5.管理職もメンバーも組織もピンキリ

「2年で成功しなかったら辞めますって社長にコミットしたことがあるんです」から始めたM部のマネージャー、リーダーとのミーティング。部長のHさんに話した時と同じように、景気が不透明なこの時期だから会社の組織づくりが必要であると感じ社長とミーティングをしたこと、組織づくりに私がどうアプローチしようと考えているのか、Hさんとどんな話をしたのかを熱く語った。相手の本音を引き出すにはこちらの本音を開示するのは当たり前。自分の経験も交えながら本音を素直にぶつけてみた。「で、今のチームや会社・組織についてどう感じておられるのかここだけの話、ぶっちゃけでお聞きしたいんです」とお願いした。

「僕がロールモデルであるべきだと思ってて背中を見せるように心がけてるんだよね。僕はあまりこの手のことを語るタイプではないんだけど、メンバーにもっと話していかないといけないのかも知れないよね」「マーケット・お客様の実績もマインドシェアもNo.1でありたい」「自分が過去本当に数字が上がらず辛かった時、お客様の言葉で救われたことがあって、それからこのポジションまで来れたんだけど、こういうことって話したことなかったな」「上の言うことはその時々で違うからこっちは振り回されて大変」・・

本音まで開示してくれたかどうかはわからないが、感じていること・考えているところを4人ともフランクに話してくれた。それぞれが、それぞれの思いを持ちながら真摯にお客様やマーケットに向き合っていて日々努力している姿を感じた。そして私の組織づくりへの活動にも理解を示し、賛同してくれた。それは私が真剣にこの会社に向き合い自分のできることをMaxやろうとしている覚悟を感じてくれたからなのか、別部署の現場出身者で実績があるから信頼してくれたのか、きっと両方だろう。

M部は大丈夫だ。少し本質的な対話が足りないだけで、根本的で本質的なところはみんなちゃんとポジティブな軸を持っている。私がすることは自分自身やチーム内で対話をするきっかけを作ることだけで強い組織になるだろう。部長のHさん、マネージャー、リーダーの4人と話してそう確信した。

「数字をやりきった先に何があるのか、って最近よくみんなに話してると思うだけど、10月にそれぞれのチームで半日、どんな組織にしたいか、その組織の中でどんな自分で在りたいか、そもそも自分は何のために仕事をしているのか、じっくり対話する時間を取ります。これから踊る女さんにも力を貸してもらって、半日のミーティングにも参加してもらいますね。みんなで強い良い部署にしていきましょう」

M部の全体ミーティングでHさんが部署のみんなに話した。踊る女さん、一言お願いします、とHさんに促されて前に出た。そしてこう伝えた。

「みなさん、社長が仕事する上で軸にしている言葉ってご存じですか?”天下国家を語りながらも、今の飯を喰う”、目の前の成果ばっか追いかけても、目標や夢がないと疲弊してしまうし人として成長もできないって仰ってました。もちろん、夢ばかり語っていてもビジネスパーソンとしてダメなんですけど。私は、上半期、リーダーとしてコーチングの手法を活用しながらメンバーに目標を持ってもらうようにアプローチしました。残念ながらチーム賞は取れなかったけど僅差の2位を達成できましたし、みんなそれぞれ目標や夢を持つようになり、それが仕事の成績やスタンスにも表れ始めたと感じています。微力ではありますが、全力で頑張らせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。」

M部での活動は根っこを握ることができたのでスムーズにいきそうだ。次はチームのみんなとのランチ。メンバーはきっと色んな思いがあるだろう。どんな声が聞けるのか、とても楽しみだ。


一方の古巣であるH部。部長であり元上司のHaさんとの定期ミーティングで同じように話してみたところ・・

「うーん、本音言っていい?半分賛成、半分反対だな。部長として適切じゃないかも知れないけど、ここだけの話、踊る女さんだから言うね。僕はね、メンバー同士が生きるか死ぬか競争するくらいの組織でちょうどいいと思うんだよね。今この会社は(ローパフォーマンスでも)辞めさせないけど、それってどうなんだろう・・って僕は思うんだよね。成果出して、やる気のある人にお客さんを渡せばいいし、そういう人だけが残る組織がある意味健全だと思ってしまう。今そんなことできないから、正直もどかしい。だから、踊る女さんのすることって、別にそこまでやらなくても良いことだって思っちゃうだよね。できない人に手を差し伸べるのって、時間のムダだよ。重要な部署に異動したんだから、もっと違うことに時間使ったらいいのに」

さすが超シビアな元上司。ここまで厳しい考え方をしていたとは驚きだった。1年目ダメダメだった私は毎日1時間はこのHaさんに詰められていて、周りのみんなから辞めるんじゃないかって思われていた。ストレスが酷すぎて蕁麻疹も出たし、体調もずっと良くなかった。それでも諦めず食らいついてたから根気強く指導してくれてたんだな・・と、「辛抱強く育てていただいてありがとうございます。」と思わず声に出た。

「いやまたそんなことを言う(笑)ごめんね、せっかく言ってくれたのに。一般的には良いことだと思うんだけど、僕はそこまでしてくれなくてもいいって思っちゃうから、やる気のある子にだけ仕事で関わる中で色々伝えてあげて」

こう考える人もいるんだ、と驚いた。正直冷たいと思った。でもHaさんが言う言葉の意味が理解できるのに時間はかからなかった。社内でも下から数えた方が早い、もしかしたら最下位なC部の内情に触れた私は、Haさんの言葉が嫌というほど理解できたのだった。

組織に対する考え方、人に対する考え方、ほんと十人十色だ。どれが正しくて間違ってるなんて、誰にもわからないかも知れないし、誰にも評価できるものでもないかも知れない。結果が出てるから正しい訳でもないと思う。色んな意見や価値観を聞きすぎてアタマが混乱した私は、同じ部署の先輩Kさんに相談した。

「誰かの意見に振り回されたらダメだよ。他人に自分の評価をさせてもダメ。自分の評価は踊る女さん自身が決めること。だから、やりたい仕事をすればいいんだよ」

Kさんは海外や海外ビジネスが長い方で、とてもユニークな価値観を持っている人だ。コミュニケーション能力抜群で、自分のために仕事を決してしない人。こんなKさんは出会う人みんなを虜にする。私も、Kさんと一緒に働けるだけで異動した甲斐があるとすら思う程、魅力に溢れた人だ。壁にぶちあたりまくりな私は、いつもKさんに助けられている。


「他人に自分の評価をさせるな、自分の評価は自分がするものだ」

Kさんのこの言葉が支えになる出来事がこの後立て続けに起こるのだった。


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