デザインの筋トレ〜本物の素材に見て、触れて、触覚センストレーニング〜
昨今はSNS大流行、一人一台スマフォや携帯を持ち歩き、一億総なんちゃってカメラマン状態ですね。
インターネット革命とも言えるこの大きな流れの中で、デザインに関していえばInstagramやPintrestの功罪としてフォトジェニックなものが広まりすぎた=視覚情報過多になっているように感じています。
WEB系の仕事のデザインワークの場合、ともすれば丸一日をモニターの前でも完結できちゃうかもしれない。
紙だとしてもDTPなら印刷工程に乗るまではPC上のデータ作成だし、僕らみたいなインテリアデザイナーでも途中まではCGパースとCAD図面ですしね。
そうした中で、なんとなくオシャレで写真映えしそうなモノを作れれば良いっていう感覚を持つのはわからなくはないです。一瞬の引きがないと全然見てもらえないっていうのは現実としてありますからね。
でも、そのフォトジェニックさの裏側にある理由って何なんでしょうね?どうして魅力を感じるのか、そこを少し考えてみませんか?
僕はその理由の一つには視覚からつながって触覚や嗅覚や記憶などの感覚の相乗効果があるんじゃないかと思っています。
人はなぜ美しいと思うのか、そこにはきっと素材感が重要な役割を持っているハズ。
そこで、今日はそんな素材感への感度を高めるトレーニング方をご紹介します。
本物の素材に触れてみる
さて、まずあなたの周りにはどんな素材がありますか?
紙、鉄、プラスチック、木、石、布、ガラスetc...
大きな括りですと有機物と無機物、自然物と人工物などにわかれますが、そこからさらに細分化するとかなり細かく別れていきます。
鉄といってもスチール、アルミ、ステンレス、銅、真鍮、チタンなどがあります。
そして同じステンレスでも表面の仕上げ方でツルツルの鏡面仕上げに、筋の入ったヘアライン仕上げ、ランダムに荒く研磨するバイブレーション仕上げなど色々ありますね。
ペットボトルとお弁当の容器は同じプラスチックでも組成が違うとか、実は色々あるんですよね。日常の中で本当にたくさんの素材に囲まれているので、とりあえず触れる奴はまず触って撫ででみましょう。
そうすると、堅さや柔らかさ、温度(熱伝導率)、表面の触感などの情報がわかります。これらはその素材の組み合わせ方や使われ方でも変わってきます。
炎天下の屋外で鉄の椅子には熱くて座れませんが、木ならなんとか座れるのは熱伝導率の低さゆえ。意識して触れる事でこうした体験を集めていきましょう。
素材の物性、製造工程を調べてみる
次に、同じ素材でもその作られ方や工程で姿を大きく変える場合もあります。
例えば木材を仕上げようと思うと大きく塗装と染色という方法があります。
塗装は下地材に対して何かしらの塗膜を作って仕上げているわけですが、それに対して木材そのものに含浸させて色をつけるのが染色です。Tシャツなどの印刷と染めの関係みたいな感じですね。(例外として焼杉などのようにバーナーで焼いて仕上げたりもあります。)
鉄にしても鉱物である塊の状態から精製されて鉄になるわけで、最終的にメッキになるのか塗装になるのかはあれど、最初の段階では黒皮鉄板やコールテン鋼のように流通段階での保護を目的とした仮仕上げがされている事が多いです。
(余談ですが、僕はこの仮仕上げ段階の素材が大好きです。溶接痕の残った鋼材をわざと使ったりとかですね。)
触れた素材の製造工程や物性を調べる事で、より深く理解できるようになります。
目を閉じて手のひらの感覚に委ねてみる
これは僕がよくお店とかでやっている方法なのですが、手のひらを広げてベタッと触って目を閉じます。イメージとしては素材と対話する感じ。
そして、その物の裏側や温度感や触感だけを掬いとります。手のひらでスキャンして脳内に読み取るような想像をしましょう。
ちょっとセンシティブというか、宗教じみていますが、人間はまだ科学的に証明されていない感覚があるんじゃないかと僕は思うんです。
例えば床材。木目柄をプリントした塩ビフィルムの床シートと、ベニヤの上に1mmくらいの薄い板を貼ったなんちゃってフローリングと、20mmくらいの厚みのある本物の無垢材のフローリング。この違いって、実は僕らは無意識下で靴の裏から感じているんじゃないかと。
ここら辺は専門的なのでいずれまた話をまとめますが、僕らデザイナーは人間の感覚を侮らないほうがいいんじゃないかと思うんです。
今は閉じているかもしれないその感覚に呼びかけるように、そっと手のひらで触れましょう。
素材の力を言葉に置き換えてみる
最後は定着させるために触れた素材の感覚を言語化してみましょう。
ツルツル、ピカピカ、すべすべ、ふんわり、などの擬音語。
熱い、冷たい、湿っている、乾燥している、柔らかい、硬い、などの状態。
透明感、清潔感、緊張感・・・などの◯◯感という言葉を連想してみる。
日本っぽい、アメリカ西海岸っぽい、北欧っぽい、などの地域のイメージ。(木目でもヒノキや杉などの割とまっすぐな木目は和を感じやすく、オークやウォールナットなどは洋を感じやすい、など)
これらは自身の言葉の引き出しも必要なので一概には言えないのですが、フィーリングの言語化は誰かにデザインを伝える時に重要なので、素材に触れたシュチュエーションと合わせて記録しておくと良いです。
プレゼンテーションでも、なんで安物のタイル風の壁紙ではなく、わざわざ本物のタイルをここに使うのか、なぜなら...といった感じで説明しますから。
そして、そうした言葉の裏付けになるのが文化人類学や認知科学であり、いわゆる学問です。つまり、デザイナーこそ研究者であれ!って事ですね。
デザインのお仕事のクライアント=決裁者(経営者)は理論だけでも感情だけでも動いてくれないので、理論と感情の両輪で攻めるスキルが求められるのです。
特に僕のような空間デザインが仕事の場合は、この素材感への感度は必須スキルなので日々訓練をしています。
観察スケッチと似ていますが、もう少しフィーリング寄りの内容ですよね。
でも、物理学や工学などの科学(理論)と、感覚的な芸術(感情)のあわせ技はデザインの本領発揮です。ぜひ日々色々なものにペタペタ触って、触覚のセンスを鍛えてみましょう。
※触るのが犯罪になる場合や、危険な物もあります。感電の恐れがあるもの、怪我の恐れがあるもの、また壊れやすいものや他人の物などに触れる時は気をつけましょう。
ーーーーーinstaguramで2回に1回をマテリアル投稿にしています-----
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