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【みんなで選ぶ一人小説ダンス劇】毎日連載「〇〇な男」第35話

ダンス劇作家「熊谷拓明」が、この度の緊急事態宣言が解除されるまで     ダンス劇小説を毎日連載!
もっともいいねを集めた作品を、収束後どこかの会場で
熊谷が60分の1人小説ダンス劇として上演致します。

第35話「ささいな男」作.熊谷拓明

「明日はじゃ雨は降らないってことね?」

「それは僕に言われても、さっきテレビで言ってたからね。くらいしか言えないな…」

「いや、そーじゃなくて、一人でも多くの人が明日は雨降らないって、言う事が大切なんだよ。」

「そうなんだ…その一人になれと?」

「その一人になれって言ってるわけじゃないよ。
明日は降らないって事だと思う?君は。って事。」

「さっきテレビで言ってたから、降らないんじゃないかと思うよ。」

「どこで情報を手に入れたかどうかはどうでもいいよ。
じゃ君は雨じゃないって事ことだな。」

「言わせたがるよねー。ただ、全く専門的な事はわからないからさ。テレビで聞いたからっていうのは付け加えさせてよ。」

「大丈夫だよ。なんでそんなにビクビクしてんのさ。明日雨が振らないっていう意見を多く聞きたいだけで。
降ったからって君を責めたりしないでしょ。」

「責められるとは思ってないけど。そんな決断の背中を押すのはこわいな…」

「違うよ。この決断はもう揺るがないよ。明日決行だ。」

「だったら、晴れでも、雨でもいいだろ?」

「そうだよ。雨でも、雪でも、槍が降ったって決行だ。」

「だったら大丈夫だよ。僕の言葉はいらないだろ。」

「なんで急にそんな冷たい言い方になるんだよ。」

「冷たかぁないよ。だって槍だぜ。槍が降ってもって言うんだから。そらぁもう頑張ってくれ!としか言えないよ。」

「頑張ってくれ!はいらないの。雨が振らないって言ってくれって。」

「だからわからないって!わかるのは、槍は振らないって事だ。」

「本当か?」

「槍が降ります。ってテレビで聞いたことあるか?」

「なんでなんでもテレビなんだよ…?君は君がないの?」

「天気なんてさ。自分を持つもんじゃないだろ。
専門家が天気予報って言ってんだよ。
予報。だよ。専門家でも予報しか出来ないのに。
なんで、ただの着ぐるみ屋がはっきりと天気の予想をできるよ。」

「だって、ある意味天気のことは俺より気になるだろ?」

「いや、うちは納品する方だからさ。雨が降ろうと、槍が降ろうと、着ぐるみは作るし、納品するよ。」

「え?着ぐるみを着る人じゃなかったの?」

「何年一緒にいるんだよ?一回か俺より着てたか?」

「別に仕事中に会わないからそんなの知らないよ。」

「君はほんとに僕には興味がないな。」

「だって、こうして週に1、2回酒飲むだけなんだから、お互い仕事に興味なんかないだろ?」

「俺の中での、週に1、2回酒飲むのは結構だぞ。」

「7日のうちの一日や2日だぞ。あと5日も会ってない日があんだから、お互い自由だろ。」

「そらそーだけど…なんでよりによって今日飲んじゃってんのかな…」

「水曜日だもの仕方ないだろ。水曜日は我々が飲む日だ。
たいてい。」

「とにかく、明日は槍は降らないよ。それでいいか?」

「雨が振らないかって聞いてるんだ。」

「そっちこそ、自分を持てよ。降らないと思うならそれでいいじゃない。」

「わかった。降らないよ。」

「よし。それでいい。」

「よし。乾杯。」

紺色のスニーカーは、右も左もつま先から足の甲まで、家を出たときより濃い色になり、歩く度につま先から左右交互に水しぶきを吹き出している。

なぜか、ジーパンは右も太もものほうが良く濡れていて、デニムと肌が心地よく一体化してして、足が上手く上がらない。

おそらくリュックの防水もそろそろ持ちこたえられないだろう。なんとか財布の中の数枚の千円札は守っていて欲しい。
そんな事を願うのが馬鹿らしくなるほどに、つむじから右耳の裏まで、つむじから左も耳の中まで、顎から鎖骨の間まで、体のあちらこちらに勢いのある滝が出来ているのだ。

数年はもう滝行はいらないだろう。と言っても一度も行ったことが無い。
きっとこの40年で沢山、沢山、汚らわしいものを貯め込んだであろうこの身体を不思議と一度も嫌になったことはない。わざわざ、綺麗な人間になってこの先何があろうか?

昨日結局槍は降らないとしか言わなかったあいつも、いつも濃いウーロンハイを洗っているのかわからないようなグラスで、我々に出してくれる店主も。
月に一度はその店で出くわす、あの絵かきだって、踊るおんなだって、毎回知らない女と一緒にやってくる広告代理店のあいつだって、酒も飲まずに閉店まですごすマッチョな彼も、歌うたいだといいはる男も、みんなみんな、洗い流す事の出来ない自分の垢であり、皮脂であるのだから。
財布の中の千円札をボロボロにしようとも、白い靴下の下の足の指が5本透けようとも、背中が直接リュックの背当てネットを感じようとも、この雨がそれらを浄める事はないだろうし、奪うこともできないだろう。

ただ、ただ、四十の男がグショグショであるだけの、
そんなただの木曜日の夕方である。

おわり。

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最後までお付き合い頂きありがとうございます。
もし、この話がダンス劇になったら、どんな動きでどんな声なんだろう。。。
僕も今はわかりません、皆さまが選ぶダンス劇。
一緒にワクワクを感じて頂けたら幸いです。

期間中、サポートボックスよりサポート頂けたみなさまのお気持ちは、選ばれた作品をダンス劇として上演する準備資金として使わせて頂きます。

必ず劇場でお会いしましょう!

踊る「熊谷拓明」カンパニー
熊谷拓明

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■新作ダンス劇
「舐める、床。」
2020年12月10日〜13日@あうるすぽっと
詳細後日発表

■オドクマストア
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