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【イベントレポ】シンポジウム・イノベ地域で起業の生態系をつくるために必要なこと

イノベ地域においての起業の生態系をつくるために必要なことを議論し、
支援情報の発信や地域のインキュベート機能の連携促進のためのシンポジウムを行い、オンラインオフライン含め約30名の方にご参加いただきました。


ー イベント動画 ー

ー イベント概要 ー

タイトル『イノベ地域で起業の生態系をつくるために必要なこと』
日時:8/27(土)14時~17時
場所:小高パイオニアヴィレッジ + オンライン配信

ー 登壇者 ー

和田 智行
株式会社小高ワーカーズベース 代表取締役。南相馬市小高区(旧小高町)出身。大学入学を機に上京しITベンチャーに就職。2005年、東京でIT企業を創業、同時に自身は小高にUターンしてリモートワークを開始。東日本大震災の原発事故で自宅が避難区域となり、会津若松市に避難。その後、小高区で活動を開始し、2014年5月に避難区域初のシェアオフィス「小高ワーカーズベース」を開設。以来、数々の事業を立ち上げる。2017年からは創業支援にも注力。

板垣 貴之
公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構にて、2020年より福島県浜通り地域等における起業・創業支援事業「Fukushima Tech Create」に取り組む。経済産業省から出向中。経済産業省時代には「福島ロボットテストフィールド」の整備などを担当。

北原 宏和
アーキタイプベンチャーズ パートナー。総務省、ボストンコンサルティンググループを経て、B2B Techにフォーカスした独立系ベンチャーキャピタルに参画。サステナビリティ・テックをテーマに、スタートアップへの投資活動に関わっている。Circular Economy Hub 寄稿パートナー。


ファシリテーター:但野 謙介
一般社団法人パイオニズム 理事
被災した家具製造会社の再生や海外旅行社向けプラットフォームを運営するベンチャー企業を共同創業。現在はパイオニズム理事として原子力被災地の復興に取り組む傍ら、MAKOTOキャピタル のキャピタリストとして進出するベンチャー企業に投資や伴走支援に取り組む。

ー 福島イノベーション・コースト構想とは

福島イノベーション・コースト構想(イノベ構想)とは、東日本大震災、特に東京電力福島第一原子力発電所の事故によって失われた福島国際産業都市区域(いわき市、相馬市、田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、新地町、飯舘村の15市町村(イノベ区域))の産業・雇用を回復するため、イノベ区域において新たな産業基盤の構築を目指す国家プロジェクトです。
 「あらゆるチャレンジが可能な地域」、「地域の企業が主役」、「構想を支える人材育成」を取組の3つの柱とし、廃炉、ロボット・ドローン、エネルギー・環境・リサイクル、農林水産業、医療関連、航空宇宙の6つの分野を重点分野として取組を進めています。

https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/11015e/innov-zeisei.html#:~:text=%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%88%E6%A7%8B%E6%83%B3%EF%BC%88%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%99,%E9%9B%87%E7%94%A8%E3%82%92%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%80%81

ー イベントレポート ー

ここ数年イノベ地域で取り組んできて気づいたこと

<但野>
和田さんは地域で走りながら、なんかどういうふうに景色が変わってきましたか?

<和田> 
最初はこの地域で事業を起こすっていうこと自体が、多くの人にとっては非現実的なことだったというのは振り返って思います。新規事業の立ち上げに対する補助金は皆無だったので、補助金とかほとんど使わずにいろんな事業をやってきました。今はなりわいを増やさなくちゃいけないという認識がどこの自治体も出てきたので、それに対していろんな補助金や行政のバックアップ、あるいは起業家誘致という動きが出てきたり。 そんなふうにも変わりつつあるのかなっていうのは感じています。

<但野>
この地域なんとかしようと思った時に、大きいものとか、強いものとか、 お金がたくさん動くものとかを持ってきたくなるんですよね。そういったものを地域でやりたいって思うのが、人の率直な発想の感じがするんですけど、和田さんは全く対局のアプローチをずっと取り続けていて。そのあたり和田さんはどういうことを感じながらこの地域で活動されていますか?

<和田>
僕は元々スタートアップやベンチャーの畑で育ってきたので、 事業をやるからにはグロースさせてみたいと思うのは当然の思考回路としてあったんですよね。そもそも、なりわいを持つというが当然な風土ができているっていう、そういう土壌がないと、そこにスタートアップがきてグロースさせる事業をやっていこうなんてそもそも生まれないんじゃないかなとすごく感じているので。じゃあ誰がやるのかってなった時に、僕の勝手な使命感としてこの地域の住民で当時避難してましたけども、いずれで帰還しようという風に決めていて、かつ起業経験がある自分がやらないと、いろんな事業が生まれていくような風土って、いつまで経ってもできないんじゃないかな。こんな風に勝手に思ってそれまでの ベンチャーっていう畑からなりわい作りっていうところに今注力して、ここまでやってきたっていうところですね。

イノベ地域が創業の地としてメリット・デメリット

<但野>
僕自身2015年にエンジェル投資を頂いて鎌倉で創業しました。まさに鎌倉が起業の中心として、人もお金もどんどん集まっていく渦中にたまたま身を置くことができた。そうすると鎌倉がめちゃくちゃ魅力的なんですよね。一方で、南相馬に帰ってきた時に、やっぱりすごく辛いわけですよ。
みんなが喜んできてくれる場所にはまだまだ程遠いっていうのがずっとあって、それがどんどん差が詰まってきてる感じを僕自身受けていて、やっと和田さんの目線に近づいてきたっていうか。なんで和田さんはこんなことばっかりやってるんだろうって謎でしかなかったんですけど、少しずつ分かってきて。
北原さんも総務省で地域をどうしていくのかみたいたところからキャリアをスタートされて、今はスタートアップに投資をする立場でリターンが全てみたいな中で戦っている世界で活躍されてると思うんですけど、この地域をどんな風にご覧になられてますか?

<北原>
そうですね。土壌って結構重要かなって思っていて。 やっぱりそのスタートアップがその成功する上で、当然面白い課題であるとか、人と違う切り口を持っているであるとか、 それに対するソリューションがあることがすごい大事なんですけど、それを受け止めてくれる土壌って本当に重要で、私も元も総務省に行ったっていう経験もあるので、なんでこういう日米の違いとか出てくるのかって構造的な要因ってなんなのかなって、どうしても気になってしまうんですよね。 やっぱり見てると、シリコンバレーって当然いい起業家もいるし投資家もいるっていうのもあるんですけど、そのサービスを使ってみようと思うコミュニティーがすぐそばにいて、 それがとても最先端の人たちでかなりのボリュームがあるってのは非常に重要で。
だから、そこでテストされたものっていうのは一定の信頼を受けるものだというところで、一気に世界でグローバルで 大きくあの羽ばたいていけるっていうのがあるといった時に、やっぱりこの地域の中でそのサービスを受け止めてくれる土壌があるかって非常に重要で、それがない中でいい課題の着眼点とソリューションを持っているスタートアップが仮にここに来たとしても、それ多分花開かずに終わっていって、5年後か、10年後に同じことに着目した別の地域で出てきたスタートアップがは羽ばたいていくっていうことが起こると思うので、やっぱりスタートアップが来れる土壌っていうのを作るっていうところから始めたのは非常に良い着眼点だったんじゃないかなっていう風に思っていますし、それが言葉だけじゃなくて実際実行されてるんだなっていうのを日々感じているところです。

<但野>
投資家の目線で国内を見渡した時に、そういうことがきちんとできてるとかもっと先行してチャレンジしている地域って、どんなところがありますか?

<北原>
そうですね。東京は元々スタートアップが多いですね。福岡市も市町村が旗を振って頑張られてるなっていうところはありますよね。最近でいうと京都市や神戸市がしっかり頑張っているいうのがあって神戸市だとスタートアップの支援とか普通にやってますし、それを三宮地域の町づくりと絡めていたり、地域ファンドを立ち上げて、確か15億円か20億円ぐらいだったと思うんですけど、その地域に投資することがあったりして。 ちゃんと必要なものをしっかり汲み上げていって、それをしっかり自治体がバックアップしてるっていうところがあるのかなと思っています。ただ、京都とか神戸とか大都市の地域であったりするんですけど、やっぱりその中堅とか中小みたいな形でそういったことができてるとこはほぼないかなっていう風に思っています。そういった中では今この時点でこういった土壌をしっかりと作っている小高区南相馬っていうのはアドバンテージがあるというのが個人的に思っているところです。

起業の生態系を構築していくための課題

<但野>
まさにそのビッグネームが並んでいるんですよね。神戸とか福岡とか。僕らは規模が小さいとか、地域としては人口が少ない中で戦っていると思うんですが、その中でどんなことが今課題なんですかね?

<板垣> 
そうですね。一自治体というよりは広域で復興支援をやっていきたいと思います。その中で自治体の温度差、というのも避難指示解除から経つ年数だとかあると思うし、もともとの人口差があったりして地域によって温度差がある中で広域でやってるからこそできるメリットを生かすことをもっとできればなと思っている中で、ちょっとそこがまだなかなか難しいかなというのはあります。

<但野> 
和田さんは会社としては小高っていう名前を掲げてやってるわけですけど、地域的な広がりとか小高に限らずどんな課題があってとかその地域の壁を越えるかみたいなところで、なんか意識してるとかと取り組んでいる点はどんなことですか?

<和田>
今のところ僕ら小高や南相場をあのフィールドにやらせていただいてますけど、 やっぱりその一番はその地域でみんなが困っている、あるいは住んでる自分自身が必要だと思っている、そういったところに対して明確なソリューションを提供していく。シンプルにご飯食べるところがないから、食堂を作るとかそういうような形で、僕ら100の事業を作るミッション掲げてますけど、それを旗降って「こういうことやる会社です。だから皆さんこれしてください」ではなくて、シンプルに 目の前の課題に対して、こういうソリューションで地域の事業者としてやっていく姿勢を示すっていうところはずっと意識してやってるところです。ミッションとか僕らもいろいろあるんですけど、そのコミュニケーションはより興味を持ってくれた人に対しては色々深くお話はできるんですけど、 目の前のサービスやそういったものを通じて、地域の方にご理解いただけるようなアプローチで事業を作っていくっていうことは意識してやってました。

<但野> 
少し補足的な話をすると、僕らここで創業支援してきた中でここに起業してくれた人、それから起業にいらなかった人、あとここに来ずに別な地域でチャレンジをした人たちにかなりの数インタビューしてた中でひとつ見えてきたことがあって、僕たちがきちんと課題として 解像度高く理解してるものに対しては、必ずと言っていいほどに起業家が手を上げて移住してくれて、ふわっとしてるものに対しててなかなかうまくマッチングしていないということが振り返ってみてわかった。その解像度を僕ら自身が上げていくことは確かに和田さんのいう通り重要なのかもしれないですね。
北原さんはこういう小さな地域を調査するときにどんなことを考えられていますか?

<北原> 
やっぱりおっしゃる通りで、起業家がどこの地域でも選べるような状況になってきてると思うんで、そんな中で大都市とどうやって戦っていくんだっていうときに、当然量では勝てないとは思うんですけどどうやって質で上回っていくのかというときに、やっぱり行政のスピードをどう作るか地域のスピードって大事かなと思っていて、やっぱりスタートアップって色んな課題仮説であったり、ソリューション仮説とかをどんどんぶつけていくことで、その大企業では得られないスピードで 進んでいったら勝ちうる要素があるってところがあるので、それができる土壌なのかどうかってのは非常に重要ではあるので、そうした時に役所であるとか県庁であるとかの人たちがどれだけ素早く対応してくれるかっていうのは、なんか地味なように見えるって非常に重要なところかなっていうところと、先程申し上げたそのコミュニティーがどれだけ受け入れてくれるかっていうところで 、今日ここにいらっしゃっている方々とか聞いて下さっている方々もそもそも感度が高い方だと思うんですけど、そうでないこのエリアに方々も含めて、どれだけこのスタートアップを受け入れてそのスタートアップが考えた、新しいソリューションみたいなものを使ってみようと思ってくれるかっていうところっていうのは非常に重要なんじゃないかなと思っています。
あと、先ほどの課題の解像度というところで言うと、やっぱり最近東京でも昔はスタートアップが単純に立地することが多かったんですけど、やっぱりその最近、オープンイノベーションの文脈で大企業が「自分たちそんなこと困っています。どこかソリューション持ってるスタートアップいませんか」っていうことを動き出してきてるんで、そういったその受け手側の方がアクティブになりだしているところもあったりするんで、 逆にそういう人たちが東京とかにいるとすると、じゃあこの地域でどうやって戦っていくのかといったときに課題っていうのを解像度を相当上げて出して飛び出していかないと地域の生き残りはないかなって気はしていますね。

<但野>
まさにこのへんの課題って一番よく見えているのは板垣さんで市町村とスタートアップの間のところをお繋げされてると思うんですけど、どんな風にご覧になられていますか?

<板垣>
この地域って、ほかの地域でこれから出てくる課題が先行してぎゅっと凝縮した形で抱えている地域だと思うんですよね。この地域での課題解決ができれば、多分日本全国の課題解決できるようなソリューションが生まれてくると思っています。われわれで今支援させていただいている中にも、この地域でチャレンジしてみませんかっていう形でお声がけして、こちらでもチャレンジしてもらってるんですけどそういうような形で外から人引っ張ってきてその地域で課題を解決をしてもらえるよう地域にしたいなと思っています。

<但野>
和田さんは2016年に帰ってきて、住民と公共の間みたいなところでやってきて、課題の解像度をあげるとか、スタートアップが作ったものを地域で受け入れながら一緒に成長していくみたいなことは、どんな風に考えていますか?

<和田>
そうですね、特に最近思うのは、どの地域の移住とか起業とかやり始めている中で、民間でしかできないこと、行政でしかできないことがあるので、そこをコミュニケーションして、意識して役割分担をしていくっていうことは、非常に重要なのかなと思ってます。もう少しコミュニケーションを密にして、役割分担がもっとできるとスピードが上がっていくし効率が良くなるかなと思ってます。

<但野>
そういったことを受けつつ、どういうふうにこの先のステップを僕ら踏んでいくかというのは重要だなと思っていて。なかなかその立場上でなかなか難しいかもしれないんですけど、板垣さんなんかこうあったらいいなとか、そういったところをぜひ伺いたいです。

<板垣>
役割分担は重要だと思ってるんですよね。地域の自治体でやるべきことを民間でやるべきことで、自治体ではなかなかできないようなところにイノベ機構のように広域なところでできることがあると思っています。あとは、もう1個来年ぐらいからトライしようと思っているのが、この地域で活躍する新しい人たちを探しに行く旅に出ようかなと思っています。いろんな大学とかを回って、話をしに行こうかなと思ってます。やっぱり税金だとかそういう行政の支援策は、ホームページで公開されてから、新たに考えるって結構難しい なと思っていて。であれば、ちょっと早めの段階からアプローチをして、頭の片隅に入れといてもらってロングスパンで使えるような支援策をセットで提案していきたいと思います。

<但野>
スタートアップにとって技術はあるけどまだ売れる状況にはまだ至っていないというフェーズのときにどんなものが必要で何をやらなきゃいけないかということを北原さんにお伺いしたいです。

<北原>
やっぱり、スタートアップってやっぱり成長していく上で「ファウンダーマーケットフィット」→「プロブレムソリューションフィット」→「プロダクトマーケットフィット」のフェーズがあって。 その精度を徐々にひとつずつクリアしていかなきゃいけないと思うんですね。 起業家の方々を探していくっていうところってのは重要かなと思っていて。最近VC界隈でも、どんどんアーリーステージに皆さん出てきていてですね。 起業家を発掘しようとか育てようというアクセラレータープログラムが、山のように出てきている状況なんですが、VCとかにお金を回り始めたり、そういう支援が出るようになってきていて、起業家が足りなくなっているので、事業を増やそうという取り組みは増えてきたのかなと感じます。あと、そこでアクセラレーションした後に市場にぶつけてみると、当初こう考えていたけどちょっと広げて見ると課題の捉え方とかターゲットセグメントが違う場合があったりするんで丹念にPDCAを回していく。それも大企業のスピードじゃなくて、スタートアップのスピードで回していくってことが非常に重要なんですよね。そうなったときに素早さだけではなく、いろんな項目で、深ぶりとかを構造立ててやっていかないといけないと思います。そのようなときに起業家だけじゃなくて、フェーズとタイミングを理解してアドバイスができる伴奏者がいるということが重要なんじゃないかと思います。

<但野>
どれぐらいの期間で、どれぐらいのお金を溶かしながら、スタートアップはトライしていくんですか?

<北原>
一般的には、1.5年から2年分で次のフェーズに進んでいくのを繰り返す。このセグメントに対してマーケットフィットしたが、ちょっと隣のセグメントになると、違うマーケットになってくるので、またフィットさせなきゃいけない。そういうことを繰り返して、進化していって、今度は組織をどうしていくのかになっていったりするんで、そこをどんどん増やしていく。

<但野>
いくらぐらい使うんですか?

<北原> 
フェーズにより、ちょっとバラバラだったり。一般的に最近多いソフトウェアは、そんなにお金がいらなくて、人件費とサーバー代ぐらい。だけど、最近増えてるディープテックなものになっていると、初期フェーズで結構お金を入れなきゃいけない。

唯一無二の起業地域になるために、これから取り組むべきこと

<但野> 
先ほどの北原さんの話を踏まえると、まさに僕らの地域が、何の役割を果たすのかっていうのが、 重要な部分なんですよね。投資家からみたときに地域に北原さんは何を期待されますか?

<北原>
行政と、地域コミュニティーがあって、コミュニティはそれを受け入れてくれる土壌が重要かと思っていて、もしそれが見られないのであれば、自治体から色々働きかけがあったりもあるかもしれない。あとは東京みたいにいっぱい起業家が近くにいるところだと、ちょっと繋がれば、、連絡して、教えてください。って言って、すぐ聞ける環境がある。これ、やっぱりまだこのエリアの スタートアップがすごい生み出せてるっていうと、まだないと思うんで、簡単にすぐ答えを知ってる人はいないと思っている。そうした時に、その部分を埋めるのは、公的な支援や社団法人が果たすのは、なんか1つあるかなと思っています。ただ、そうした時に、その方々のクオリティーが結構問題になるなと思っていて、やっぱり中小企業の支援は、話が全く違って。違うメカニズムで戦わないと、勝ち残れない。そこのメカニズムを理解した人は、 100やらなきゃいけないことがある中で、今やるべき3つを出せるような人で、ちゃんと起業家に納得してもらって、腹落ちして、動いてもらわないと進まないので、それができるような人が、伴走もできるのはベストです。

<但野>
和田さん自身もスタートアップの畑で過ごしてきたと言っていたんですけど、CTOとして、30億ぐらいのビジネスをを立ち上げている経験がある思うんですけど、そういう視点も踏まえながら、僕らって、この地域で何をする人たちだと良いと思いますか?

<和田>
僕らの地域は地域なりの環境や特徴がある。それはやっぱ避難区域になったこともそうかもしれないし、ある程度の予算がパブリックセクターから落ちてきてることかもしれないけども。僕も東京にいたんでわかるんですけど、環境とかコミュニティーってすごく魅力的。一方で、それはマジョリティなわけですよね。スタートアップでちょっとイノベーションを起こしたい、ちょっと尖った事業をやりたいと思った時に、もちろんその中からたくさん生まれてくるとは思う。しかし、僕らみたいな環境に身を置いたからこそ、気づくもの、得られるものも絶対あると思っていて、それをどうやって体系的に提供できるかを詰めていくべきで、そこを意識して、この地域はこういう特徴がある地域ですよと打ち出していけるといいのかなと日々思ってます。そもそも、僕らみたいな、避難地区になった地域で起業しようっていうだけで、 頭おかしいっていうか、ちょっと常識人とは違うのがあると思うんで。でも、そこに何かスタートアップやイノベーションのヒントはあると思う。 そこを僕らの地域は、丁寧に構造化して示していくことが、必要なのかなと 思ってますね。

<但野> 
例えば、この地域から生まれたhaccobaはスタートアップ企業として海外市場とかいろんなものを見せながらチャレンジしている。それは最初僕たちのビジョンにはなかった。小高パイオニアヴィレッジが2019年にできて、 2年間ぐらいの間に約70人が移住してきて、創業してる方はそのうち10人ぐらい。うまく行き始めてる人も出てきてるなかで、地域の何がうまく作用してるのかとか、どんなポテンシャルが形になってると和田さんは思いますか?

<和田>
非常に難しいことなんですが、あんまりわかってないところが正直あるんですよ。でも、ずっと意識してやってきたのは、コミュニティっていうところですね。結局、人が住んだり、一緒に仕事をしたりっていうことを考えた時に、誰とどんなことができるかが、最も大事なポイントなんじゃないかなと思う。そのため「誰に」で選ばれるっていうところが、非常に 大事なんじゃないかなと思ってやってきた。それは1つ効いてきてるのかなと思います。何か1つがやってきて、事業がたくさん生まれていて、そこに魅力的な起業家が生まれたことで、さらに起業家が 入ってくると、自転車で漕ぎ出しがうまく回り始めたのかなっていうのは、感じていますね。

<但野> 
そういう意味で和田さんの指摘は本質的で、すでにここに来ようとしている時点で、素晴らしいチャレンジャーである資質を備えてる可能性が結構あって、一定のリスクを取ってチャレンジしてきてるっていうのは、確かに1つある。
一方で板垣さんにぜひお話伺いたかったんですが、インキュベーターとして、地域全体の中でどう事業を作っていくか、まさに地域のコーディネーションや話をしてみてイノベ機構として何をするかってこともありますけど、 僕らとか、市町村含めてみんなでどんなことをしていくのがいいのかを改めて聞かせてください。

<板垣>
イノベ構想自体がですね、あらゆるチャレンジを可能な地域という風に、掲げている構想でもあるんですね。そういう意味でいうと、この地域でやろうということだけでも、一歩踏み出してる方なんだろうなと思う。そういう人たちが入ってきて、チャレンジしてる中で、僕らも支援させていただきながら、そういうところで相場効果が生まれてここの地域で成功した人が 他の地域に行った時に、あの地域ってすげえいい地域なんだよねって言って、また人が集まってくるような地域になっていけばいいと思います。われわれもそういったところをサポートさせていただけると思っています。

<但野> 
北原さんの話を聞く中で、作ってみて困っている人にどうですかって示して使ってみてもらってもしかしたら課題が解決しないかもしれないしとか、狭い人には役に立つけど同じようなことで困っている人たちみんなにとってはあんまり役に立たなくてもう少し改良するとか、その行ったり来たりをどう僕ら許容していくかの気がしていて、やっぱり公的な支援で難しいところは、作ることにお金がつきますよとか実証するのにお金がつきますよとか個別にはつくんですけど、すぐに行って戻って行って戻ってし続けるものを僕らが仕組みかしていかなきゃいけないとか、公と僕らみたいな民間がどう役割分担させるのか改めて北原さんの問題提起だと思っていて、そのあたりはどうお感じですか?

<板垣>
そうですね。関東や京都などのビックネームのところでは、なかなかできないのは、こういう地域であればこそできるのは、地域の身近さだと思う。この地域のすごさは自治体を通じて事業者が困ってると言った時に痒いところに手が届きやすいことだと思う。 
例えば、イベントの時に、今抱えている展示物をそこに持って行かないといけない。通常だと輸送費がかかるが、自治体の人が運んでたんですよね。僕はびっくりしました。解体までやって運んでるのを見て、ちっちゃなことだが、自治体の人が手を貸してあげる。その密着感は、大都市にはない強みかなと思ってます。

トークセッションのまとめ

<但野>
ここもそうですが、テストフィールドの延長線で、実証施設として登録してまして、そういう建物、施設が公共民間問わずすごい数で地域の方にワンストップで登録いただいていて。例えば介護の現場で実習したいときに登録してくれている会社がたくさんある。そういうのも含めて、距離の近い支援サポートも必要である。そこをどう発展的に価値に変えていくのかがポイントかもしれない。
改めて今日いろいろ話したんですけど、最後に少しまとめに入っていきたい。
和田さん、僕ら2014年から8年ぐらい、走り走ってきて、改めて5年ぐらい先に僕らどうしなきゃいけないかをそろそろ考えなきゃいけない時だと思っている。その辺りで和田さんの思うこういうことしとかなきゃいけないとかありますか?

<和田>
ちょっと繰り返しになるかもしれないですが、あらゆるセクターでコミュニケーションを取ってることですね。ある程度 大きなビジョンをみんなで描いて地域間でもうちょっと連携すればいいのに。そういったことが非常に非効率だと感じるので。 その中で、どういう役割を果たしていくかを、整理して、それぞれ取り組む流れを作れるといいなと思いますし、僕らもその中で1つ役割を担えるような 存在として、これからも頑張っていければなと思います。

<但野>
唯一自分たちが担う役割ってズバリなんですか?

<和田>
やっぱり民間としてずっとやってきた中で、 作ってきたネットワーク、ノウハウ、あと、今こうやっていろんな人材も起業家も集まってきています。 そのコミュニティですよね。その人を受け入れる時の受け皿といいますか、コミュニティもハードもですけど、受け皿として僕らが受けていく役割を、ちょっと抽象的なんですけども、果たしていきたいなと思います。

<但野>
同じように最後に締めに入っていきたいと思っていて、板垣さん、機構は全方位的に起業支援も関係人口拡大もしていて全部やっている状況で、さらにというのも酷な気もするんですが、5年ぐらい先に向けて、何が生命線になるか今日の話の中で少しお話いただけたら。

<板垣>今、震災からの復興という形で、他の地域に比べて少し手厚い支援が用意されている地域だと思う。ただし復興支援策もいずれは規模が縮小される時がくると思ってます。 そうなった時に、この地域が他の地域と肩を並べて競争できる地域になって行かないといけない。まあ、僕らで支援策を用意してる時代から和田さんみたいに地域で頑張ってる方が、最初の段階で僕らを利用していただきながら。地域が自走できる形に徐々になっていければと思ってますので、そのための準備をさせていただければと思います。

<但野>
ありがとうございます。北原さんは投資家として投資されているスタートアップで事業開発の責任者をしていたのが僕というのが最初のきっかけだったんですけど。来てみて気づいたこととかあると思うんですよね。少し先の未来の僕らって何にチャレンジしていくべきだと思います?
していけばいいのかとか。

<北原>
結構岐路に来てる気がして、悪い意味の岐路ではないんですが、 やっぱり、スタートアップ元年で、国がスタートアップを盛り上げようと動いている。 これは当然都道府県や市町村がおりてきて、各地域で頑張ろうという状況にある。そうした時に、スタートアップって、普通の人じゃないことをやろうとすることなんで、日本全国いろんな各市町村にスタートアップコミュニティが立ち上がることは、嘘だと思っている。全ての市町村にスタートアップエコシステムを作る話があって。数限られたそこで、いい環境を作って、集まっていく拠点を作っていかないといけない。そこに向けて、南相馬小高がどう振る舞うか、僕らもスタートアップの方々からピッチを受けた時に話聞いてやろうとしてることはいいなと思っても、スタートアップ型じゃないと思った時は、スタートアップでやめませんかみたいな話をしている。 やっぱりスタートアップとなると、1.5年とか2年で見切りをつけてしまう計画の中で調達をして走っていって、そのマイルストーンが達成できないと、廃業に追い込まれる形になる。そういった動きをみんながやったら社会が壊れちゃう。やっぱりそこって、リスクが取れる人がやっていくべき。そういったところをこの地域が目指すのか受け皿になるのか、事前準備の土壌は地方の都市に比べるとできていると思う。ですけど、それをもって勝負しに行くかどうかは非常に重要で、このエリアがスタートアップが起業するにふさわしい場所として立候補するのか。そうすると、この地域が巻き込まれていくのか、頑張ったけどなれませんでしたね。っていう話もある。それをこの地域で選択できるかどうか非常に重要。そして、目線感で、どこまで最終的に目指すのかは考えないといけない。スタートアップもやっぱり基本資金調達してから、6年から8年で、一定の上場企業を迎えることがある。2030年までが良い区切りのような気がしていて、そこまで一気に走りますか、どうですかと。その代わりにその場で泣く人、辛い人、頑張ってチャレンジしたけど、負けてしまう人が出てくると思う。そういう人のセカンドキャリアを支援しながらやっていけるかが問われてると思っていて、スタートアップ元年でなるなら今しかない。少し遅ければ、周りが追いついてくるので、この地域が持っているアドバンテージはなくなる。どうするかが問われていると思う。

<但野>
ありがとうございます。新しい資本主義の会議になると、地方とスタートアップのアジェンダをだしていただいて、社会課題を地方でスタットアップ、ベンチャー企業が育って環境を作ることは、国の成長で重要だという趣旨の発言をされているスタートアップに関しては、計画が今出てきているタイミングですが、紐解いていくと、地方とスタートアップという柱が出てきたり、社会課題とスタートアップという、まさに今思うと、ほんと僕たちがこれまでやってきたものの、延長線上にあったものが、国のスタートアップの計画の中に太い柱として盛り込まれつつある。
一方でおそらく国の方達の想像する地方は福岡や浜松だったりする。その時に、僕らとして割って入るのか、割って入った時に、違いは何で、どういうバリューを出せるのかは重要な観点だと思っています。アジェンダとしては綺麗に整理されていて、僕たちがやってきたことも極めて矛盾なく国の方針もできてきてはいて、地域スタートアップの意思が問われるのかな。今日から僕たちが挑戦していくことになる。


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