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デジタル時代のウェルビーイングを考える

先日、設計させてもらった三鷹の美容室で髪を切ってもらっているときにdマガジンでWIREDを読んだ。特集は「DIGITAL WELL-BEING」というお題目。

いま人類が必要とする「ウェルビーイング」の意味を問い、その可能性を更新する今号。

その世界観を描写する表紙のロボットは弐瓶勉によるデザイン、そしてCGに白組によるオリジナル。自然を積極的にハックする「WIREDリトリート」からスタートし、テクノロジーや動物、ロボットとの共生のなかにウェルビーイングを見出していく試みは、その先にある、感覚の拡張としての「シナスタジア」や、身体の拡張としての「トランスヒューマニズム」へと至る。

デジタル時代のウェルビーイングの可能性を問う一冊は、同時に、西欧的個人主義に根ざした幸福の定義へのカウンターとしての「日本的ウェルビーイング」を提示する。

『WIRED』日本版が標榜する
自然とテクノロジーの融合の先に、
新たなウェルビーイングは生まれるのか?

WIRED 日本版 vol.32 より

という感じ。どうですか?惹かれますか?

わりとハイコンテクストで、読む人を選ぶ特集ではある。その中でも良かったのは「サピエンス全史」の著者による対談で、その対談が特にデジタル時代のウェルビーイング=幸福のあり方を探るヒントになっていた。

今号は個人的にはすごく良かったので買うことにした。中身のネタバレはあまりしたくないので、特に気になった問いだけ共有しておきたい。


リコメンド機能は人を幸せにするのか?

一つ質問しよう。あなたの5歳の娘がリビングでタブレットを手にYoutubeのキッズチャンネルを見ている。他のどこかのこどもがおもちゃで遊ぶ動画だ。ありふれた日常の光景だろう。

しかし、Youtubeのアルゴリズムは視聴者の嗜好を的確に予測して、次はこれ見たいでしょ?その次はこれでしょ?と延々とおすすめ動画を表示してくる。

もちろん、合間にはCMを流して広告収入も忘れずにゲット。

娘とは最初に15分程度と約束したが、動画を見るうちに娘はもっと見たくなり、そろそろ時間だと言っても聞き入れやしない。

これは、Youtubeの動画のリコメンデーションシステムを組む側にとっては狙い通りの光景だろう。ビジネス的には正しい。無料視聴のユーザーにはCMを何度も見てもらわなければ、サーバー費用もエンジニアの給料も払えない。

でも、心身が未熟で発達段階の幼いこどもに、消費を喚起させるCM付き動画を際限なく見せる中毒的なリコメンドを行うことは、はたして本当に人類みんなを幸せにする方向性なのだろうか?


全てが消費に結びつく時代へ

現代のシステムのほとんどは資本主義ベースの上に善意と下心をまぜて成り立っている。無料に見えるものほど他の部分でお金を稼ぐようにできていて、都市生活において本当に無料のものはほぼ存在しない。

そして、ついに物質やサービスの消費だけでなく、情報も消費するようになった。

しかし、20代女子にダイエット動画と婚活動画とエステ動画を見せまくるAI分析は人を本当に幸せにするのか?

本当はもっと多様な生き方もあることを教えた方がいいんじゃないだろうか?

パリコレでふくよかなモデルが闊歩する美しさや、独身で生きる選択肢の自由さ、外的美しさではなく内的美しさを磨くヘルシーな生き方もあわせて見せたら、視聴者の生き方はより良い方向に進むかもしれない。

アルゴリズムが進化して潜在需要=インサイトをかたっぱしからONにできるようになったら、それは主体的に選んでることになるのか?というのがWIREDでも語られていた大きな問いである。

つまるところ、その「関連動画を見る」クリックは自分で選んでいるようでいて、アルゴリズムに操られて選ばされているのかもしれない。

そして、その誘導のすべてが消費に結びつくのは恐ろしくもある。


哲学のアップデート

現代の私たちの教育されてきた道徳や倫理や哲学は、そのほとんどが産業革命以降で立ち止まっている。

そして、そうした哲学のベースにあるのは「人間は主体的に物事を選べる」という前提だった。

もちろん、そんなことはない。主体的に選べるときもあるが、そうじゃない時もある。マスメディアの先導の問題然り、過熱した群集心理が暴走する問題しかり、そんなことは歴史上に多々あっただろう。

今、問題なのは「主体的に選べない時」をアルゴリズムが誘導することがこのまま進んだ場合の話だ。自分では自分の主義で支持していると思っていた政党が、実は巧みなリコメンドで共感のツボをついていたとしたら?それは本心で支持していることになるのだろうか?

ここら辺はまさしく現代版の技術革命以降の哲学のアップデートが必要で、議論をしても永遠に答えは出ないだろう。

私たちは便利な技術を手にすれば引き返すことはほぼできない。今から電気もガスも水道もない暮らしには戻れないように。

だとしたら、ここら辺で一度新しい技術との付き合いかたをちゃんと考えておくことが、先々のみんなの幸せのあり方を決めていくように思う。


僕は自分の5歳の娘のYoutubeのおすすめ動画には、もっと世界の絶景や海外のこどもたちの遊びや歌、自然の中を観察した動物や昆虫の暮らしの不思議なんかを見せてあげて欲しいと思う。

好奇心を育むことが大切な時期だからだ。

もちろん、最初からタブレットなんて与えずにTVも制限 or 禁止して育てろという意見はわかる。

しかし、現実問題どれだけ距離を取ろうと技術とはいずれ付き合うことになる。

消費者側の付き合い方はもちろんだが、作る側の倫理や道徳への理解と修練も必要なんだろう。デジタル時代のウェルビーイング=幸福のあり方とはどういうことなのか?答えはすぐには出ないが、考え続けていきたい。


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ショップディレクター/店舗デザイナー、空間からロゴデザイン・コンサル・執筆がお仕事。OFFRECO代表。吉祥寺 awai.tokyo オーナー。 デザイン論からマーケ・グルメ・育児ネタまで。地黒で腹黒な毒舌家ですが好物は糖分です。 https://www.offreco.net

コメント2件

プロダクトアウトでも、マーケットインでもない、新しい流れを感じます。
>ゆめちゃさん
儲けドリブンじゃなくて、幸福ドリブンとか道徳ドリブンで進んでほしいと思います。
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