新しい年

2020年が無事に明けた。
2019年は、ちょっと足踏みしたような年だった。2018年に「これを残さなければ死ぬに死ねない」とまで思いつめたテーマをやっと本にすることができて、では次に何に取り掛かるか考えている時に、児童図書のヒットメーカーである編集者の方に「あの本(小笠原が救った鳥)は、子ども向けにもしたほうが良いですよ」と言っていただき、児童図書の出版社を紹介していただいた。
その原稿を書くにあたって一番気をつけなければならないのは経済なのだった。2018年の暮れ、愛猫2匹のうち13歳のネコが尿管結石を発症し(しかも1本ではなく2本とも)、病院に駆け込んだところ、すったもんだあって(これを書くととても書ききれない)SUBシステムという最新の手術を受けることになった。それが70万ぐらいして、さらにその前後の入院や治療を含めるとおそらくは100万ぐらいかかってしまったのである。
ネコの保険には入っていたが、うかつなことに腎臓病疾患には使えないという。そもそもが綱渡りで行きているので、保険の解約という自分の老後は投げ出しての治療で、なんとか黄泉の国から呼び戻すことができた。

ということで、フリーランスの仕事をしながら週に4日、ある会社でデジタルアーカイブの端くれ的な仕事にありついて、平日1日の休みと土日はフリーの仕事にあてるという、お休みなしの1年を送った。
平成から令和になった関係での大連休もあったが、その間もひたすら、新しい本と経済活動の原稿を書き続け、なんとかしのいだ1年だった。

その、通っている会社で行っている仕事は、アーカイブから現在は編集の仕事にシフトしてしまったが、これがまた「会社ってこう動いているんだ!」と驚くことだらけの日々だ。これも守秘義務がある仕事なので、今は何も言えないが、フリーで30年近く生きていると、スピード感のあまりの違いに驚くばかりだ。もちろん、遅い方に。

気がつけばアラフィーとか言っている場合じゃなく、ほぼほぼアラカンといえなくもない歳になりつつある。20代は夢中すぎて仕事でも人に迷惑かけまくり、30代でようやくなんとか独り立ちしてやっていけるスキルが身について、私的な活動(小笠原に関するNPOをやったりとか、もろもろ)もあれこれやってもなんとかなって、40代はその発展型、50代は著作を残すという形になってきているが、このままこういう仕事が続けられるとも思えない。
周囲を見ると、少し上の人たちの、自分のやり方や考え方、理解の仕方についての固執ぷりに驚かされることがある。自分の考えや理解以外の話を聞くと頭ごなしにまず否定から入り、大声で「そんなのはダメだ」と威圧する人々。
ああいうふうにだけはなりたくないが、それもまた、人間の自然な経年変化ではある。できるだけ気をつけたいけれど……。

20,30代のときのようにやりたいことを全部やろうとしてももう時間がない、というような年代だ。仕事にしても、私的な活動にしても、絞り込んでちゃんと結果が残せることを選んでやっていかなければならない。
周囲を見れば、私の同世代は子どもが社会人になって、ようやく手離れしたところ。私など、自分ひとりとネコで手一杯という、周囲から見れば気楽でいいわね〜というような立場なのだ。
自分のこともだけど、もう少し、今まで受けた恩を次の誰かに手渡さなければなあと思う。
でも、人の役に立つってどういうことだろう? これはこのところずっと考えていることだ。押し付けや自己満足じゃなく、人の役に立つってどういうことだろう。
これはこれからも学んでいかなければならないことだ。いい年をして、まったく、知らないことだらけなのだ。

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