
マーケティング戦略を導く「プレファレンス・アナライザー®️」
・市場(顧客)を構造的に把握する。
・主要なブランドによるコミュニケーションで売上はどれだけ増えているか?把握する。
・何に注力すべきか?戦略を導く。
消費者調査データを可視化したダッシュボードを構築して、これらを把握する画期的な分析を紹介します。
たとえば、今回調査対象とした7つの飲食チェーンそれぞれで推定したTVCMの効果は以下です。
各ブランドのTVCMによる年間の売上貢献金額
・マクドナルド 378.9億円
・ケンタッキー 85.7億円
・モスバーガー 46.8億円
・丸亀製麺 76.6億円
・スシロー 125.0億円
・ガスト 86.1億円
・吉野家 64.5億円
※調査時点2023年3月末から遡った1年間の推定値
※20~69歳男女のみへの影響(19歳以下及び70歳以上は調査対象外のため非考慮)
どうやって、この数値を導いていると思われますか?
消費者調査から分析しています。キーとなるのは消費者調査から推定する「ブランドリフト」です。
消費者調査でブランドの状態を観測するために、利用意向や好意度が何%増えたかという数値です。
TVCMなどの施策や、アプリ、口コミやSNS投稿など合計24個の要因ごとにNBDモデルと因果推論の分析手法の傾向スコアで導いたブランドリフトの値を用いることで、貢献売上を定量化しています。
消費者の状態を把握する「プレファレンス・アナライザー」のダッシュボードでデータを咀嚼すれば、解像度高く市場の構造を把握することができます。
確かな意思決定にこだわる戦略家の「航海図」
プレファレンス・アナライザーのダッシュボードを構築することで、競合比較で顧客構造やマーケティング施策の効果など、本来見えにくいものが解像度高く見えるものです。いわばマーケティングの「航海図」のようなものです。
競合比較でTVCMやSNSや口コミなどコミュニケーションの浸透や売上貢献の数値を知ることで今、ブランドが着手すべき最も重要な課題は何かを明確にすることができるのです。
YouTube解説
タイパ重視の方向けには以下のYouTube解説があります。
数学マーケター森岡毅氏の知見から学ぶ。
「確率思考の戦略論」を読まれた方は多いと思います。
私はこの書籍との出会いにより、大きな変化が2つありました。
ひとつめは、株式会社秤という会社を設立したことです。
著者の森岡毅氏はUSJや丸亀製麺など、多くのブランドの成長に貢献した日本を代表するマーケターです。氏が率いるマーケティング精鋭集団の「刀」に憧れて「秤」という会社を設立しました。書籍で紹介されていた確率モデルの分析を学びながら実務で実装し、複数の企業の業務委託のマーケティング・アナリストとして、意思決定を確かなものにするお手伝いをする様になりました。
ふたつめの変化は、2冊めの書籍の出版です。
1冊めの書籍は2018年に出版しました。時系列データ解析によってTVCMやインターネット広告によってそれぞれ売り上げがどれだけ増えていたか?数理モデルで推定、または予測を行うMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)をExcelで実装する方法を共有したものです。
50万部を超える大ヒットシリーズ書籍「統計学が最強の学問である」
著者の西内啓氏より「マーケターは、グラフの見た目より因果推論を学ぶべきである」という推薦コメントを頂きました。
同書籍の書籍化と編集を進めて頂いた、マイナビ出版の代表取締役の角竹氏と、データサイエンスの師匠の松本健太郎氏との再会の場で、そろそろ次を出しますか!?となり、書籍化が決まりました。
データドリブンに戦略を導く(副題)
マーケティング投資最適化の教科書(タイトル)
経営者やマーケターが、何にどれだけ予算を投資すべきか、最上位の意思決定をするための指針となるMMMやプレファレンス・アナライザーなどの分析の活用を知ることができるビジネス書です。
プレファレンス・アナライザーは確率思考の戦略論で紹介された消費者の購買確率をつかさどるNBDモデルと、西内啓氏との出会いから学んだ因果推論の分析の研究成果です。それがなければ「マーケティング投資最適化の教科書」の書籍化は決まっていませんでした。
事業目標の達成に必要なブランドリフト
森岡氏の書籍で紹介されていた内容のうち、もっとも衝撃的だったエピソードが、USJのハリーポッターの意思決定でした。森岡さんは、かつて低迷していたUSJを再建する過程で、最大の投資(450億円)となったハリー・ポッターエリアのオープニングを成功させます。当時の安倍首相がかけつけ、日本中にそのニュースが伝わりました。
事前の需要予測と事業計画によるハリー・ポッターエリアで達成すべき追加集客は200万人。それに必要な認知レベルは全国90%。広告を投資できる限界まで割いても得られる認知は75%が限界ととらえ、残り15%を埋めるためにネットを使ったデジタルマーケティングとPRに焦点を定めました。当時の状況ではメディアでUSJに関心を持つ人は非常に少なかったので、ゲリラ的な奇策が行われました。それは氏が書いた書籍をベストセラーにすることでした。
書籍が出版されたのは2014年2月、ベストセラーリストに入ったのが翌3月、メディア関係者も目を通し、USJが苦境から脱した物語とハリー・ポッターの壮大なプロジェクトへの意気込みを理解され、インバウンド振興や日本の観光産業活性化の「大儀」に本気でコミットする方の賛同を得たことによって、同年4月18日に当時の安倍晋三内閣総理大臣とキャロライン・ケネディ駐日米国大使が大阪のUSJに足を運び、ハリー・ポッター城の前で7月15日のグランドオープン日を発表しました。7月18日のオープン時には多くのメディアが駆け付け、(2001年のパークオープン時の10倍以上)認知度の計測上の数字が100%となったそうです。
注目すべきは、
サイエンスによってKPIを明確することで、フォーカスを定めていたことです。
ハリーポッターが初年度に達成すべき追加集客は200万人。それに必要な認知レベルは全国90%。広告を投資できる限界まで割いても75%が限界で15%を埋める必要性があると見定めています。残り15%の認知度さえカバーできれば、事業目標を達成できると信じられる状況を作っていたという見方もできます。これを導くために、蓄積してきたさまざまな数式や係数を用いていたと思います。
みなさんは、事業の目標を達成するために必要なブランドリフトを把握していますか?
ブランドリフト(態度変容)を金額換算
プレファレンス・アナライザーのダッシュボードを構築すれば、事業目標達成に必要なブランドリフトが分かります。
自社だけでなく、競合ブランドも含めて消費者調査を行うので、各ブランドの広告や、アプリ、SNS投稿や口コミなどの要因ごとに売上がどれだけ増えたか?定量化して競合比較で把握することができます。
プレファレンス「M」とは?
確率思考の戦略論では、プレファレンスすなわち「消費者に対する選好性」を高めて、購買確率をつかさどる数式の「M」を増やす重要性が語られています。
Mとは、「自社ブランドをすべての消費者が選択した延べ回数を、消費者の頭数で割ったもの」です。
戦略の本質は、プレファレンスを高めて市場全体の中で自社ブランドが選ばれる投票数ともいえるMをどう増やすかを考えることです。
確率統計の専門用語で表現すると、Mは消費者1人あたりの購買などのアクションをする回数の期待値です。たとえばサイコロは1から6の目がありますが、出る目の平均は3.5です。これがサイコロの目の期待値です。
サイコロを振るとそれぞれの目の値が出る確率は均等で1/6です。その確率に1から6までの値を掛け合わせます。
1の目・・・ 1×1/6=1/6
2の目・・・ 2×1/6=2/6
3の目・・・ 3×1/6=3/6
4の目・・・ 4×1/6=4/6
5の目・・・ 5×1/6=5/6
6の目・・・ 6×1/6=6/6
これを足しあげた数字21/6=3.5がサイコロを振ったときの目の値の平均であり期待値です。
確率思考の戦略論で紹介された、NBDモデルの数式が以下です。左辺のPrを求めるものです。Mは右辺に入っており、Prを求めるための重要な係数となっています。

一定期間にターゲットが買う、食べるなどの消費を行う人がアクションを行う回数ごとに、それぞれ何%になるか?この割合の値がPrであり、アクション回数別の市場浸透率※です。
※市場浸透率は一定期間に1回以上購入した人数/市場人数
Prと購買回数を掛け合わせます。サイコロの目と違い、Prは一定ではなく、NBDモデルの式に従って変化します。以下は説明用に抽象化したものです。
Pr(0) 0回買う人が60%→0
Pr(1) 1回買う人が20%→0.2
Pr(2) 2回買う人が10%→0.2
Pr(3) 3回買う人が5%→0.15
Pr(4) 4回買う人が2.5%→0.1
Pr(5) 5回買う人が2%→0.1
Pr(6) 6回買う人が0.5%→0.03
Pr(7) 7回買う人は0%→0※8回以上も同様に0
合計0.78がMです。
消費者1人あたりの購買回数の期待値であり、購買回数を人数で割った値です。1.2億人の市場で1年間に2,400万回購買される商品の年間のMは0.2です。1人あたり0.2回の購買の発生が期待できます。Mがわかれば確率からどれくらいの購買が発生するか予測することができます。
今回行った調査から推定した、マクドナルドの1年間のターゲット(性別年代)ごとのプレファレンスMがこちらです。

Mは1年間に食べられた回数÷人数でした。マクドナルドの1年間のMは若い世代ほど高くなっていることが分かります。
自社および、主要なブランドのターゲットプレファレンスMを定量化することは市場構造把握の基礎です。
たとえば20代女性のMは1年間で13.73回です。
ブランドの利用意向が高い人のMは21.09回ですが、
利用意向が低い人のMは7.07回です。
Mの差分は14.02回です。
ブランドリフトによって、(20代女性の)利用意向が高い人を一人増やすと、売り上げ回数が年間14.02回増えると推定して、TVCMなどの各種のコミュニケーションによってブランドリフトした人数に14.02回と購買単価を乗じれば、ブランドリフトによって売上がいくら増加するか?金額換算することができます。
今回の調査では、ブランド利用が高い人は利用意向の調査の選択肢5段階のTOP=「利用したい」として、利用意向が低い人はOTHER=「やや利用したい」「どちらともいえない」「あまり利用したくない」「利用したい」としています。
Mを把握するための調査票
飲食チェーンの場合、あなたは最後にいつ食べましたか?(14日未満/14日から1ヶ月/1ヶ月から3ヶ月未満/3ヶ月から1年未満/1年以前/食べたことがない)とブランドごとにそれぞれ聞きます。今回は期間は1年間でMを分析します。
1年以内に買った人には、何回買いましたか?と聞きます。カテゴリ値ではなく、数値として扱いやすい様に、1年の購買回数を1回から12回以上までを12選択肢のSA(シングルアンサー)で聞いたあと、12回以上と回答した方には、月の平均回数を1回から30回以上までを15選択肢のSAで聞いています。
ご自身1人あたり購買単価の平均も聞きます。100円以下から2,000円以上までを12選択肢のSAで聞いています。当該ブランドの購買頻度や単価によって項目の内容を微調整しています。各ブランドの好意度や利用意向も聞きます。
これらの設問から得たデータを使って、前述した計算(利用意向が高い人を一人増やすと、購買回数は何回増えるのか?という考えに基づいた計算)を行い、TVCMなどコミュニケーション要因ごとに売上をいくら増やしていたか?効果を推定してダッシュボード化します。
10問の調査票

日本国内で事業展開する主要な飲食チェーンブランド(マクドナルド、ケンタッキー、モスバーガー、丸亀製麺、スシロー、ガスト、吉野家)をテーマにして、セルフリサーチのFreeasyで全国20歳から69歳の男女に調査し、エラー判定をして削除した45,094人を分析しました。
デモンストレーション用ダッシュボード(PowerBI)
飲食チェーンの調査から構築したPowerBIのダッシュボードを株式会社秤HP内の紹介ページで公開しています。
https://www.hakari-corp.com/preference-analyzer/

パソコンでの閲覧を推奨します。文字が小さくなりますが、スマートフォンでも閲覧は可能です。ダッシュボードを触ることで、色々な角度でデータを見ることができます。YouTubeの解説と詳細解説編のnoteでPowerBIの使い方や分析アルゴリズムを理解してPowerBIを触っていただければ様々な発見があると思います。
YouTube解説(再掲)
PowerBIの操作説明は動画をご覧ください。
プレファレンス・アナライザーによる発見の例
※様々な業界で活用してきた例の一部です。
・トップシェアのブランドAの施策Bは、異常なまでに調査対象ブランドの中売上貢献しており、プレファレンス・アナライザーの調査回答者に追加調査を行うことで、同ブランドの施策Bが効いている質的な原因もおおむね仮説できた。自社はなんとなく追随して同施策を行っていたに過ぎなかったが、体制強化してまで行う最重要課題になった。
・自社は売上シェアはフォロワーに位置しており、売上が拮抗しつつ上位となっているブランドCとブランドDをベンチマークしていたが、2つのプランドのプレファレンスは想定より低く、またTVCMなどの広告も他ブランドと比較して効いていなかった。一方でさほど売上規模もまだ大きくないブランドEは若い世代のプレファレンスが異様に高く、TVCMは投下していなかったが、SNSを中心にリーチしている広告効果が調査対象プランド圧倒的に高くなっていた。若い世代への影響から長期での大きな脅威になりえるブランドEを最重要ベンチマーク対象に変更し、リサーチを強化して仮説した同ブランドの成功要因を自社の施策に取り入れた。
「マーケティング投資最適化」の解説資料
時系列データ解析によるMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)と消費者調査を分析するプレファレンス・アナライザーは分析のアルゴリズムが違います。MMMは短期効果とプレファレンス・アナライザーは長期効果です。この2つを見比べながら確かな予測に使える数式と係数を地道に見出しています。それこそが、データドリブンに戦略を導くマーケティング組織になる唯一の近道だからです。
確かな意思決定にこだわる戦略家の「航海図」としてのプレファレンス・アナライザーのダッシュボードが、マーケターのみなさんのご参考になれば幸いです。株式会社秤HP内のプレファレンス・アナライザー特設ページで配布している資料をぜひご覧ください
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消費者調査のバイアスを補正するために、どんな工夫をしているか?分析時の詳しいノウハウは以下のnoteで解説しています。
【ストアカ公式リスキリング講義】
AI時代を生き抜くデータ・リテラシー養成講座もぜひご覧ください。私は、私単体またはプロのリサーチャーとタッグを組んでマーケティング・アナリストとしての支援を複数行っています。
この講義では、実際の支援で活用している研修も提供しています。時系列データ解析による効果検証のMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)や、プレファレンス・アナライザーのダッシュボードの1枚を実装すレクチャーを録画講義で提供します。
「確率思考の戦略論」で紹介されたNBDモデルを実際の調査データで分析して理解する演習もあります。
本番の演習では、ビジネスマン向けにマーケティング×データ分析の基礎を生成AIを活用でトレーニングする方法を共有します。ブランドの基礎を知るため、またはマーケティング仮説思考のためにBardを活用する方法や、VBAのプログラムコードをChatGPTで書くことで業務効率を上げる方法を演習します。
秤のプレファレンス・アナライザー紹介HPでは1800円OFFのクーポンをご案内しています。
【MarkeZine Day 2023 Spring 登壇記事】
MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)への関心の高まりの背景について、MMM歴10年選手として私も参加させて頂きました。モデレーターは松本健太郎氏。MMM歴20年選手のMETA中村氏からお聞きしたグローバル潮流の話は大変勉強になりました。
※本noteは上記記事の追記や2023年8月に取得したプレファレンス・アナライザー商標登録に伴い、何度か更新させて頂いております。