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読んだ本

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自分が読んだ本についての、感想、コメント、連想を、気ままに書いています。
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2021年7月の記事一覧

#109:山崎正和著『柔らかい個人主義の誕生 消費社会の美学』

 山崎正和著『柔らかい個人主義の誕生 消費社会の美学』(中公文庫, 1987年;初出は1984年)を読んだ。恥ずかしながら、著者の本を読むのは初めて。もちろん著者の名前は、私が通った頃の学校の教科書にも確か文章が載っていたし、よく知ってはいたのだが、なぜかずっと手が伸びなかった。  旧仮名遣いの文体に虚を突かれながらも、何とかめげずに読み進めるのだが、なぜか私には論旨が追いにくい。最後の第3章「消費社会の『自我』形成」になって、やっと私にも著者の論述の目鼻が見えてきた・・・

#108:オットー・ペンズラー編『愛の殺人』

 オットー・ペンズラー編『愛の殺人』(ハヤカワミステリ文庫, 1997)を読んだ。本書は全編オリジナルの書き下ろしによるアンソロジーとのこと(最後の一編のみ例外)。ベストセラー作家をずらりとラインアップした執筆陣の豪華さには目を見張らされる。ほとんどの作品が、一定以上のクオリティの、読ませる作品であることは確かである反面、何だか「見本市」のような趣もないではない(あまり良くない意味で)。  私の印象に残った作品をあげるなら、掲載順に、ジェームズ・クラムリー『ホット・スプリン

#107:大村はま/苅谷剛彦・夏子著『教えることの復権』

 大村はま/苅谷剛彦・夏子著『教えることの復権』(ちくま新書, 2003年)を読んだ。著者の一人、大村氏は、優れた教育実践で知られた元国語教師。恥ずかしながら、私は大村氏の著書は未読なのだが、本書で元教え子(苅谷夏子氏)の追憶の中で描き出され、大村氏自身が対話の中で語るその実践が、一人ひとりの生徒の姿に応じて考え抜かれたものであったことは、本書を読むことでしっかりと伝わってきた。私も、「教える」ということが自分の仕事の一部であるので、我が身を振り返って考えさせられる、反省を促

#106:谷川浩司著『藤井聡太論 将棋の未来』

 谷川浩司著『藤井聡太論 将棋の未来』(講談社+α新書, 2021年)を読んだ。藤井聡太・現二冠(棋聖・王位)の目覚ましい活躍は止まるところを知らない。藤井二冠の対局のネット中継は、時間を見つけてできるだけ見るようにしている。彼の指す将棋は、私のようなヘボなアマチュアが見ていても本当に面白いし、時には心底唸らされる。  本書は、著者が藤井二冠の将棋を論じながら、将棋界の現状と将来の展望を、特に終盤ではAIと人間棋士の共存という観点から述べたものである。藤井二冠を取り上げて論

#105:倉知淳著『豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件』

 倉知淳著『豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件』(実業之日本社文庫, 2021年)を読んだ。元の単行本は2018年に発行されたとのこと。著者の作品は結構読んでいる。調べて確認してみると、既読は、おおよそ刊行順に、『日曜の夜は出たくない』『過ぎ行く風はみどり色』『占い師はお昼寝中』『星降り山荘の殺人』『幻獣遁走曲』『壺中の天国』『猫丸先輩の推測』『ほうかご探偵隊』『猫丸先輩の空論』『なぎなた』『こめぐら』『シュークリーム・パニック』『片桐大三郎とXYXの悲劇』『皇帝と拳銃』。