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「86歳、やっとひとり」 #32 初正月

【ここまでの展開】
「最後は(故郷)〇〇山の見えるホームで暮らすの💗 」 60代前半から”終の棲家”プランを持っていた母がついに行動に出た。気に入った施設も決まり、引越しを経ていよいよ母の”新生活”が始まった。

11月の施設入居から早2ヶ月が経った2020お正月。私と妹は初めての「母訪問」にN県に向かった。もともと「来るのは2~3ヵ月に一度でいいからね。」と言われていたので丁度いいタイミングだ。

「何泊にしよう?」「まあ初めてだから、今回は長めに3泊4日にしてあげよっか?」元旦の午後から1月4日までの、のんびり逗留。宿泊は近くのビジネスホテルだが、母とは最終日のランチまで一緒にいられるよう新幹線も調整した、のだが。。。

「初日は移動日だから来なくていいわよ。初めてだからホームのお正月も体験したいし。」とクールなお返事。それはそれでありがたく頂戴し、私と妹は翌日の夕飯の下見を兼ねて、ファミレスの「鍋フェア」で元日の夕飯をとった。

母のホーム暮らしは概ね好調だが、食事メニューにはイマイチご満足頂けていないようだ。母が食堂で食事をとるのは夕飯だけだが、「メインが『鶏か豚肉が入った野菜炒め』か『お魚』ばっかりなの。私はいいけど、もっと若い人や男性にはあれじゃもの足りないわよ。」と繰り返す。満足いかないのは、明らかに「わたし」だ。せめてお正月くらい、温かい鍋物を思う存分たべさせてあげたいと、母が喜びそうな「ファミレス鍋フェア」を選んだ。明るくて色々選べてにぎやかなテーブル。琴の調べが流れる落ち着いた料理屋より、子供や母にはこっちが正解だ。

結果、作戦は大当たり。「こっちに来てから鍋なんて食べたことないわ。冬はやっぱり鍋よねー!」と大喜びの母だった。施設の食事に「鍋料理」というのも無理があるが、お年寄りもたまには”食べ応えのある食事”が欲しいのは良くわかる。男性の入居者さんには近くのセブンイレブンの「かつ丼」が人気があるそうだ。食事の利用者が減って施設のサービスが傾いては困るので、ここだけは改善を期待したい。

一月二日。ホームを訪問。
母が用意してくれたお雑煮と、東京から持参のおせちのお重で、新年を祝う。2020、今年は母の新生活と共に日本にとっても大きな年だ。どうぞ大過なく良い一年になりますように。。。

まさかそれから間もなく、世界が激震する事態が始まろうとは。


「86歳、やっとひとり」 ~  母の「サ高住」ゆるやか一人暮らし
「何も起きないのが何より」の母のたよりと、「おひとりさまシニア予備軍」(=私と妹)の付かず離れずの日乗。

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