている。
http://www.family.co.jp/company/news_releases/2019/20190201_99.html

これに関していろいろ思うところがあったので、無料塾のボランティア講師という形で「こどもの貧困問題」に取り組んでいる立場から物申してみたい。

まず率直な感想として

まず、この件に関して端的に自分の考えを明確にしておくと、賛成である。その理由はツイッターにも書いたが、こども食堂を「安定した(持続可能な)社会インフラとして確立する」ためには、大企業や行政の参入が不可欠であると考えているというのがまず1点。そして、こども食堂という存在がそれこそコンビニのように当たり前に自分たちの地域社会に存在する状態になることで、「本来の需要者」にリーチするようになるというのが2点目。

特に2点目の視点が大事なのは、現状のこども食堂の多くが「本当にそれを必要としているこども」に届いているかどうかが不明であるという問題を、こども食堂を運営する当事者たちが口々に言っていることからも分かる。福祉支援において大事なのはアウトリーチを考えることで、どれほど優れた支援が行われていたとしても、それを知らない人には支援が届かないのである。その意味でも、コンビニがこども食堂を始めること、「ファミマに行けばご飯が食べられる」というのが周知されて誰もが知るところになれば、それこそが「本当に必要としているこども」に支援を届けるための重要な第一歩になるのである。

「反対意見」

「NPO法人ほっとプラス」の藤田孝典氏や、「NPO法人POSSE」の渡辺寛人氏など、福祉に直接関わっている方たちがこのファミマの件に否定的なのが興味深い。「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子氏や「一般社団法人colabo」の仁藤夢乃氏も藤田氏の意見に賛同しているようだ。彼らの主張は似ていて、「コンビニそのものが貧困を作り出す悪しき資本主義的社会構造の一部であるのだから、その構造(労働条件など)をそのままに、体面の良い社会貢献に乗り出すというのはおかしいのではないか」というのが主眼である。また、彼らの言葉ではないが「本部が企業イメージアップのために一方的に打ち出した施策であって、現場の業務がさらに増えるのではないか」という指摘もあった。いずれも「労働者」の目線に立った意見であり、もちろんこれらも無視できない問題である。とはいえ、いわゆる「社会活動家」の方々が、始まってもいない前からこれだけ否定的な意見をぶつけるというのは将来の方向性を考えていく上で、悪手になるのではないかと思う。

反対感情の根底にあるのは

2016年に「日本の未来を担うみなさんへ」というタイトルで安倍晋三首相からこどもたちに宛てられたとされる手紙が話題になったことがあった。「こども食堂でともにテーブルを囲んでくれるおじさん、おばさん」「あなたが助けを求めて一歩ふみ出せば、そばで支え、その手を導いてくれる人が必ずいます」という内容が「まるで他人事」と批判されて炎上したものだった。今回の件も、根底にあるのはこの感情だと思われる。つまり、今まで「社会を変える立場の人」「社会を変えるだけの力(お金)を持つ人」、それらの「動くべき人」が見捨ててきた問題を、NPOなどの立場として支えてきたという誇りが彼らにはある。そこに突然大企業が、社会的に体裁が良いからと参入してきたのだから、「なんて都合の良い」と怒りたくなるのも無理はないだろう。

しかし待って欲しい。せっかく彼らが(ようやく)問題意識を持ち始めた状況で、真っ向から否定して出鼻をくじいてしまっては何も生み出さないどころか、また新たな対立を生むだけではないだろうか。今の政府に、日本に足りていないのは議論や対話ではないだろうか。そこは一歩引いて、寛容な精神で見守りつつ、運用の中でアドバイスをしていくというような関わり方もあるのではないだろうか。

まとめ

今、コンビニや飲食店では大量の「食品ロス」が生じているという問題があり、一方でこども(だけでなく大人も)が満足に食べられないという状況がある。この矛盾を解決していくために、様々なアプローチが考えられるだろう。今回の「ファミマこども食堂」、まだ詳細も分かっていないし、これが今後どう転ぶかは今のところ全く分からない。ただ行政が、企業が、NPOが、と言っているのではなく、垣根を越えて同じ問題を共有し、対話し、議論して、解決していくように動いていくべきなのではないだろうか。

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