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そういう世界。

アルバイトの出勤のため、朝早く家を出る。

今日はとてもスムーズに起きることができた。

6時にアラームをセットして、アラームの鳴る30秒前に自然と目を覚まし、アラームが鳴るのを待ち構え、鳴った瞬間にアラームを消す。

少し優越感に浸りながら、シャワーを浴び、いつもなら取るはずのない朝食を取り、歯を磨き、着ていく服をいっちょ前に悩み、それでも時間に余裕をもってバイト先に向かう。

電車もこういうときは遅延しない。時間通りに来る。誰もカバンを挟まない。車内で体調が急変する人も絶対に現れない。

そういうものだ。世界はそのように出来ている。ほら、次の信号もやっぱり青だ。

バイト先につき、従業員が使うエレベーターのところへ。

すると僕より先に来て汗だくでエレベーターを待っている人がいた。

この人の今日は何をやっても駄目な日だ。

その人の手にはコンビニの袋に入った野菜生活と総菜パン。コンビニの袋をカバンに入れようとして、カバンの中のものが邪魔で絶妙に入らなくてイライラしている。イヤホンも取って鞄に仕舞おうとしているが、線が絡まってなかなかほどけない。エレベーターを待つ部屋は、冷房が効いておらずめちゃめちゃ暑い。男は顔面中から噴水のように汗が噴き出している。エレベーターの階数を見たら7階が光っており、矢印は上方向が光っている。

この人ギリギリエレベーターに乗れなかったパターンの人だ。顔を見るとかなり焦っている。つま先を床に叩き鳴らしている。寝坊したのか。電車が遅延したのか。おそらく寝坊して、電車が遅延したのだ。寝坊したら絶対に遅延が起きるのだ。世界はそのように出来ている。

エレベーターが来た。男からしたらエレベーターの到着にかなりの時間がかかったであろう。しかし男はまだイヤホンの絡まりをほどけていなかった。絡まった塊のまま、かばんに放り込む。そして男がいちもくさんに乗り込み、9階のボタンを押す。僕も9階なので、そのままエレベーターが閉じるのを待つ。男が「閉」を連打している。急いでいる。

6階のところでエレベーターがなぜか開いた。開いた先には誰も待っていない。男は急いでいたので不幸にも階数をチェックしなかった。勘違いして、エレベーターから出て目の前の扉を開ける。そこにはいつもと違う6階のフロアの景色。そこで男はここが9階ではないことに気付く。そしてこちらを振り返る。僕はもちろんこの男が勘違いして6階で降りたことに気付いている。だから「閉」ボタンを押していない。しかし「開」のボタンも押していない。僕は何もしなかった。男が急いでエレベーターに戻ろうとする。間に合うか。間に合わないか。

エレベーターはゆっくりと閉まりそのまま9階まで上がる。エレベーターの扉が開くと僕は降りた。エレベーターがまた下に向かい6階で止まる。そしてそのまま1階まで下りていったのを見届けて、僕はバイトの準備を始めるのだった。

彼は本当についていない。彼に起きたこの悲劇は、僕がいなくても起きた悲劇だ。しかし彼が本当についていないのは、僕がそのエレベーターに乗っていたことだ。

彼はきっと、この後の数時間は怒りの感情に支配されるであろう。「あいつが「開」を押していれば、今頃俺はギリギリ出勤時間に間に合っていたのに!」と。僕が乗っていなければ6階で終わった負の感情。きっと一階へ一度おりることになったことも僕のせいにしてるに違いない。

彼に今日少しでも運があれば、僕の出勤のどこかで遅延が発生していたのであろう。どこかの信号で必ず一度は赤になっていたであろう。僕のその日の運の良さはさほど大したものでは無かったのかもしれない。しかし、彼によって僕の運は引き上げられた。そしてその運も終わろうとしている。なぜなら、この文章は二回目だからだ。一回書いた文章が消えてしまったのだ。これにより僕は朝から時間に追われている。きっとこの後電車は遅延するだろう。そして、そのあと無限大ドームへ向かうエレベーターもなかなか来ないであろう。そして劇場がある7階に向かう途中、なぜか6階で扉が開き、僕は勘違いしてそこでエレベーターを降りるのだ。そして漫才道場の入り時間に遅れ、相方に迷惑をかける。でも僕は悪くない。世界はそのようにして出来ているから。遅れたらすんません。急ぎます!!!


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田畑藤本というコンビでお笑いをやっている田畑の方です。普段は相方の『東大』という肩書きが光過ぎていて全く輝けておりません。学歴社会の構図を日本一食らってる男としても有名です。ここに来たあなた。よく僕の方を見つけたね。
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