おちりき

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おちりき

趣味でいろいろ書いてます。おちりきはペンネームです。 ブログ「会社帰りにダラダラ読んでね」やってます。https://kakadarayo.com

マガジン

  • 向こうの世界

    小説です。全10回。 こんなのでも文学界新人賞で三次選考まで残りました。

最近の記事

「考え方は人それぞれ」の使い方

「それは人それぞれの考え方によりますよ」 って、会社で言われました。しかも議論の末にです。 電話会議に使うヘッドセットを部費で買うかどうか? なんていう、どうでもいい話だったんですけどね。 しばらく議論した末に「会社の金で買うべきかどうかは人それぞれの考え方によりますね」って言われたんです。 とても違和感がありました。じゃあ今話した時間は何だったんだ、って。 どうして腑に落ちなかったのか、少し考えていたら答えが出ました。 「考え方は人それぞれ」をどう扱うか。

    • 【全20条】中学生のためのスマートフォン使用契約書

      子供が中学生の時、スマホを持たせる際のルールを決めました。よろしければご活用ください。 スマートフォン使用契約書序文 この契約書の持つ意味 この契約書(以下、「この契約」)には、あなたがあなた専用のスマートフォンを使う上で、主にあなたが守らなければならない約束事が記されています。 この契約は、あなたとあなた以外の全ての人の、心や人権、生活、財産、人生そのものに対して、傷を付けてしまったり、破壊してしまったりすることを防止するためにあります。 スマートフォンは気軽にネ

      • 結婚12年で思う、「結婚する」ということ

        結婚して12年が経った。 奥さんとは何度か大ゲンカをしたが、離婚の危機は一度もない。夫婦って、ケンカもしなくなった時に離婚するのではないだろうか。 結婚生活の過ごし方は人それぞれだけど、結婚して12年経って思う「結婚の現実」を書き留めておきたいと思う。 恋愛感情は必ず冷めるいきなりだけど。 燃え上がった恋はいつかは必ず冷める。冷めないのは、結ばれなかった恋と片思いの恋。 人が人を「好き」だと思う感情を科学的に見ると、「好き」という感情を抱いている時、その人の脳からは

        • 【妄想】中学校の卒業式でしてみたい&15歳の時に聞きたかったスピーチ

          はじめのご挨拶みなさんこんにちは。本日はお招きいただきまして、ありがとうございます。 今日は人生の大きな節目となる日ですね。 このような大切な日に、皆様にお話をする場を設けていただいたことに大変感謝しております。 また、次の世代を担う素晴らしい人材の門出を祝えることは、大変光栄なことでございます。 まずは卒業生の皆様、ご卒業おめでとうございます。 そして卒業生のご父兄の皆様、今日という日まで、毎日大変なご苦労をされてきたかと思います。本日卒業式を迎えられましたことを

        「考え方は人それぞれ」の使い方

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        • 向こうの世界
          10本

        記事

          向こうの世界 最終回

          ※無料で最後まで読めます(投げ銭制)  真っ直ぐ家に帰るのはもったいない気がした。それに、こんなに早く家に帰ると妻に怒られる。だから途中の駅で降りて、ショッピングモールをうろついた。  本屋、模型屋、携帯屋、駄菓子屋を回る。それでも時間が余ったのでコーヒーでも飲もうと思い、入ったことのないスターバックスの入口まで来る。だが入口のガラス越しに見える客や店員が皆とてもお洒落な人に見えてしまい、自分が入店すると浮いた存在になりはしないかと無意味な劣等感を抱いてしまう。結局、コー

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          向こうの世界 最終回

          向こうの世界 第9回

           朝礼は毎週月曜日に行うのがしきたりだ。だから月曜が祝日で休みの場合は中止となる。代わりに火曜日に行われることはない。朝礼で大事なのはその内容ではなく、朝礼を月曜日に開くことなのだ。  三連休明けの疲労と憂鬱をドラクエの仲間のように背後に従えながら出社すると、谷川さんが壁に九時の分のメールを貼っていた。メールの壁貼りなど、普通に考えて馬鹿らしい作業だ。だが谷川さんは相変わらず不平一つ言わずに機械となって貼っている。谷川さんは、会社の仕事なんて感情に波を作らずに淡々とこなせば

          向こうの世界 第9回

          向こうの世界 第8回

          「出張って、今日はどこ行ってたんですか?」  僕がそう聞くと、谷川さんはネクタイを外しながら答えた。 「渋谷にある調理師専門学校に行ってた。パティシエの講座を受けることになったんだ」 「え? 谷川さん、会社辞めてパティシエになるんですか?」 「違うよ、洋菓子の知識を深めるんだよ。大手では熟練のパティシエが商品企画に携わるなんてことを当たり前にやってるんだ」  知らなかった。でも考えてみれば当たり前のような気がする。青りんごはどちらかというと駄菓子寄りの製品が多い。こ

          向こうの世界 第8回

          向こうの世界 第7回

          「お疲れ様です! よろしくお願いします!」 もうすぐで昼休みが終わろうとしているとき、またしても薄暗いフロアの端から場違いな大声が聞こえてきた。隣の席で机に突っ伏して昼寝をしていた高木ちゃんが目を覚まし、眠そうなヤンキーのような目つきで会議室の方向を睨んだ。どうやら毎週金曜日は完熟活動の勉強会になったらしい。あと五分で昼休みが終わる。続々と完熟メンバーがやってきては大声で挨拶をする。 「お疲れ様です! よろしくお願いします!」 「お疲れ様です! よろしくお願いします!

          向こうの世界 第7回

          向こうの世界 第6回

           なぜ正月を祝うのか。秋にはなぜ祭を行うのか。由来さえあれば誰もそれらを疑問視しないのと同じように、創業以来続く毎週月曜恒例の全体朝礼が今朝も行われた。いつものように六階にある四つの会議室がぶち抜かれ、本社の全員が集まり、総務部がビールケースで舞台を作り、財務部長が先週の売上げと今週の目標を報告し、今週順番の回ってきた社長の弟の副社長がスピーチを行った。  今朝のスピーチは世界中で製品を売る海外の大資本企業がそのスケールメリットを活かし、安価な製品を日本国内で売り始めたこと

          向こうの世界 第6回

          向こうの世界 第5回

          「お疲れ様です! よろしくお願いします!」  金曜日の昼休み。今週もあと半日で終わるなぁなどと思いながら自席でヤフーのニュースを読んでいたら、経費節減のために照明の消された薄暗いフロアの端にある会議室の方から、場違いな大声が聞こえてきた。隣の席で机に突っ伏して昼寝をしていた高木ちゃんが目を覚まし、パソコンのディスプレイに照らされた色白の顔の額と頬に、真っ赤な昼寝の痕を付けたまま眠そうな目で会議室の方向を睨んだ。高木ちゃんだけでなく四階にいる誰もが、大声のする会議室の方に注目

          向こうの世界 第5回

          Wearable LOVE

          今やIoT時代。Apple Watchなどの「ウェアラブルデバイス」の歌を作詞しました。 面白かったら作曲などお好きにどうぞ。 【Wearable LOVE】 Wearable Wearable Wear LOVE Wearable Wearable Wear LOVE 初めて会ったあの日から アナタの腕に巻かれたの 走るアナタと寝るアナタ いつでも見守る先進デヴァイス Androidと呼ばないで 立派なGearでいたいから 届けWi-Fiテレパシー Bluetoot

          Wearable LOVE

          向こうの世界 第4回

           会社に着いてすぐ、毎週月曜恒例の全体朝礼に出るために階段で六階へ上がる。朝九時から始まる全体朝礼は、六階にある四つの会議室の壁をすべてぶち抜き、本社で働く約百名の社員全員が集まって行われる。各部が二列ずつ縦に並び、司会と役員は総務部によって作られるビールケースを組み合わせただけの舞台に立つ。    朝礼の内容は毎週同じで、財務部長が先週の売上げと今週の目標を報告し、その後に役員の誰かのスピーチがあり、それでは今週も頑張りましょう、で終わった。朝礼自体はほとんど形骸化していた

          向こうの世界 第4回

          向こうの世界 第3回

           翌週の月曜日。    急行の通過待ちのためにホームで待機しているいつもの各停電車に、いつもと同じドアから乗り、吊り革をつかんだ。電車がまだ止まっているのに吊り革をつかんだのは、あと三分もすれば混雑がピークに達し、つかまるところがどこにも無くなってしまうからだ。    窓越しに見える駅のポスターが、東北の温泉地のものに変わっている。先週まで貼られていたどこかの遊園地のポスターには、赤いビキニ姿の女の子がウォータースライダーをバックにプールサイドではしゃいでいた。今日からのポス

          向こうの世界 第3回

          向こうの世界 第2回

           キリスト教徒のミサに強制的に参加させられた中世南アメリカの先住民のような気持ちで自分の席に戻ってきたら、谷川さんがA四サイズの紙を壁に一枚一枚丁寧に貼っていた。    縦に六枚ずつの列が十列目に突入している。ところどころ、すでに貼ってある紙の上に少しずつずらして重ねても貼っているようなので、単純に計算して百枚はありそうだ。何かの資料か企画案のたたき台でも貼っているのかと思い目を凝らしてみたが、さすがに遠目にはよくわからない。    灰色だった壁が細かい字の印刷された白い紙に

          向こうの世界 第2回

          向こうの世界 第1回

           雨上がりの厚い雲の後ろから顔を出した太陽の光が、会議室にいる僕の目にブラインドの隙間から差し込んだ。直視できるほどに光を弱めたその真っ赤な太陽を見て、夕方になってしまったという現実を受け入れた。  会議資料の横に置いた五百のペットボトルのお茶はもう、二センチほどしか残っていない。見るのが怖かった左腕の時計を見たら、すでに五時をまわっていた。長時間同じ場所に同じ姿勢で座っていたからか、現実と予知夢が同時進行しているかの様な妙な既視感にときどき襲われた。だが眠くてモウロウとし

          向こうの世界 第1回