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おださぶエッセイ 哀しき女「ショウコ」

俺が小学生低学年くらいの頃だっただろうか。

集落に「ショウコ」と呼ばれてた名物女がいた。子供は残酷である。もちろん大人の事情や背景などもまるでわからない。

ショウコを俺は「怪物」だと思っていた。人間として見てはいなかったと思う。周囲の友達もそんな感覚でショウコを遠巻きに眺めていた。

ショウコ。年齢は不詳。背は低く150cmもなかったと思う。ただ小学生である俺から見れば大きな相手なわけで近寄るのがとても怖かった。

怖い。得体の知れない女であった。

ショウコがなぜ怪物としてみんなに恐れられてたかと言うと、まずその身なりである。いつも同じ服を着ていた。真っ赤な上下のジャージ。そして髪は伸び放題で腐臭を放ってる。そして棒のような物を持ちながら集落を徘徊していた。

ぶつぶつと独り言を云いながら彼女は何かに怒っているようだった。しかし何に怒ってるのかはわからない。

彼女を遠巻きに見るのが友達の間で刺激的な娯楽であり、そして冒険だった。いかにしてショウコに少しでも近づくことができるか?など友達と競い合っていた。近づくとショウコの中で怒りの感情でも湧くのかこちらに体を向け何か言葉を発してそしてまた徘徊を続けていた。それが彼女の毎日だった。

攻撃されるのではないか?俺たちも、そしてもしかするとショウコ自身もそう思ったのかも知れない。狂気に包まれたいた彼女の中でまだそんな防衛本能は存在していたのかもしれない。

原因は不明だが彼女は気が狂った女性だった。

しかしそんな病人であれば自治体が保護をするなり、なんらかの救済の手が差し伸べられるはずだが、それらしきことは何もなかったようだ。

大人たちは見て見ぬふりをしていた。むしろ迷惑がっていたようだ。もしかすると子供よりも残酷な感情を大人たち持ち合わせていたのかも知れない。

朽ち果てていく人間に対して大人たちはとことん無関心であった。

いつもショウコが着ていたジャージの下半身はドス黒く変色していた。小便や大便などの排泄物なんだろうと子供心に思ってたが、今になって考えてみると長い間、蓄積された経血だったと思う。

ショウコは経血を垂れ流し何かに怒りそして毎日歩き続けていたのである。

ショウコは浮浪者なのではないか?と思う人もいるかも知れない。そうではなくてちゃんとした一軒家に住んでいて彼女には家族がいた。

俺の3つほど下の少年。ショウコの弟なのか、家族内での関係性は不明だがショウコの同居人であった。あとはおばあちゃんとそして20代くらいの女性が「ショウコの家」にはいた。

その20代の女性は田舎の集落には似つかないような華やかな美人だった。高そうな毛皮のコートを着て高そうなセダン車に乗っていた。ショウコとこの華やかな美女。それが一緒に住んでいる家族である。

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