文化の成熟がCGM成功のカギになる【声の履歴書 Vol.26】
こんにちは。Voicy代表の緒方憲太郎です。
この「声の履歴書」という連載は、Voicyがこれまで歩んできた道のりについて創業者の私があれこれ語っていこうというシリーズです。よかったらマガジンをフォローしてくれると嬉しいです。
さて前回はVoicyがなぜオープンなCGMにしないのか、その理由について書きました。今回はその続きで、「Voicyとは完全に別でCGMの音声サービスをやるのはどうか」を考えてみたいと思います。
CGMとは
「Consumer Generated Media」の略。掲示板などのように、誰でも投稿ができるメディアのこと。
Voicyでトップ層のプロデュースをするのと同時に、誰でも参加できるサービスを作って発信者の裾野も広げるという発想です。
テキスト文化の成熟から「note」が生まれた
審査で選ばれた発信者と、広くCGMで募った参加者を別サービスでそれぞれ活かすのは、cakesとnoteの関係に近いものがあります。
note社はcakesでプロのクリエイターのコラムなどを配信し、noteでは誰もが自由に発信できるようにしています。
ではVoicyもnoteのような音声サービスをつくることができるか?
結論としては「やってみないとわからない」なんですが、ちょっと深堀りしてみましょう。
noteの事例を見てみると、まずテキスト文化の成熟というのは見逃せません。テキスト文化がすでに成熟した上でnoteというサービスができているわけですね。
すでにテキストを書くスペシャリストがいて、ブログによって書き手の大衆化も起きていました。だから、みんなが書く文章そのものはnote以前と以降で何も変わっていません。
文字と音声はメディアの成熟度が違う
でも音声文化はまったく逆です。文化自体がまだまだ未成熟。
音声の場合は、まずテキスト文化における「本」のようなフラッグシップなメディアがないといけない(もちろんラジオはありますが)。そこから個人が自分で発信してメディアになるという世界観そのものを作る必要がある。
いずれどこかのタイミングでたぶん大衆化するとは思いますが、まだめちゃめちゃ早いという印象です。
要はメディアとしての成熟度がまったく違います。成熟度がほぼ100になっているところから120を作りにいったのがnoteの体験で、Voicyは成熟度が5ぐらいを20に上げようとしているところだと思います。
これがCGMをやらない理由であり、パーソナリティを審査制にしている理由でもあります。
知らない音声コンテンツを聴かせるのは難しい
この問題に関連するんですが、僕らがずっと命題として苦しんでいることって、「音声コンテンツを聞きたいと思ってもらうためにはどうするか?」なんです。それも自分がご縁のない音声コンテンツを。
自分の知っている人の声だったら聞きたいとか、タイトルが気になったから聞くとか、聞きたくなる理由はいろいろあるとは思います。ただ、人が初見の誰かの音声を聞きたいと思って、そこで聞いてみてすぐに面白いと感じるまでのフローがめちゃくちゃ難しい。
聞き始めて15秒で面白い音声コンテンツってなかなかないです。15秒間キープするのが難しいんですよね。ここに対して答えを持っていないからCGMをやっていない、というのもあります。
だからVoicyに選ばれた時点で「ある程度聞く価値はある」と思われるようなブランディングをパーソナリティにもつくってあげたいと考えています。それがVoicyがプラットフォームとしてパーソナリティにできることの1つだと思います。
どれも選抜されているコンテンツだから、新着から順番に聞けばOKでしょみたいな、そういう存在になりたいのです。
漫画だと4〜5ページくらいパラパラみたら面白そうだ、自分に合ってそうだってわかる。動画もある程度わかるんですよ。絵の綺麗さ、画面の雰囲気で自分なりの好き嫌いは判断できますから。
もしかしたら音声でも始めの15秒ぐらいで、「今日はこういう話するから!」「こういうオチくるから!」「最後こう面白いからね!」「さぁいってみましょう」みたいにやって、一気に食いつけるようにする人とかが出てくるかもしれない。
そういったものがいろいろ試されて、定着してくると面白いなと思っています。それも文化の成熟だと思います。
ーーというわけで、数回にわたってVoicyとCGMについて語ってきました。でも本当にここはめちゃめちゃ悩むんですよ。だってユーザー数とかパーソナリティの数とかっていう数字で判断されるじゃないですか。多ければいいいと思われがちです。次回はそういうときに求められるブレなさと臨機応変さについて書いていきます。
声の編集後記
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