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時代を超えるアノニマス、リビルディングセンターに感じた建築の未来

土曜日に、 #店舗メディア のコミュニティの有志で集まって長野県の注目拠点を2箇所回ってきました。山の上のパン屋こと「わざわざ」さんと、ポートランド発の廃材と古材のレスキュー拠点である「リビルディングセンター」こと通称:リビセン。


わざわざでは平田さんとも少しお話しできたのだけれど、それはまた後日まとめます。今日は諏訪にあるリビセンの方のお話。



リビセンって何?

廃材と古材のレスキュー拠点と聞くと、やっぱり思い浮かべるのは骨董屋さんのインテリア版?中古家具屋さんとかリサイクルショップと何が違うの?と思いますよね。

ビジネスとしても広義ではおんなじです。おそらく古物営業法に規定される業態で、古物商許可を取得して販売をするリサイクルショップ。

でも、売っているものが違う。値付けや、ストーリーの見せ方、そして一見するとゴミに分類されそうなものを見せ方と磨き方でもう一度価値を与える手法が違う。

「ReBuild New Culture(=世の中で見捨てられたものに再び価値を見出す)」

ここら辺は彼らの出している書籍に色々書かれているし、平田さんとの対談記事なんかも載っているので入手して読んでください。

って思ったら、自費出版なのかAmazonには存在していない!たぶん都内でもセンスの尖っているお店なら扱っているかもしれないので、気になる方は問い合わせて。(丸投げ)

彼らの扱っているもので圧倒的に他と違うなと感じたのは、物に対してストーリー=物語をちゃんと保存している点。

たぶん入荷量に対してフォロー仕切れていないのだろうけれど、本当は一点ずつ「〇〇さんの〇〇年住まれた屋敷で見つけた〇〇」とかメモをつけたいんだろうなぁ・・・なんて感じるような物の並べ方。

この、古い物に対して価値を見出す美意識は、日本のデザイン文化の中にもたくさん見つけることができます。

僕のやっている店舗内装の仕事でも、古美色やエイジング処理などの時間経過の魅力を擬似的に作る技法は需要が高く、価格も高いです。


また、日本建築の文化の中には曳家(ひきや)と呼ばれる技法があります。

石材などの土台に木で組んで瓦屋根や茅葺屋根を載せている日本家屋を、土台だけ外して丸ごと移築する技法です。

これは一見すると物を大切にする文化のようにも見えるのですが、あれだけの大規模な構造物を移築するのと、新しい場所で新しい材料で組むのと、どちらが大変なのかを考えるとただのエコ意識で生まれた方法ではないでしょう。

歴史的には1000年以上前からこの技法は使われていたそうですが、使い古されたた物に対して魂や美しさが宿るという意識は、八百万の神々を崇めて自然との共生・共創を目指してきた日本人の中に宿っているセンスなのかもしれません。


時代を超えるアノニマス

上の写真は使い古されたリンゴの木箱です。紫外線の影響で木材の色味はほぼ脱色されてグレーになり、角は丸まり、ヒビ割れています。

見る人が見ればこれは紛れもないゴミ。物流用の消耗品である木箱なのだから、傷んで壊れそうであれば使い物にならない。

でも、見方によっては時間の経過が可視化されたすばらしいマテリアルにもなる。

エイジング処理などで擬似的に雰囲気は作り出せても、本当に時間を経過してきた本物にはやはり及ばない。

もちろん、このまんま古びたものを愛でるだけならただの骨董趣味なのですが、その価値観を洗い直して仕立て直せば、より一層魅力的な一点物のアートピースに生まれ変わる可能性を感じます。

特にアノニマスな物、つまり作者不詳な何気ないものほど、見立てと仕立てで生まれ変わる可能性を秘めている。


リビセンに転がっていた物たちは僕から見ると宝の山で、これを見出して解体してゴミにされる前に救い出し、洗い直して丁寧に並べる。その仕事の眼差しに共感し、そして物の選び方には思わず「わかってるねぇ!!!」と声が漏れてしまいました。

廃材のリメイクのアート作品を販売したり、レスキューした品々の中に似顔絵作家さんの作品を並べたり(期間限定で今の時期の展示)より付加価値を見出そうとしている姿勢にも胸を打たれる。


有限な資源と増え続ける人類への打開策

着物を着る人にはおなじみなのですが、着物ってほどいて解体してから洗ってまた縫い直す「洗い張り」って技法があるんです。

リビセンがやっていることは内装や建築の洗い張りで、この価値観がこれから10年〜20年かけてアートやクラフトと混ざって成長して行ったら、日本の建築や内装デザインって地球の先端を目指せるとすら感じました。

日本は少子高齢化で資本も資源もシュリンクする一方なわけですが、地球規模では人類は増え続けていて、食料も建材も何もかも足りなくなっていくのは明確です。


そんな増え続ける需要に対して、ひたすら消費する文化を伸ばして行けば、限界へのタイムリミットは減る一方。

そこに対して、解体のたびにとてつもない量のゴミやガレキを生んでいる僕たち建築・内装業の仕事はもうちょっと打開策を考えないといけないとずっと感じてきました。


施工は簡単でもキレイに外すのは難しく、解体すれば99%ゴミになる石膏ボード。それも、管理型最終処分場で埋め立てる処理方法ばかり。リサイクルは可能でもコスト的に全然旨味がなく、ほとんど普及していません。

それに対して、取り外して洗い直せば家具などに生まれ変わることのできる木板貼りの天井材。美しく古びれば古材として新材よりも高価にすらなる。

どちらが持続可能でかつ美しく年を重ねる物なのか?トータルでの価値を増やすには何を作って、何を作らないのかを考えないといけないはずです。

もちろん消防法の話や内装制限の話もあるので、そう単純じゃない。

それでも、より美しく長く使えて、自分の子供や孫やその先の世代にも価値を見出してもらえる可能性のあるものづくりを考える義務が作り手にはあるんじゃないかと、リビセンへ行って強く感じました。

いずれ資源が枯渇していく中で、古びたものに宿る美しさを見つめて再発見する感性は、最先端のイケてる表現にならないといけない。

その為には、ただの骨董アンティーク好きを増やすのではなく、未来を見据えて新しい価値観をミックスして、仕立て直して魅せる必要がある。

もう、デザイナーの役割は言われたものをただ作るだけではなくなってきています。再発見して再構築して、未来に向けて整える。そういう仕事をする人を僕は目指します。

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