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任天堂の可能性と現状について

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はじめに

今回の記事は任天堂に関しての記事となります。任天堂は日本を代表するゲーム企業で、任天堂のIPビジネスは世界トップクラス。世界のトップメディアフランチャイズ(IP)を見ると、マリオは8位。

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引用:TitleMax

そして直近の任天堂の決算を見ると、かなり順調に伸びている。

あつ森の成功事例、Switchが順調に売れていること、そしてUSJとコラボして開くSuper Nintendo Worldを考えると、任天堂が今後も期待される会社のように見える。しかし、今の会社の戦略や文化を見ると、幾つか懸念点がある。そこで、今回は世界トップクラスのIPビジネスと可能性を持つ任天堂の不安要素を解説します。

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引用:http://slamdunk.get0ver.net/taoka/867

事前に説明すると、私は任天堂や任天堂の競合の株主でも無ければ、別に内部情報を持っているわけではないです。これは私個人の意見と、私が幾つか読んだ面白い記事をベースに書いているものとなります。長文記事とはなりますが、英語で読みたい方は以下記事をご覧ください。

任天堂はアメリカではよく時期ディズニーとして見られていることが多い。実際に任天堂のIPラインアップを見ると、ディズニーと並べる強さはあると思うし、「任天堂がスマホ事業・オンラインにちゃんと事業展開できればすごいビジネスになる」と言う人も多い。長年成功しているIPと素晴らしいストーリーテリング、そして画期的なハードウェア技術を作れる任天堂はその可能性がある。任天堂アメリカのトップは任天堂をエンタメ企業とポジショニングをしたいと聞くと、まさにディズニー化出来るのではないかと思う人がたくさんいる。

任天堂アメリカのトップが語る任天堂の戦略は三つに別れている:
1) 独自のハードウェア・ゲームコンソール事業(今現在ユーザーが任天堂を知る・エンゲージする方法)
2) モバイルゲーム事業(今後ユーザーが任天堂を知る・エンゲージする方法)
3) ゲーム以外のIP事業(任天堂のスケール方法)

「任天堂はマリオ、ゼルダ、ポケモンなど素晴らしいIPで作られている。このIPをどう他のエンタメプラットフォームへレバレッジするか成長戦略となる。最終的にユーザーはマリオのTシャツ、シリアル、Switchなどを購入するのはそのIPが好きだから。」 -- 米任天堂プレジデント レジナルド・フィサメィ氏

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引用:任天堂経営方針説明会

これは過去のストリーミング記事でも紹介したディズニーの戦略に近しく聞こえる。

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引用:Business Insider

ただ、ディズニーと任天堂は今現在かなり違う事業であり、今後もそれは変わらない気がする。唯一の近しいところはお互い世代を超えるトップIPクリエイターであること。残念ながら、今現状の任天堂だと恐らくディズニーと同等レベル・超えられる事業体になりにくい状況であると思います。

これは任天堂を単純に批判している記事ではなく、逆にこれだけ素晴らしい事業とIPを作れているのに、勿体ないことをしていることを示したいと思っております。今後任天堂は任天堂のままであり続けると、ニッチなビジネスに向かっていることを証明できればと思っております。

サマリー

任天堂の今までのビジネス、そしてこれまで経営メンバーが話していたことや行動を見ると、いかが不安要素になると思ってます:

不安要素①:ハードウェア企業がメイン事業であること
不安要素②:外部連携するプラットフォームになっていない
不安要素③:世界トップクラスのIPを持っているのにゲーム・コンテンツを出すスピードが遅い
不安要素④:オンライン・スマホへのシフトが出来ていない
不安要素⑤:D2C化にそこまで興味がない
不安要素⑥:社内文化が変わらない

今回の記事では一つずつ解説していきます。

不安要素①:ハードウェア企業がメイン事業であること

任天堂のメイン事業はゲームではなく、ハードウェア。任天堂はSony・Microsoftのようなプラットフォームを出しているが、他社と比較して圧倒的に自社開発したゲーム・タイトルからのソフトウェア収入が多い。実際に任天堂のソフトウェア売上の85%は自社タイトルから来ている(他社は10%〜20%ぐらいが普通)。

任天堂の戦略はハードウェアありきの自社ゲーム開発を行う会社。任天堂はこれまで画期的なハードウェア技術(D-Pad、アナログスティック、VR、モーション型コントローラーなど)を開発してきた。

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引用:Gaming HistoryPhoenix Web Files

任天堂の直近の経営方針説明会の資料を見ても、このハードウェアありきな方針が分かる。

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引用:任天堂経営方針説明会

そして新しいコンソールを作る度に画期的なゲームを作ってきている。GameRankings/Metacriticの歴代トップゲームのランキングを見ても、トップ20のうち6作は任天堂が開発したゲーム。

これだけゲームコンテンツを作るのが得意な任天堂に対して、多くの海外投資家は任天堂はハードウェア事業から撤退するべきと話している。その一部の理由は、意外とハードウェアが儲からないから。

例えば7代目ゲームコンソールで勝ち取った任天堂のWii。Wiiの1.05億台と比べてPlaystationは9,000万台、Xboxは8,500万台(しかもPlaystationとXboxの方が高い)と、そこまで変わらない。しかも任天堂のハードウェアはヒットと失敗の繰り返しが続いていてる。初期Nintendo 64は大ヒット、次にリリースしたGameCubeは失敗、そしてWiiはヒット、Wii Uは失敗、そしてSwitchは大ヒット。そんなSwitchもPlaystation 4の販売台数を45%下回っていて、Xbox Oneを10%上回っただけ。

直近Bloomberg記事で任天堂が新しいSwitchを来年リリースすると発表。これはPlayStation 5やXbox Series Xと対抗するため。任天堂はSwitchの前のプロダクトWii Uが失敗したため先にSwitchをローンチした。そのため、PlayStation 5とXbox Series XをSwitchと比較すると、SonyとMicrosoftの商品の方がスペックが高い。しかもSonyとMicrosoftはクラウドゲーミングにかなり投資しているため、将来的にPlayStationやXboxゲームをスマホやタブレットでもプレーできるようになるので、そうするとSwitchを買う意味合いが無くなる。任天堂はよりパワフルなSwitchを作ることによって、それに対抗しようとしている。

ハードウェアが影響するソフトウェア売上
ソフトウェアの売上を見ると、かなりの差が見える。特にWiiはプレーする人が徐々に減っていった。2009年がWiiのソフトウェア売上のピーク(リリースしてから2年目)。2013年にはWiiハードウェアの数は2009年と比較して2倍に上がっていたが、ソフトウェアの売上は75%減。

逆にPS3とXbox 360(ほぼ同時リリースのコンソール)の売上は2014年まで伸びた(2014年にPS4とXbox Oneがリリース)。

ソフトウェア売上に苦しんだ主な理由は任天堂はハードウェア企業として動いているから。任天堂が自社でハードウェアとソフトウェアをコントロールするに当たって二つの不安要素が増える。それが外部連携するプラットフォームになれてないことと、トップクラスのIPを速いスピードでゲーム化・コンテンツ化出来なかったこと。

不安要素②:外部連携するプラットフォームになっていない

SonyやMicrosoftがハードウェア(コンソール)を開発するのは、ハードウェアのマージンが低くても、ハードウェアがコントロールするプラットフォームを第三者のゲーム開発会社に提供してライセンスフィーをもらうところに大きな事業が存在するから。

ただ、任天堂の場合は第三者のゲーム開発社と組むことはSonyとMicrosoftと比べて頻度が低い。任天堂の開発したゲームは他プラットフォームに出ることが少ないため、任天堂のゲームはかなり限られた市場規模しかない。恐らく数億人もいるPlaystationやXboxのゲーマーは$60払ってスーパーマリオを自分たちが持っているコンソールでプレーしたいと思うが、$300かけてSwitchを買うまでに至らない。

あつ森もかなりSwitchの販売を加速させたし、あつ森ファンがいっぱいいるのも分かるが、任天堂が他のプラットフォームでもあつ森を販売していればよりユーザー数が集まって、よりSNS化しているはず。6,000万台も販売されていないSwitchだと、いくらヒットゲームを開発しても市場が限られる。だからこそクロスプレー出来るゲームが増えている。Fortniteが2.5億MAUを達成できた大きな理由はクロスデバイスを対応していたから(詳細は過去のOff Topic記事を)。

さらに、Wii見たいな独自ハードウェアを作ると任天堂としては独自性という優位性を作れると同時に、ゲーム開発側としては対応しづらいのが事実。Wiiがリリースされていた時に、開発側からすると、一つのゲームを作って、同時にWii・Xbox 360・PS3にリリース出来るのはかなり魅力的。Wiiは他社と比べてスペックが高くなかったため、開発者はWii専用バージョンを作らなければいけなくなる。

実際にWii用に開発しても、Wii特有のモーションコントローラーを活用しないケースの方が多かった。しかも任天堂のトップゲーム(ゼルダ、スーパーマリオ、スマブラ)はモーションコントローラーを上手く活用してなかった。

結局任天堂はクローズドなハードウェアを売るビジネスになっていた。そのハードウェアベースの事業は任天堂の最も重要なアセットであるIPを拡大しにくくしている。

不安要素③:世界トップクラスのIPを持っているのにゲーム・コンテンツを出すスピードが遅い

任天堂は大体一つのコンソールにつき自社IPフランチャイズから一つのゲームしかリリースしない。大体コンソールは5〜6年続くので、あまりゲームをリリースしないことになる。スマブラも5つのタイトルしか出してない。

他社が任天堂のIPを保有していたら、恐らく2〜3年に一度ゲームリリースをするだろう。ゲームと映画業界は違うが、ディズニーが持っているマーベルの映画を出すペースを見ると、マーベルユニバースの初期5年では毎年1.2作品をリリースしていたが、2016年以降は毎年2.75作品をリリースしていた(しかも平均収入が1.5倍ぐらいになっている)、そして今後は毎年映画4作品と2〜3テレビシリーズをリリース予定。もちろん映画業界はゲームとは違うが、盛り沢山のIPを持っている会社だとコンテンツリリースするペースが上がっているのがアメリカでは普通になっている。

任天堂がそれをやらない理由は、本当に良いアイデアと面白さがないとゲームをリリースしないと言う信念があるから。これは良いことでもあり、悪いことでもある。

ゲームだとリメイク作品が多い。Capcomのバイオハザードは何回もリメイクされたり、Square Enixも1997年にリリースしたFinal Fantasy VIIをリメイクしている。任天堂も名作「ゼルダの伝説:時のオカリナ」を1998年にリリースしてから4つの作品を作っているが、同時期にFinal Fantasyは10作品出している。リメイク作品は大体成功しているのに、任天堂はハードウェアが生き残るためにゲームをリリースし続けない。

任天堂の素晴らしかったところは新しいハードウェアと同時に完全にゲームを作り替えているところ。このクオリティ担保は任天堂の強みでもあり、スマホ領域で苦しんでいる理由でもある。

不安要素④:オンライン・スマホへのシフトが出来ていない

スマホ・モバイルはゲーム市場の40%をしめていて、ゲーム市場の成長部分の60%以上を占めている。任天堂が主に戦っているコンソール市場は大体市場の30%を占めていて、特に伸びてはいない。そうすると任天堂がモバイル市場に入り込むのは当たり前と思えるのと、多くの人は任天堂がスマホ市場に入れるからこそ事業拡大できると思っている。

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引用:Matthew Ballブログ

ただ、任天堂のスマホ履歴を見ると、かなり苦しんでいるのが分かる。まず2016年にリリースしたSuper Mario Run。7億ダウンロードとすごい数字を達成したのに、4年で$75Mぐらいの売上しか達成していない。億単位のダウンロードで$100Mの売上を達成していないのは過去ないほど悪い実績。

2019年にリリースしたMario Kart Tourは$90Mの売上で多少数字は上がったが、3年前にSuper Mario Runをリリースしてから市場が10%ほど伸びている。しかも2019年にリリースしたDr. Mario Worldは$10Mの売上を超えなかった。結局ヒットしたものは日本だけでヒットしたものか、任天堂がほぼ絡みがなかったスマホゲーム。Fire Emblem: HeroesやPokemon Goは良い事例。Fire Emblem: Heroesの売上の半分以上は日本だし、実際に任天堂はそのゲームの開発にあまり関わっていない。

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引用:Master the Meta Substack

上記任天堂のゲームタイトルを見ると、Fire Emblem: HeroesとDragalia Lostは実際任天堂はあまり関わってなかった。そしてここに記載がないポケモンGOもNianticが運営している(任天堂とポケモンカンパニーは開発者として記載されてない)。

任天堂が自社開発したマリオ系のアプリを見ると、あまりスマホ市場を理解していない、もしくは興味がないことが分かる。2016年にリリースしたSuper Mario Runは二つの無料レベルしかなく、追加で$10払うとゲームをプレーできるようになっていた。これは任天堂のいつも通りのコンソールゲームと似ていて、スマホゲーム特有のエンゲージメントベースのアプリ内課金が存在しない。

その3年後にMario Kart Tourをリリースした際もモバイルゲームではほぼ必須になっているソーシャル・マルチプレーヤー機能をリリース時には入れてなく、リリースしてから半年後にようやく追加した(しかもランドスケープモードはリリースから10ヶ月後!)。Mario Kart Tourはそれ以外に色んな問題を抱えていて、結局かなり低いレビューされた。

そしてスマホの成長と共に、任天堂はオンライン化されているゲームとゲームマネタイズモデルを無視しすぎている。そもそもSwitchでプレーするあつ森はゲーム内課金はない。任天堂はデジタルコンテンツで課金するつもりはなさそうだし、サブスクモデルもそこまで注力してなさそう。直近で人気なあつ森を見ても、任天堂のフォーカスが分かる。IRと見ると、あつ森のおかげでSwitchの売上が大幅に増加したことを話しているが、あつ森自体での売上や今後のスマホを展開に関して話していない。逆に6月のBloomberg記事では任天堂はそこまでスマホ市場で新しいアプリをリリースし続ける予定はないと語っている。任天堂は2019年のWSJ記事によるとスマホゲーム開発者に対して一人のプレーヤーがそこまでお金をかけないようにマネタイズモデルを設定してくれとお願いしたらしい。

任天堂はスマホアプリではなく、ハードのSwitchにフォーカスしているのは、経営方針説明会の資料で明確に分かる。スマホアプリからどれだけSwitchに誘導させられるかを考えている。

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引用:任天堂経営方針説明会

本当はSwitchだけではなく、クロスデバイスであつ森をプレーさせて、スキンなどデジタルコンテンツで有料化するのが今風のゲーム(Fortnite、Minecraft、Robloxなど)だが、任天等は結局ハードウェア企業なので、デジタルコンテンツでユーザー課金させるのは嫌がっているっぽい。

仕方がなく入ったオンラインゲーム市場
任天堂はこれからスマホに注力すると思う人がいれば、任天堂がオンラインプラットフォームの進化にどう対応したかを見ると良いかもしれない。PCゲーム市場は1990年代後半にオンライン化、コンソール(Xbox)は2002年からオンラインストアなどをリリース。PlayStationもPlayStation Networkを2006年にリリース。オンラインでのゲームプレー(特にマルチプレーヤーのゲームプレー)はスタンダードになり始めていた時期。

任天堂はオンライン化をかなり避けていて、あまり注力していないのが分かる。今まで2つのオンラインサービスをシャットダウン(2012年にNintendo Wi-Fi connectionをシャットダウン、2018年にNintendo Networkをシャットダウン)。多くのゲーマーは任天堂の今のオンラインサービスは10年以上前のSonyやMicrosoftのサービスと比較しても悪いと言っている。

このオンライン化を避けたい理由は二つ重要なインパクトがある。一つはマネタイズモデル。2014年のXboxを見ると、3,000万人ほどが毎月$6〜$10払っているユーザーがいた。任天堂は直近でNintendo Switch Onlineのユーザー数を去年から倍の2,600万人の有料会員にまで増やしているが、これはXboxのBattle Passのような最新のゲームを月額費用を払ってアクセスできるものではなく、オンラインで友達とプレーしたり、クラウド上でゲームデータを保存できる機能がメイン。

そしてもう一つはオンラインで存在するゲームは常にアップデートされたり、ファンからユーザー生成コンテンツが出たり、マーケットプレイスが作られたり、オンライン上の「世界観」を作ることが出来る。任天堂のゲームを好きな人は誰でもオンライン上でバーチャルなハイラル城に入ってみたい。この「Games as a service」モデルは任天堂はそこまで興味がなさそう(あつ森では数ヶ月に1回アップデートするらしいので、少しずつ変わっているかもしれませんが)。

任天堂がMicrosoft、Sony、ディズニーのように月額課金モデルに切り替えるのは必然的に感じるが、今のところそういう動きはなさそう。ただ、例えば毎月1,000円払ってどんな任天堂ゲームにアクセスできるとなると、払う人はいっぱいいるはず。実際に最近のNintendo Switch Onlineでは昔のファミリーコンピューターやスーパーファミコンのゲームをプレーできるようになったが、最新の任天堂ゲームを月額払うと自動的にアクセスもらえて、過去のゲームもアクセスするモデルをそれをやるだけで一人当たりの売上が倍増する気がする。

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引用:任天堂サイト

結果として、今の人気ゲームを見ると、任天堂がオンラインに注力していれば同等レベルのものを作れたと思うことが多い。
・Fortnite → あつ森
・Fall Guys → マリオパーティー
・Need for Speed → マリオカート
Fall Guysは特にマリオ・パーティーと日本のテレビ番組をコンセプトとしたゲームだった。

このような機会損失をしている1番の理由は技術・ノウハウ・やり遂げる能力などではなく、簡単にいうと任天堂の社内文化と会社方針。

不安要素⑤:D2C化にそこまで興味がない

任天堂とディズニーの根本な違いは、何をベースにイノベーションを考えるか。任天堂の場合はハードウェアありきのソフトウェア。ディズニーの場合はテーマパークが戦略のセンターピースとなっている。テーマパークでのストーリーテリングをするために技術開発や投資を行っている。ハードウェアとテーマパークはどちらとも膨大な初期投資が必要だが、テーマパークの方が収益が出るビジネスではある。

任天堂はそれを理解しているからこそユニバーサルと一緒にテーマパークを作ろうとしている。これは低コストで良いIPビジネスに見えがちだが、実際は違うと思っている。ユニバーサルに任せることによって、任天堂は直接ユーザーと繋がれなくなってしまうし、ほとんどの収益はユニバーサル側に回る。任天堂はコンソールではD2C化しているのに、テーマパークは逆の方向に行っている。それは結局任天堂は社内で最も重要視しているものはハードウェアだから。

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引用;Master the Meta Substack

ディズニーは自分の顧客層をより知ることがマネタイズに繋がると理解している。そのため、テーマパーク以外にディズニーストアを200店舗ほど運営している(任天堂は2店舗しかない)。さらにディズニーは自社でグッズ制作などを行っている。誰がどういうものを欲しがっているかを理解して、それに対してテーマパークやグッズをアップセルするビジネス。だからこそディズニーは数千億円払ってDisney+を開発し、赤字事業として運用しても問題ないと思っているのはDisney+のおかげでよりユーザーと親密な関係性と、初めてテーマパークやストア以外で個人レベルでユーザーがどのディズニーキャラクターが好きかが分かるようになったから。

最終的に任天堂は高いクオリティーのゲーム・コンテンツ制作したい舞台。そのクオリティーの期待値が文化に染み込んでいて、だからこそ任天堂は今後もそこまで変わらないと思っている。

不安要素⑥:社内文化が変わらない

今年ローンチした任天堂とレゴのコラボ商品は多くのメディアに取り上げられて、すごく高い評判を得られた。

ただ、ほとんどの人が知らなかったのは、このコラボ商品を出すために実は5年かかった

任天堂のクオリティーへの執念と文化がコンテンツリリースの遅い理由。延期したゲームは将来的に良いゲームになるが、悪いゲームは永久で悪いと任天堂の宮本さんが語った。この思いは今でも任天堂の社内にあるはずで、自社で全コントロールを持ちたいのは過去にPhilipsが作った三つのゼルダのゲームと一つのマリオのゲームが大失敗したのと、1993年に公開したSuper Mario Bros.映画が大失敗したのが大きい。この過去の失敗、社内での高いクオリティーを出したい文化、そしてバーチカルインテグレーションをしたい方針が変わらない限り、任天堂の事業戦略は変わらずハードウェアありきのソフトウェア・ゲーム・コンテンツ制作になる。

実際に任天堂が経営方針説明会で「今後の展望」を説明する時に使ったスライドはこちら。

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引用:任天堂経営方針説明会

任天堂の立ち位置が変化している

任天堂は世界で戦えるIPを持っているが、徐々にそのIPの強みは消えている。1990年のアンケートではアメリカの子供たちはミッキーマウスよりもマリオを知ってたと判明したが、今では絶対そうではない。

そして、Minecraft、Fortnite、Roblox、GTAなどが上がっていく中、任天堂はニッチになっている。過去5年の任天堂のヒットゲームタイトルを見ても、各タイトルは2,000万個の販売で、恐らく今では100万MAUぐらい。それと比べてFortniteは何時でも1,000万人アクティブユーザー、Robloxは最近400万人ぐらいまで上がった。

しかも任天堂の自社ゲームタイトルは自社プラットフォームでしかプレーできないと、今後どんどんニッチ化されてしまう。RobloxやFortniteはどのコンソールでもプレーできるから友達同士でプレーする。

ここ5年ぐらいでゲーム市場はかなり変わったが、一番画期的な変化はゲーム業界はハードウェアベースのイノベーションからサーバーサイドのイノベーションへ切り替わったこと。コンソール、PC、スマホ、タブレットなどはただのアクセスポイントでしかなくなった。今重要なのはゲーム内のネットワーク。Fortniteはまさにそれを証明している。Fortniteは無料でどのデバイスでもプレーが出来る。全員スマホを持っているので、やらない言い訳がつかないのと、プレーするハードルが低いから友達が集まり、友達がみんなプレーしていると自分もプレーするしかなくなる。

Microsoftの最近の動きを見るとこのハードウェアからサーバーへのイノベーションがわかりやすいかもしれない。MicrosoftはXboxを提供していて、大体新しいゲームは最新のXboxでしかプレーが出来ない。ただ、今後2年間Microsoftがリリースするゲームは新しいコンソールのXbox Series Xだけではなく、過去のXbox Oneでもプレーが出来るようになっている。しかもXboxのゲームサブスクサービスに加入するとクラウドゲーミングサービスが無償でついてくる。

任天堂を変えるとすると?

1990年代にイノベーションが出来なくて死にそうになったAppleとディズニーの事例を見ると、大きなテック・エンタメ系の会社が変わるにはM&Aがベスト(もちろん任天堂は死にそうではないし、当分の間は経済的に大丈夫そう)。ディズニーはPixarを買収して3Dアニメーションで自社スタジオを作り変えられて、マーベルの買収は新しいIPとストーリーテリングをするため。AppleはBeatsで音楽配信、Quattroでスマホ広告など多くの買収を行っている。Disney+もいくつかの買収を行って作ったサービス。

任天堂はもちろん当時のAppleやディズニーほど悪い状況にはいない。まだ世界で通用するIPを持っているし、何千万人にリーチできる力がある。ただ、スマホ、クロスデバイス、サーバーサイドのイノベーションへのシフトは今までみたいに無視は出来なくなる。今の市場の成長、アテンション、そしてお金がここにある。そこに任天堂は社内文化からシフト出来なければ、無理やりでも買収をするべき。Activision Blizzardがスマホ領域に入り込むためにCandy Crush開発したKing Digitalを$6Bで買収、そしてEpic Gamesはコンテンツ事業を作り上げるためにChair Entertainmentを買収。

ただ、今までの任天堂を見ていると、自社の市場規模が削減しても、よりニッチな会社になっても、そこまで替わろうとしないようにしか見えない。任天堂は任天堂らしくありたく、他の会社のようなスケールする方針をとる気はなさそう。

結論

任天堂は圧倒的なIPラインアップやFortniteと競合になり得るあつ森を持っている。ただ、ハードウェアに注力しすぎているから今の時代のゲーム市場にうまく入り込めてないのは確かである。そんな中任天堂が売上成長しているのを見ると、フラストレーションしかたまらない。本当は今の2〜5倍ぐらいの規模は軽く行けるはずの会社が止まっているように感じる。特に最近人気のFall Guysを見ると、任天堂の機会損失はどれだけあるのかを考えてしまう。

そんな任天堂も少しずつ変化があると信じている。テーマパークの開設、1993年以来の任天堂映画(2022年か2023年リリース予定)、そして最近のゲームはダウンロードできるゲームコンテンツがある。あつ森もFortniteほどではないがアップデートされているのを見ると、任天堂がこのオンライン・スマホ市場でも勝てる要素はあると思う。

任天堂がこれからどんどん進化して行くこと、そして自分の分析(任天堂が変わらないこと)が間違っていることを期待して、今後も追い続けたいと思います。

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Written by Tetsuro (@tmiyatake1) | Edited by Miki (@mikirepo)


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コメント (6)
よくあるアナリストの分析(そしてよく外れる)と主張が変わらないうえに、ハード分析の例が二世代前のWiiのみ、ライフサイクル中期のスイッチとライフサイクル末期のPS4で売上を単純比較、任天堂がゲームのオンライン化に消極的等々色々と記述が怪しいのですが。
おそらくゲームは普段あまりプレイせずちょっとした思いつきで執筆された記事だと思いますが、今までのIT系の記事もこの精度で書かれていたわけではないのですよね?
確かに任天堂のゲームが任天堂ハードでしか遊べないのはもったいないですね。あつ森だって社会現象になったのに、外野で見てる人の方が多そうです。
機会損失って結構ありますね。
今の任天堂のあっちもこっちも手を出さないやり方は嫌いではないので、こだわりと丁寧さでこれからもやっていって欲しいとは思います。
まぁ日本では売れてるけど、海外ではジョイコン問題等々で評判かなり下がってきてるのが危険。
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