【書籍・資料・文献】『茶の世界史』(中公新書)角山栄

給食のお供に

 学校給食に、必ずと言っていいほど添えられるドリンクがある。誰もが、子供の頃にたくさん飲んだ牛乳である。日本人と牛乳の関係は、明治以降から始まる。学校給食が始まるのは、戦後からだ。それだけに、日本人と学校給食との歴史は短く、牛乳が日常的に飲まれるようになった歴史はさらに短い。

 学校で飲まれていた牛乳は、どんなモノだっただろうか?年代差や地域差があるので一概には言えないが、地元の牛乳製造業者の製品だったと思われる。紙製のパックに入っている場合や瓶に入っているものなど、さまざまだろう。

 学校給食に牛乳は欠かせないモノになっていたが、近年では米食に牛乳は合わないという意見も強まっている。そのため、見直しの動きも出ている。小中学校を司る機関からも声が出ている場合があり、特に、近年では新潟県三条市が学校給食における牛乳の見直しを打ち出した。そして、とうとう廃止に至っている。

 栄養面で見れば、小中学生にとって牛乳は欠かせない。朝、学校へ登校する前に牛乳を摂取できれば問題ない。しかし、そうした家庭ばかりで汎愛だろう。学校給食は食事をまともに食べられない欠食児童のために導入されたという一側面がある。学校給食は、そうした家庭の貧富に食べ盛りの児童たちが栄養面で支障をきたさないような配慮がされている。

 そうした背景を鑑みれば、米食だろうとパン食だろうと、小中学生に必要な栄養価を摂れる、牛乳を添えることは間違っていない。そのことに疑問は感じつつも、大して長くもない給食の歴史の中で、牛乳は当たり前の存在になった。近年、東京都足立区などで”美味しい給食”を標榜する自治体もあり、そうした自治体では給食メニューにさまざまな工夫が凝らされている。必ずしも、牛乳が必要あモノではなくなっている。

 給食のお供を務めてきた牛乳に替わって、給食のメインドリンクの座を射止めたのは”お茶”でだった。お茶といっても種類は豊富にあり、緑茶だったりほうじ茶だったりする。子供にとって、お茶を飲む習慣はあまりない。お茶は体にいい、健康にいいとされがちだが、成長期の子供であることを考慮すれば牛乳の方が圧倒的に子供によい。しかも、お茶にはカフェインなどの刺激物を含む。なおさら子供向きではない。

 一般的に、お茶はそう言われてきた。また、子供にとっても好むような味ではない。学校給食にお茶が供されるようになるのは、かなり革命的な話だと言っていい。時代は、常に変わっているのだ。

 一方、日本のお茶どころとして知られる静岡県では事情が異なる。30年以上前、つまり昭和末期から給食にお茶が供されるようになっていた。わが小学校では牛乳がデフォルトで付き、お茶はクラスに薬缶ひとつ分が定量とになっていた。それを各自で分け合う。どちらかと言うと、女子はあまり飲んでいなかったように思う。

 わが小中学校の給食は自校方式でつくられているものではなく、あくまでもセンター方式だった。このときに供されていたお茶は、給食センターから送られてくるものではなかった。用務員さんがお湯を沸かし、それを薬缶に入れていた。記憶が確かなら、1~2年生の給食にはなかった。カフェイン摂取を気にしていたのだろう。また、私たちが低学年だった頃も、そうした給食に茶という意見は小さかったこともあって、そもそもお茶の制度がなかった。

 つまり、私たちが小学生だった頃、ようやくわが小学校では給食に茶を飲むというスタイルが始まったことになる。お茶王国・静岡だから、ほかの地域に比べれば早かったと思うが、同じくお茶の産地として知られる京都の宇治や福岡の八女といった地域がどうだったのかはわからない。

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【書籍・資料・文献】『茶の世界史』(中公新書)角山栄

小川裕夫

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ライターです。都市計画・地方自治・旧内務省・総務省・旧鉄道省の所管分野を取材しています

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フリーランスライター/最新刊は『ライバル駅格差』 /静岡市出身。取材テーマは地方自治・都市計画など内務省・総務省・鉄道省の所管分野。メール→ogawahiro21@@@yahoo.co.jp (@1つにしてから送信してください)
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