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『購買』構造把握から戦略を導く解説書

 株式会社秤の小川と申します。このnoteでは、みなさんが行うマーケティング戦略の意思決定を、客観的な数字から導くための方法を共有します。高度な分析を咀嚼し、30分読めばおおよそ分かる解説書を目指して執筆しました。

※USJをV字回復させた日本を代表するマーケター森岡毅氏、今西聖貴氏の名著、確率思考の戦略論を教科書とし、うち、実際使ってきた経験から解説するものです。

 私は、広告会社で消費者にまつわるデータ分析やそれを元にしたコミュニケーション戦略立案に注力してきました。その後、デジタルマーケティング会社、PR会社での戦略立案に伴うリサーチやコンサルティングの経験を経て、2019年12月に株式会社秤という法人を設立し、アドバイザーやエバンジェリストなど複数の役割(業務委託)で活動しています。社名は、日本を代表するマーケター森岡毅氏が代表を務める株式会社刀から着想を得たものです。

 「刀」社に憧れて、意思決定をするために必要な知識を「秤」として浸透させていくための会社を立ち上げました。2020年は企業と個人向け、合計800人に有料講義をして研修プラットフォームのストアカで新人先生賞を頂くこともできました。オンライン講義の内容を磨きながら、企業と個人に向き合ってきました。これまでの活動の総括として2つのnoteにまとめます。テーマは戦略を導くための市場構造把握です。このnoteは、「購買」構造把握です。対になるのは「売上」構造把握のnoteです。

 マーケティングの意思決定として誰(WHO)にどんな価値を伝えるか?(WHAT)どんな方法で伝えるか?(HOW)何に注力するかを決めて、何を捨てるかを決めること、そうした意思決定が戦略です。人、モノ、お金、企業のリソースには上限があります。何かにリソースを使うと決めたら、その分、何かを諦めなければなりません。経営学者のマイケル・ポーターは(つまるところ)「戦略とは捨てること」と言及しています。
 大胆な戦略を導くことができる組織は、言い換えると大きな何かを捨てることができる組織です。経営者の鶴の一声で決めることで、それができている企業もありますがデータを元に組織で決めることができる企業のほうが長期的には勝つ確率が高いと思います。経営、現場、それぞれのレイヤーの膨大な数の意思決定の精度が上がるからです。その点では、徹底した全社研修、エクセル経営で社員全体のデータリテラシーの底上げに成功しているワークマン社は模範となる企業です。

データ分析を一部のデータサイエンティストのものとせず、全社の血肉とするエクセル経営は、同社躍進の下支えとなっています。同社のデータ分析研修プログラムは参考にさせて頂いています。同社の成功とエクセル研修について上記のnoteにまとめています。

 全社戦略としての注力領域、すなわち戦略を決めることこそデータドリブンであるべきですが、そうした重要な意思決定ほど、経営者や声が大きい方の鶴の一声がないと決まらない、そんな組織もあるかもしれません。現場からデータドリブンなカルチャーをボトムアップさせることと、経営者の意識変革の双方があればカルチャーは変えられるはずです。


 50万部を超える大ヒットシリーズとなった西内啓氏の「統計学が最強の学問である」シリーズや、

 森岡毅氏と今西聖貴氏が消費者の購買行動をつかさどる数式など確率モデルの活用やリサーチに必要なリテラシーについてまとめた「確率思考の戦略論」

 その他の書籍や論文など、データサイエンス手法を駆使または研究をしてきた先人が公開してくれた知見は沢山あります。しかし、そうした文献を読んでも実務に活かせていない方も多いと思います。西内氏や森岡氏の話はおもしろかったし勉強になった。でもうちの会社はデータ分析の素養がある人がいないし・・・」「理想はマーケティング戦略の意思決定をデータドリブンにすべきだけど、自分の業務は担当外なので・・・」など、何をどうすれば実践に活かせるか分からない、または現状とのギャップから現実味を帯びないと感じている方も多いのではないでしょうか?かつての私がそうでした。
 

 今回、このnoteを読んで実践に活かしてほしいと願うのは2種類の方たちです。

 最も読んでいただきたい方はマーケティングやデータ分析の勉強や情報収集をしているが、ビジネスで活用できていない方です。情報収集されていても、具体的に活かせていないのであれば、もう一歩踏み込むことをオススメします。それがリターンを得るための入り口となるはずです。
 次に読んでいただきたい方は、ご自身が重要な意思決定をする立場にあり、ご自身のリソースを分析に割けないため、スタッフにノウハウを身につけてほしいと考えるマネジメントの方です。率先して学び、実践するプレイヤーを育てたいと考えている方です。

 私の特技はデータ分析の学びを咀嚼することです。今はお教えする仕事も行っていますが、もともと高校の数学も覚えていませんでした。1,000時間は勉強して、なんとか1冊の書籍「Excelでできるデータドリブン・マーケティング」を出版しました。

 勉強の途中で様々な挫折や無駄がありましたが、学びの筋肉がついた気がします。私は周り道をしましたが、みなさんがそんな時間を費やす必要は一切ないと思っています。そこで、私が費やした時間をぎゅっと凝縮し、すべてのみなさんに私の数十倍~数百倍のスピードで追体験をしていただき、ご自身のマーケティング意思決定に自信を持って頂きたい、その想いで書きあげたのが本noteと、『売上』構造把握から戦略を導く教科書の2作です。

2020年からブラッシュアップしてきたオンライン講義内容の多くを本noteで再構成しました。さらに詳しく学びたい方には、ストアカ講義を開催中です(本noteの最後でご紹介します)


 2つのnoteの共通テーマは市場構造をモデル化し「マーケティング戦略の意思決定を確かなものにする」ことです。

定量的な分析のアプローチから何に注力し、何を捨てるべきか?マーケティング戦略を明確にする方法を紹介します。本noteは購買構造の把握についてです。森岡氏らが公開してくださった確率モデルの分析ノウハウの一部を解説します。

対となる上記noteでは、売上構造の把握についてまとめました。拙書やその他書籍で紹介されている時系列データ解析による効果検証法を紹介します。その施策は効いている効いていないなど、無駄な議論によるリソース浪費を回避するためのものです。何に注力し、何を捨てるのか?データドリブンに「戦略」を導くものです。


『購買』構造を把握

 戦略の策定や計画の検討など、ビジネスの多くの意思決定は予測に基づくものです。そこでの心強い道具が「確率」とそれを基礎とする「統計」です。森岡毅氏は独自の確率統計ノウハウを駆使し、低迷していたユニバーサル・スタジオ・ジャパンを再建させた日本を代表するマーケターです。

 USJは開園1年目に1,100万人の来場がありましたが、森岡氏が入社する年まで8年にわたって低迷を続け700万人台まで減っていました。しかし、氏の改革によって平成28年には1,460万人までV字回復を遂げました。変革のうち、最も大きなものは「映画の専門店」というコンセプトを変え、「世界最高のエンターテインメントを集めたセレクトショップ」へと大きく舵を切ったことです。進撃の巨人、ワンピースなど映画以外のコンテンツを導入しヒットを連発しました。USJは映画の専門店であるという決め込みが市場を狭め、自ら首を絞めていたことが問題の本質であり、突くべき焦点だったのです。

上記の記事では、氏がUSJの再生に活用した分析についてまとめています。 

 氏はマーケターの果たすべきもっとも重要な役割はビジネスを左右する、突くべき焦点となるビジネスドライバーをみつけることだとしています。
 それを捉えるためには戦況分析が必要であり、その主な目的は市場構造の理解であり、消費者の購買回数の分布に共通する「NBDモデル」を用いることで市場構造の核となる需要を定量的に予測または把握ができるとしています。同書で紹介されていたうち、私が最も感嘆したエピソードが予測モデルを活用した意思決定で大成功したハロウィーン・ホラーナイトでした。

V字回復

  画像参照:Wikipedia「森岡毅(氏)」

 V字回復に向かっての第1弾の成功(平成23年)がこの施策でした。リアルなゾンビがパーク内を徘徊する、非日常感溢れるイベントです。注力すべきターゲット消費者(WHO)を若い独身女性に定め、彼女たちがハロウィーンに本当は何を期待しているか?(非日常感)という本質的なインサイトを捉え、的を定めて導いた打ち手(HOW)です。走攻守ならぬ、WHATWHOHOWが合致し、前年7万人に対して、2011年10月のハロウィーンは40万人の集客となりました。

 驚愕すべきはハロウィン需要に注力する、WHATの導き方です。もともと、10月はUSJ最大の需要期だったそうです。感覚的には閑散期のほうが伸びしろと捉えがちですが、確率モデルによって需要期のほうが伸びしろがあると捉え、前年7万人だったハロウィーンの集客を倍の14万人以上にできると予測していたのです。

 確率モデルによって自社ブランドにまつわる購買構造を把握することは簡単な調査とExcelで分析できます。書籍に書いて頂いたことを実行してきた経験から解説します。ここからは、「確率思考の戦略論」で紹介された数式をExcelで活用する例を紹介します。数式の意味を理解するよりも「実際に実務で使う」ことに重きを置いた内容にしています。ここでは、分析でどんなことが把握できるのか?どんな風に活用できるかをイメージいただければ幸いです。

弊社開催のZoom研修では、みなさんが分析を行うために、数式を反映したExcelファイルを共有します。

NBDモデルとは

 消費者の購買回数の分布をつかさどるものです。

NBDモデル

Pr=r回の購買が発生する確率
(市場においてr回買う人が何パーセントいるか?市場浸透率)

r=そのカテゴリまたはブランドにおける購入回数や利用回数

M=そのカテゴリまたはブランドにおける平均購入回数や平均利用回数

K=分布を決めるパラメータ 

 左辺のPr(購買回数別市場浸透率)を求める数式が右辺です。例えば、日本の人口が1億人だとして、その市場全体において、Pr(0)が80%、Pr(1)が10%、Pr(2)が5%の場合は、1回も買わない人、(0)回買う人が8,000万人、(1)回買う人が1,000万人、(2)回買う人が500万人といったことを求める数式です。この数式をつかさどるのはMKの2つの係数と、Pr()のそれぞれの値です。

 Mは、自社ブランドを全ての消費者が選択した延べ回数を消費者の頭数で割ったものです。たとえば、AKB48のCDが1年間に1,000万枚売れた場合、(人口が1億人として)1,000万÷1億なので0.1です。簡単に求めることができます。一方、Kは、消費者の購入確率がどのような分布の形になるかを決めている係数です。Mの様に簡単に求めることはできません。

 同書で紹介されていた数色を参照し、業務で使っているExcelシートがあります。赤枠で囲んだ箇所のM=5K=3となっています。この場合、総購買数は5億回です。オレンジ色のセルにはNBDモデルの右辺の数式を入力しています。

M=5K=3の際のPr(回数別浸透率)が分かります。この場合、1年で1回買う人は9.89%です。縦棒グラフに描画しています。(「11」は11回以上の合計%)

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 Kは分布の形をつかさどるものです。KをいくつにしてもM=5を変えない限り、購買合計回数(5億回)は変わりません。試しにK=15に変えてみると、Prの値がそれぞれ変化するので、棒グラフから分布の形の変化も分かります。

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 この時、他に変化している値があります。右上の青枠の黄色いセル、期間別浸透率(Pn)の予測値です。

期間別浸透率を求める式については書籍のP279に記載があります。

Pnの説明図

 Pnの予測値は、任意に分析者が設定した期間、ここでは14日以内、14日~30日以内、30日~60日以内、それ以前(または買っていない)の4区分において、それぞれの期間に最後に買った方が何パーセントいるか予測した値です。この数式を使うことで、NBDモデルの係数MKを推定することができます。

ガンマ・ポアソン・リーセンシー・モデル

 ガンマ・ポアソン・リーセンシー・モデルとは最後に、いつ買ったか?訪れたか?食べたか?など最終のアクションを行ったタイミングをアンケートなどから取得し、それを分析することで顧客の購買回数の分布を把握し、需要予測などに活かすものです。そのアンケートから得た値をリーセンシーデータと言います。Pn(期間別浸透率)に対応します。前年7万人だったハロウィーンの集客を倍の14万人以上にできると予測したときに用いられた分析法です。

 実際の調査データをもとに分析します。2030年のゴールデンウィークが終わった直後に、20代男性に、最後にいつマクドナルドをデリバリーして食べたか?Twitter広告を配信して収集しました。一度めの緊急事態宣言のゴールデンウィークの10日間で、マクドナルドがどれだけデリバリーされたか、購買回数を把握します。

 MKの対象期間を365日からゴールデンウィーク期間の10日間に変更して、上記の回答すなわちPn(期間別浸透率)の実績値と、予測値の誤差を最小化するMKの値をExcelのソルバーで求めます。
 ソルバーとは、複数の変数を含む数式において、目標とする値(ここでは予測誤差の最小値)を得るために最適な変数の値を求めることができる機能のことです。ソルバーでは、指定した変数の値(ここではMKの値)を変化させながら変数の相互関係を判断し最適解を求めていきます。

※実際には書籍で紹介されていた通りに、各回答ごとの誤差を2乗した値の合計値を最小化する計算を行います。予測誤差はその合計値の平方根をとって求めています。

Pnの説明図2

 MKを求めることができました。以下の緑枠の母集団の人数を20代男性の人口に変更し、青枠の購買単価を500円(仮)とすると、赤枠の購買合計金額が分かります。ソルバーでMKの値を導くことで、2020年GWの10日間で20代男性のマクドナルドのデリバリー売上はおよそ17.9億円と推計できます。

マクドナルド


この様にして、各性別年代のMとK総購買回数。1回以上食べた人の人数で割った平均購買回数を整理できます。2020年だけでなく、2021年に追加で分析を行いました。

まずはマクドナルドのデリバリー以外で2021年と2020年を比較してみます。

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購買回数と人数ともに2021年になって増えています。特に男性20~40代が増えています。


続いてケンタッキーのデリバリー以外です。

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こちらは減っています。特に男性20~40代が顕著に減っているようです。

続いてマクドナルドのデリバリーです。

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こちらも減っています。特に男性20~30代の購買人数が減っています。30代の男性は購買回数も顕著に減っている様です。

最後にケンタッキーのデリバリーです。

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かなり減っています。購買回数は2020年の半分強です。特に40代男性(私も)と女性が減っています。昨年のGWには「家で映画でも見ながらケンタッキー」訴求のTVCMを見た記憶があります。初の緊急事態宣言で、プチ贅沢としてケンタッキーを楽しむ人が増えた特需だったのでしょうか?

まずは、昨年比較でサクっと見ていきました。

カテゴリーのマーケットサイズから伸び代を把握

「あなたは最後にいつ、飲食店の料理をデリバリーしましたか?」と聞くことで、カテゴリーのマーケットサイズを測ることができます。

森岡氏がUSJに着任してからのV字回復の足掛かりとなったハロウィーン・ホラー・ナイトは、ガンマ・ポアソン・リーセンシー・モデルでハロウィーンの時期の集客を前年7万人から2倍以上に伸ばせると予測し、そこに注力する戦略による施策でした。(実際は40万人の集客となったそうです)

どういった質問をしたかまでは書籍に記載はありませんでしたが、おそらく、最後にいつテーマパークに行ったか?出かけたのか?など市場のカテゴリーを把握する質問を行い、月次などで分析したことによって、ハロウィーン時期を2倍に伸ばせると判断されたのだと思います。

「最後にいつ〇〇したか?」をいつ聞くかによって回答結果が変わることから、月次など一定期間ごとに需要の違いを把握することができるのがこの調査活用の醍醐味です。

2021年のGWの調査では、①②のカテゴリー調査も行いました。

①飲食店の料理をデリバリー以外(テイクアウト、店内、ドライブスルー)で最後にいつ食べたか?
②飲食店の料理をデリバリーで最後にいつ食べたか?

カテゴリーの購買回数に対してのブランド購買回数のシェアを年代性別ごとに見ていきます。市場の中における自社ブランドや競合ブランドの位置付けを構造的に把握することができ、伸びしろや課題をみつけることができます。

まずはマクドナルドのデリバリー以外です。

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カテゴリー(デリバリー以外)の購買回数が男女ともに年齢が上がるにつれて増加しています。40代男性が突出しています。デリバリー以外のカテゴリーの回数が最も多い男性30~40代を伸びしろとみるか?それとも相対的に外食(テイクアウト、ドライブスルー含む)の機会が多いだけで、マクドナルドの利用回数を伸ばすことは難しいのか?40代男性を狙っていると思われるTVCMも見かけますが、どんな戦略を描いているのでしょうか?

また、10代はマクドナルドのシェアが男性で66.83%、女性で42.69%も占めていました。

続いてケンタッキーのデリバリー以外です。

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マクドナルドと比較するとシェアは低いですが、10代のシェアは男女共に高く、20代以上は女性のシェアが高いです。

続いて、マクドナルドのデリバリーです。

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対象年代全体のシェアが4割!?一瞬目を疑いました。男性13~19歳は72.9%、13~19歳女性は60.45%です。
カテゴリーの回数の合計は4051万回強で、デリバリー以外の18%程度ですが、今後も、のびるマーケットだと思います。20代女性のカテゴリ回数が849万回と突出しています。ここは伸びしろかもしれません。

最後にケンタッキーのデリバリーです。

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カテゴリーに対するブランドのシェアは、総じて男性のほうが高い様です。特に10代男性と40代男性のシェアが高いです。

マクドナルドとケンタッキー分析事例は2021年5月21日に更新させて頂きました。

いかがだったでしょうか?「あなたは最後にいつ○○したか?」を聞くだけでここまで分かります。毎月、月初に調査をかけて前月の需要をカテゴリーとブランド(自社と競合、年代性別ごと)で把握することをおすすめしています!マーケットサイズとブランドのシェアを競合比較で月次で理解できれば鬼に金棒です!


レッドブルVSモンスターエナジー

この方法は、小売や飲食やアパレルなど、店舗や商業施設では特に有用な調査だと思います。競合と自社の相対比較で、どの性別年代が強いか弱いかを構造的に把握することができ、ビジネスドライバーを探すヒントとなるはずです。森岡氏はUSJ在籍時、競合のTDLの来場数を調べる方法のひとつとしても活用されていたそうです。著者の森岡氏今西氏が在籍していたP&G社が手がける消費財や、飲料などスーパーやコンビニ、ドラッグストアなどで日常的に購入される商品でも当然活用できます。レッドブルとモンスターエナジーで分析してみました。2019年の記事でモンスターエナジーの売上がレッドブルを大幅に上回っているという内容を見て、それが信じられず検証したくなったからです。

POSグラフ

参照記事:データで読み解くヒット第15回 モンスターエナジー、レッドブルを突き放したマーケ施策とは?

 私は43歳で年齢的にレッドブル世代です。モンスターエナジーが販売された時、レッドブルを模倣して量を増やして実質的に安くした商品に見えたので飲んだことはありませんでした。それが今、レッドブルの売上を大きく上回っている!?果たして本当か?それを検証するため、2020年8月1日からの調査で7月の1ヶ月の需要を年代性別ごとに構造把握したところ、驚愕の結果でした。当該期間(ここでは7月の31日間)に4回以上購買をする方による総購買数が、エナジードリンクのコアターゲットとして重要な10代男性で10倍近い差が開いていたのです。詳しくは下記noteにて。

〇〇な気持ちでの購買回数(市場規模)を推定

また、ガンマ・ポアソン・リーセンシー・モデルでしか把握できない需要構造把握もあると思います。最後にいつ△△な気持ちで、〇〇を買ったか?という需要です。例えば、最後にストレス解消にお菓子を食べたのはいつですか?と聞けば、それに対応する需要を把握できます。実際にそういうニーズに対応した商品はすでにあると思います。新商品や新事業の計画における調査として有効な手段です。過去、私が広告代理店で勤務していた時にお仕事をご一緒し、データサイエンスを学ぶきっかけを頂いた松本健太郎さんが過去書いたnoteでは、「新奇事象」という、一般の人が行っているちょっと変わった事象を紹介しています。インサイトのアイデア開発のためものです。35歳の女性が、夫婦喧嘩のストレス解消のために、旦那さんが頑張って稼いだお金をUFOキャッチャーで無駄遣いしているという新奇事象があり、松本さんも好きだと言及していますが、私も好きな新奇事象です。ストレスをUFOキャッチャーでの無駄遣いにぶつけるが、ギャンブルまではいかずにブレーキをかけているのでしょうか?ある種のやさしさ、かわいらしさを感じます。こんなアンケート設問、変なのは承知ですが、「あなたは最後にいつ夫婦喧嘩のストレス解消でお金を使いましたか?」と聞けば、対応する市場規模(Prから導いた購買回数)が分かるはずです笑。

 松本さん、マーケティングとデータ関連の著書多数ですが、行動経済学の視点から人間のバイアスを捉えることをテーマにしたこの書籍が、私の一番おススメです。


購買構造を把握(まとめ)

 みなさんが関わるブランドと競合ブランド、それにまつわるカテゴリーを考察し、質問を検討した上で、

・年代性別ごとに(例 10才ごと性別刻み)
・時期ごとに(月次または四半期ごとなど)

 上記ごとにリーセンシーデータを取得して分析することで、自社および競合の顧客構造を明確にすれば、ビジネスドライバーの発見につながるはずです!

追加情報(2023年12月23日更新)

マーケティング・アナリストとして、どんな価値を提供しているのか?紹介しております。