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アフターコロナの沖縄観光業〜ワーケーションを活性化させる方法〜

新型コロナウィルスは、沖縄の観光業に大きな打撃を与えています。2020年の観光客数は、1,000万人を突破した前年から63%も減少しました。年が明けた1月の失業率は全国ワーストの3.6%で、昨年からの増加率は全国平均より1割ほど高くなっています。

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Go to キャンペーンと共に、観光業復活の起爆剤として期待されているワーケーションですが、現時点で、その効果は限定的…と言うか、ほとんど効果を上げていません。日本旅行が行ったワーケーションの実態調査を見ると、ワーケーションに「興味がある」と答えた会社員は約60%ですが、「既に導入している」のはたったの0.6%でした。また、制度の今後についても「導入される確率は低い」との回答は70%近くにも及び、ずいぶんと悲観的です。経営者の回答も似たようなもので、「興味がある」のは約50%ですが、「既に導入している」のは2%にとどまっています。

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ワーケーションへの誤解 : 導入が進まない理由

上述のアンケートでは、ワーケーション制度への不安として「勤怠管理」や「オンとオフの切り替え」「評価の難しさ」などが挙げられており、これが導入が進まない理由と考えられます。

本来、発祥地である欧米において、ワーケーションの主たる目的は休暇であり、その合間に最低限のテレワークを組み合わせることで長期休暇を取りやすくする仕組みです。

そして、現在では、個人が、モバイルテクノロジーを活用して、時間、場所、会社、収入源と言う4つの制約から解放されて自由に働くライフスタイル(モバイルボヘミアン)に進化したと言えます。このあたりは、本田直之さんと四角大輔さんとの共著を読むことをおすすめします。

主たる目的は「休暇」であり「仕事」ではありませんから、そもそも「オンとオフの切り替え」は大して必要ないですし、時間や場所などの制約から解放されて自由に働くわけですから、必要なのは「勤怠管理」ではなく「自由裁量」であり、評価は「時間給」ではなく「成果報酬」の仕事を想定しています。

その上でもう一度、日本旅行ホームページにあるワーケーションの定義を読むと、本来の定義とは真逆というか、少なくとも「休暇 ≦ 仕事」であることが分ります。

リゾート地や地方等の普段の職場とは異なる場所で働きながら休暇取得等を行う仕組みです。個人が主体的に選択する、日常的な仕事に、非日常的な休暇の感覚を埋め込んだ柔軟な働き方であり、「新たな働き方」として注目されています。

リモートワークに社員監視ソフトを導入してまで「勤怠管理」を行ったり(デストピアですね…)、有給休暇取得率で世界の下位に沈むなど、働き方改革が一向に進まない日本人の状況に、本来の定義を変えてまでワーケーションを無理矢理ねじ込もうとしているのですから導入が進まないのも当然です。


ワーケーションの本質は「働き方改革」なのに、コロナ対策の流れで「観光業促進」の色合いが強くなった

このように、ワーケーションの本質は「働き方改革」であるにも関わらず、コロナ対策の流れで、Go to トラベルと共に地域経済の救済を目的とした「観光業促進」の色合いが強くなってしまったことでややこしくなってしまいました。

それを裏付けるかのように、上述のワーケーション実態調査において自治体職員の回答も、ワーケーションを地域活性化のきっかけとして「期待できる」とした人は30%弱にとどまり、受け入れや集客に関して不安を抱えている人が40%以上になっています。「地域への導入に係るPR。人の誘致に係る発信力が不安」などのPR方法についての不安の声なども見られます。

利用者が増加するような働き方改革のフォローがあるわけでもなく、受け入れ側も何をやるべきか分からず期待薄で、ただ旅行会社による需要喚起の「掛け声」だけが虚しく響いている…。こんな状況では(いつものように)補助金が無駄に使われて終わるだけです。


沖縄の観光業をワーケーションで活性化させる方法

需要が少ないからといって諦めることはありません。沖縄の観光業をワーケーションで活性化させる方法はあります。見るべきポイントが間違っているのです。「ワーケーションをやりたい人たち」の意向調査を沢山見たところで大した参考にはなりません。働き方改革を進められない日本人の多くはワーケーションをやらないと思います。従って、「実際にワーケーションをやっている人」の属性や志向、滞在中の活動などを深堀りした方がずっと役に立ちます。

とはいえ、実際にワーケーションをやっている人たちのアンケートは存在していないので、それに近いデータから類推します。ワーケーションは、旅行以上・移住未満による地域の楽しみ方であること、約60%が1人でのワーケーションを希望していることを踏まえて、沖縄県の「観光統計実態調査」の中から、1人客+仕事客(全体の約40%)、総務省の「過疎地域への移住者に対するアンケート調査」の中から Iターン移住者(全体の約20%)を、実際にワーケーションをやっている人に近い客層と想定して抽出〜分析してみます


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