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【読書感想文】地獄の楽しみ方:京極夏彦著 すべての理屈っぽいマンにささげたい

めちゃくちゃ面白かった、、最高に面白かった。

常日頃から簡単なことを難しく考えすぎて、「つまるところ私は今この瞬間、自分の頭の中にしか存在していないのでは?」みたいな答えに辿り着いたのち、「でもとりあえずお腹がすいたからパン食べよう」みたいな思考を繰り返している人は、とりあえずもれなく全員読んだ方がいい。

面白いというか凄かった。

めちゃくちゃ薄いんですよ、小指の爪の横幅くらい(わたしの)

しかし読みごたえがすごい。
圧倒的な知識量と、それを表現する語彙力。あと確信。

どれだけ多くのことに対して深く思考し続ければこんな話ができるんだろうと思う内容。一つ一つに深く潜り込んで思考を続けられて来たんだろうなという印象でした。すべての言葉に自信というか信念というか、確信を感じた。カッコいい。

にわとりたまごですけども、そりゃあこの人が描く小説はあれほど分厚くもなろう。そしてあれほど理屈っぽいものにもなろう。

いくつか京極先生の本を読んでから読んだらなおさら面白いとおもう。

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この本は、京極先生が10代限定の講演会を開いた時の登壇内容をまとめたもので、ほとんど京極先生が喋られた言葉そのままに綴られています。

言葉は非常に欠けたもので、不完全。それが大前提。文字だけで速やかで慈愛に満ちたコミュニケーションなどできるはずがそもそもない。

それが不特定多数の大勢に発信されればなおさら。受信側は自分の好きなように解釈する。

言葉は、通じない。

それを承知した上で使わなければならない。

第一部で言葉に関するそんな話が具体的な例を交えながら進んでいきます。

そして第二部ではこの世という地獄を楽しむためのコツが語られます。
京極先生節炸裂といった感じです。

なんか不思議で、すごく文学的な表現なようでありながらもロジカルで、反論の余地がないんですけども、「うーんそんなことないと思うけどなあ」って思う箇所もあったりして、でもその時点で私はもうこの本をめちゃくちゃ楽しんでるし、最高の読書体験をさせていただいていて、

京極先生の術中にはまっている感じがする。

誰がどう受け取ろうが、この人の中にはこの人の正解があるんだろうと思った。

「全ての読書は誤読である」というチャプターがありました。

読んだ人が受け取るものが全てて、小説は読者のもの。傑作になるかどうかは読者による。

うなる。うなった。

なので、きっと京極先生には「こう受け取ってほしい」というものはないんだと思いました。
京極先生が思う何か、確信を持つ何か、こうだと思う正解、それを言葉にして送り出して、あとは受け取る人がどう受け取るのか。

京極先生というかその作品は、「確信」がとても強いように思う。というか確信が強い人が多く出てくる気がする。

なので、なんというか京極先生の本を読むと、すごい不思議な話でも救いがない話でも、ああこんな考え方ができれば、世の中の見え方が変わるんだろうなってよく思う。

世の中の見え方は、全部自分の思考によるもの。
だから、自分が変われば絶対に世界が変わる。
京極先生の本を読むと、自分が何か確信を持った人物になれる気がする。

それがこの本でも語られている、「本の数だけ人生がある」ということなのかもしれない。

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すごい失礼を承知な発言なのですが、京極先生の本を初めて読んだときに(死ねばいいのに、がはじめてでした)、

なんて理屈っぽい!!!!!!

と感動したものです。

私は昔から簡単なことを難しく考えるのが好きで、
この世の正解じゃなくてもいいんですが、なぜこうなってるのか?なぜ人はこうなのか?っていうことに対して自分が納得できる答えを常に探して思考を繰り返していて、それを誰に発言することもなく自分で処理して終わるんですけども、
そして古くからの友人には理屈っぽいよね、と笑われたこともあるんですけども、

京極先生の本に出会ったときに、「同じくらい(どころではない)面倒そうな思考を持ってる方がいらっしゃる!!!」と感動しました。

ただ瓶の蓋を開けるだけで10ページくらい主人公と本屋の主人が話している。
こんな小説みたことあります?

私は自分の答えをずっと探しているけどもそれに確信がないんですが、京極先生は確信を持っていらっしゃるようにおもうのです。

なのでなんか、その口から語られる言葉がそのまま印字されている「地獄の楽しみ方」は不思議と前向きな気持ちになれる本でした。

めんどくさい思考をお持ちのそこのあなた、ぜひ一読を!


それではまた〜〜





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