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ヴィジョンを閃く(ひらめく)ためには何が必要か?(ヴィジョンの構想プロセス②)

前回の記事では、ヴィジョンの構想プロセスの冒頭部分として、①主体的真理から始めるということと、②意識の自然な流れと意識の偏在とのギャップに注目するということをお話ししました。

今回の記事では、ヴィジョンの構想プロセスの続きをお話しします。

③問いを立て、直感を活用する

①主体的真理につながりながら、②世の中の集合的意識の流れと偏在に目を向けたならば、いよいよヴィジョンを導出するための問いを立てて、直感を活用します。

3+1意識モデルにおいては、直感意識を活性化するということに相当します。直感意識とは、「直覚的に、本質や真理、生命(いのち)や愛の存在を感じる意識」のことであり、一言で言えば「一(いち)なるものに統合する意識」です。

この「一(いち)なるものに統合する意識」が、ヴィジョンの導出をする主役を担います。

ところで、ヴィジョンを構想しようとして、市場や競合の分析などをたくさん行ったのに、導出されたヴィジョンが、何か空虚な感じがしたり、自分たちとの心的な距離を感じたり、どの会社も掲げていそうな当たり前のものになってしまったという経験はないでしょうか。

市場や競合の分析が無駄という話ではありません。ヴィジョンを構想するための1つの材料として役立ちます。しかし、ヴィジョンは、市場や競合などの分析の積み重ね、あるいは、そこから論理的に導出されるものの延長にはありません。これらの分析や論理的な導出から導きだされるものは、いくらかの明確化や新しい示唆をもたらすものかもしれませんが、新しいものを創造するワクワク感のあるヴィジョンにはなり得ないのです。

思考意識は、物事を「分ける」ことによって理解する方向性を持つのに対して、直感意識は物事を「統合する・総合する」ことによって1つのイメージとして捉える方向性を持ちます。ヴィジョンの構想には、思考意識だけではなく、直感意識の働きが不可欠なのです。

導出されたヴィジョンがつまらないものになってしまう原因の多くは、思考意識のみでヴィジョンを導こうとすることにあります。

ヴィジョンの導出において直感を働かせることが大切であることはご理解いただけたのではないかと思いますが、ではどうすれば直感を働かせることができるのか、という疑問が湧きます。

結論から言えば、直感は問いによって活性化します。

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直感は物事を総合する・統合することによって1つのイメージとして捉える方向性(統覚作用)を持ちますので、それが活性化しやすい問いを立てることがポイントとなります。

具体的には、以下のような問いの立て方を意識することで、直感意識が働きやすくなります。

A.内発的動機とのつながり
▼どうありたいか?

B.大いなるものとのつながり
▼本質的な原理・原則は何か?
▼社会や周囲のために、何ができるだろうか?
▼世の中は自分に何をさせたがっているだろうか?

C.矛盾の統合
▼どうしたら、XとYという矛盾を統合することができるだろうか?

具体的な例を用いて説明しましょう。上記Cの「矛盾の統合」の問いをたてることで、直感意識が働きやすくなることを体感頂ければと思います。次の2つの問いのうち、どちらの方がユニークなアイディアが湧きやすいでしょうか?

X. 快適なカフェはどのようなものか?

Y. 怪しげな雰囲気だけど、快適なカフェはどのようなものか?

Xのカフェはイメージしやすいかもしれませんが、どこにもありそうなカフェが思い浮かぶのではないでしょうか。Yのカフェは、最初は、なかなか想像しにくいかもしれませんが、少しイメージを膨らませてみると、例えば、店員さんが海賊の格好をしていて、お店の真ん中に海を模したプールがあるようなカフェを思い浮かべたりすることができますね。

このように、Yの問いの方がユニークなアイディアが浮かびやすいのではないかと思います。その理由は、Yの問いは一見矛盾する要素(怪しい⇄快適な)が含まれているために、「一(いち)なるものに統合する意識」である直感意識が働きやすいからです。

この問いの例と同様に、いいヴィジョンを構想するためには、直感意識を活性化する問いをもつことが大切です。

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いいヴィジョンを構想するための、直感が降りてきやすい問いの構造は、上図のようになります。全体を俯瞰した上で、一なるものを見出しつつ、自分の内発的動機(主体的真理など)につながるような問いを立てます。

具体例として、私が学校教育について何らかのヴィジョンを考えている状況としましょう。

私の主体的真理はこのように表現できます。

【私自身の主体的真理(を最大限純度高く表現したもの)】
本質追求による大いなるものとの一致感

学校教育に関する世の中の意識の自然な流れと、意識の偏在について次のように捉えたとしましょう。

意識の自然な流れ・・・外面に正解があって、その正解を導出する方法を効率的に習得するという教育ではなく、一人ひとりの好奇心やありたい姿を大切にして、周囲や社会と調和しながら生きていく力を涵養するような教育が必要なのではないか

意識の偏在・・・総合的な学習などの取り組みはやっているものの、外面にある正解を導出する方法を効率的に習得するという前提は変わっていない。

この状況において、直感意識を活性化するような問いの立て方は次のようになります。問いの立て方のプロセスをご理解いただきやすいように、上図の問いの構造に忠実に記載しますので、かなり冗長な表現になってしまうことをお許しください。みなさんが問いをたてるときは、このエッセンスを掴んでいただき、シンプルに表現された問いをもつことをお勧めします。

【意識の流れ】
▼外面に正解があって、その正解を導出する方法を効率的に習得するという教育ではなく、一人ひとりの好奇心やありたい姿を大切にして、周囲や社会と調和しながら生きていく力を涵養する教育が必要という流れに対して、
▼外面にある正解を導出する方法を効率的に習得するという前提はあまり変わっていないという状況において、

【一(いち)なるものを見出す】
子供一人ひとりが、自分の好奇心やありたい姿を大切にして、周囲や社会と調和しながら生きていく力を習得できるようになるために、

【内発的動機(主体的真理)につながる】
本質追求による大いなるものとの一致感という自分の主体的真理は、どのように開花・結実するだろうか?
(世の中は、「本質追求による大いなるものとの一致感」という主体的真理をもつ自分に、どうさせたいだろうか?)

この内容をシンプルに表現すると次のようになります。

外面にある正解を効率よく導出するための教育ではなく、内面の好奇心やありたい姿を大切にする教育の本質は何か? その本質を普及させていくストーリーはどのようなものか?

ここまでのお話で、思考意識だけではなく、直感意識を活性化するために、いい問いをもつことが重要であることをご理解いただけたかと思います。ここで、次のような疑問が湧くのではないでしょうか。

問いがあれば、すぐに直感が降りてくるのだろうか?

残念ながら、この答えはNoです。直感活用のために、いい問いをもつことは必須になりますが、いい問いを持ったからといってすぐに直感が降りてくるとは限りません。

直感はいつ”降りてくる”のか?

これをご説明するために、アインシュタインが友人ソロビーヌに宛てた手紙を引用させてください。その中では、アインシュタインが自分の「ものの見方」について説明しています。

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(Albert Einstein statue at Museum of Cosmonautics at Moscow in Russia)

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この中に次のような描写があります。

「我々をE(経験)からA(公理)に導く論理的経路は存在しない。そこにはただ直感的(心理的)つながりがあるだけであり、それも、いつも単に“おって知らせがあるまで”のつながりである。」
(アインシュタイン)

アインシュタインは、相対性理論などの現代の物理学においても中核をなす理論を発見したことで有名ですが、そのような理論を導く論理的経路は存在せず、直感的なつながりがあるだけであること、そして、それはすぐにやってくるのではなく、「おってお知らせがあるまで」という具合に時間差があることに言及しています。

問いに対する直感が降りてくるのは、今日かもしれないし、1ヶ月後かもしれないし、1年後かもしれないのです。

ここが思考意識で分析をしたり、論理的に考えを詰めていくアプローチとは大きく異なるところの1つです。思考意識での分析や論理構築は、基本的にはやればやっただけ進捗していきます。もちろん、考えが堂々巡りしてしまうというような場合もあるかもしれませんが、大局的にはやればやっただけ進捗していくと考えて良いでしょう。

しかし、直感意識はそうはいきません。直感が降りてこないときは全く進捗感がありませんし、本当に何らかの解が得られるのか不安な気持ちがおこることもあります。時間の経過とともに、着実に進捗するというものではないのです。

一方で、直感が降りてきたら、その全てが見えたかのような衝撃と共に、自分の中にありありとしたイメージが湧きます。それは、暗闇の部屋の中に、出口につながる一筋の力強い光が見えてくるような感覚です。

一筋の道

大切なことは、いい問いが、いい直感を導くということです。そして、思考意識を用いることで、いい問いを持ち、直感が降りてくる準備をすることは誰でもいつでもできます。誰でも、自分の直感を活用することはできるということですね。

ということで、「いい問いをたてたら、追って知らせがあるまで、気長に構えて待つ」ことをお勧めします。「人事を尽くして天命を待つ」というイメージに近いですね。

パソコンのメタファーでいえば、手元でやるべき作業をしながら、バックグランドで計算時間がかかるようなプログラムを作動させておくというイメージでしょうか。いつかは、答えを返してくれます。

今回の記事では、ヴィジョンの構想プロセスの続きとして「問いを立てて、直感を活用すること」についてお話ししました。次回の記事では、ヴィジョンの構想プロセスの終盤部分についてお話しします。

本日の問いとなります。(よろしければ、コメントにご意見ください)

・あなたがこれまで直感が降りてきた、あるいは、何かが閃いた経験があるとすれば、それはどのような経験でしたか?

・そのような直感や閃きが降りてきた背景として、あなたはどのような問いを意識的、あるいは無意識的にもっていたと思いますか?

What is required to spark a vision?(Visioning process(2))

In my last article, I talked about the first part of the visioning process: 1) starting with the subjective truth, and 2) paying attention to the gap between the natural flow of consciousness and the partiality of consciousness.

In this article, I will discuss the next part of the visioning process.

Develop "quests" and use one' s intuition

Once we have (1) connected to the subjective truth and (2) focused on the flow and maldistribution of collective consciousness in the world, we can finally make "quests" and use our intuition to derive visions.

I use the word "quest" here as one that has the form of a question, but with the connotation of a quest for the unknown and the great.

In the 3+1 Consciousness Model, it corresponds to activating the intuitive consciousness. Intuitive consciousness is "the consciousness that intuitively senses the existence of essence, truth, INOCHI(life), and love. In a word, "it is the consciousness that integrate into the One."

The consciousness that integrates into the One plays the leading role in the derivation of visions.

By the way, have you ever tried to conceive a vision and done a lot of analysis of the market and the competition, only to find that the vision you came up with felt empty, distant from yourself, or just plain commonplace, as if many other companies had the same idea?

This is not to say that market and competitive analysis is useless. It can be useful as a source of inspiration for a vision. However, vision is not an extension of the accumulation of analyses of markets and competitors, or of what is logically derived from them. What we derive from these analyses and logical derivations may provide some clarity and new suggestions, but they cannot be the exciting visions that create new things.

While the thinking consciousness has the direction to understand things by "dividing" them, the intuitive consciousness has the direction to perceive things as a single image by "integrating and synthesizing" them. In order to conceive a vision, it is essential to work not only with the thinking consciousness, but also with the intuitive consciousness.

Most of the time, the reason why the derived visions are boring is because we try to derive them only from our thinking consciousness.

Now that we know that it is important to use our intuition to derive visions, the question arises as to how we can use our intuition.

In conclusion, intuition is activated by "quests" (which has the form of a question, but with the connotation of a quest for the unknown and the great.)

Intuition has the ability to synthesize and integrate things into a single image (Apperception ), so the key is to develop "quests" that will activate it.

Specifically, by being aware of how to formulate the following "quests" (questions), it will be easier for our intuitive consciousness to work.

A. Connection to intrinsic motivation
・How do we want to be?

B. Connection with the Greater Good
・What are the essential principles?
・What can we do for society and our surroundings?
・What does the world want us to do?

C. Integration of contradictions
How can we integrate the contradiction of X and Y?

Let's use a concrete example to illustrate. By asking the question of "integration of contradictions" in C above, I hope you will experience that it becomes easier for your intuitive consciousness to work. Which of the following two questions is more likely to spark a unique idea?

X. What does a comfortable café look like?

Y. What does a suspicious but comfortable café look like?

The X café may be easy to imagine, but you may think of a café that could be anywhere. The Y café may not be easy to imagine at first, but if you try to imagine it a little, you can, for example, imagine a café where the staff is dressed as pirates and there is a pool in the middle of the store that resembles the ocean.

In this way, I think the Y question is more likely to bring up unique ideas. The reason for this is that Y questions contain seemingly contradictory elements (suspicious⇄comfortable), which makes it easier for the intuitive consciousness, the consciousness that integrates into the One, to work.

As in the example of this question, it is important to have "quests"(questions) that activate our intuitive consciousness in order to envision a good vision.

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The structure of a "quest"(question) that is easy for intuition to come down to in order to conceive a good vision is shown in the figure above. With a bird's eye view of the whole, we can develop "quests"(questions) that lead to our own intrinsic motivation (e.g., subjective truth) while discovering the greater good.

As a concrete example, let's say that I develop a vision for schooling.

My subjective truth can be expressed in this way.

【My own subjective truth (expressed with the utmost purity)】
A sense of unity with the greater through the quest for essence

Let's assume that the natural flow of the world's consciousness about schooling and the partiality of consciousness are viewed as follows.

The natural flow of consciousness... Rather than an education in which the correct answer is on the exterior and the method to derive the correct answer is efficiently learned, we need an education that values the curiosity of each individual and the way they want to be, as well as cultivating the ability to live in harmony with their surroundings and society.

The partiality of consciousness... Although we are working on initiatives such as comprehensive learning, the premise of efficiently learning how to derive the correct answer on the exterior has not changed.

In this situation, the way to develop "quests"(questions) that will activate our intuitive consciousness is as follows. In order to make it easier for you to understand the process of formulating questions, I will follow the structure of "quests"(questions) in the diagram above exactly, so please forgive me if I am quite verbose. When you develop your own "quests"(questions), I encourage you to grasp this essence and develop "quests"(questions) that are expressed simply.

[Stream of consciousness]
・In response to the current trend that we need an education that values the curiosity of each individual and the way they want to be, as well as cultivating the ability to live in harmony with their surroundings and society, rather than an education that has the right answers on the exterior and efficiently learns how to derive those right answers,
・In a situation where the premise of efficiently learning how to derive the correct answer on the exterior has not changed much,

[Discovering the greater good]
In order for each child to acquire the ability to value their own curiosity and the way they want to be, as well as the ability to live in harmony with their surroundings and society,

[Connecting to intrinsic motivation (subjective truth)]
How will my subjective truth of a sense of unity with the greater through the quest for essence blossom and come to fruition?
(What would the world want me to do with the subjective truth of "a sense of unity with the greater through the quest for essence?")

This can be expressed simply as follows.

What is the essence of education that values inner curiosity and what one wants to be, rather than education to efficiently derive the right answers on the exterior? What is the story behind the prevalence of this essence?

So far, I hope you have understood the importance of having good "quests"(questions) in order to activate not only your thinking consciousness but also your intuitive consciousness. Now, the following questions may come to your mind.

Once we have a "quest"(question), will our intuition come down immediately?

Unfortunately, the answer to this question is NO. It is essential to have good "quests"(questions) in order to utilize intuition, but having good "quests"(questions) does not necessarily mean that intuition will come to us immediately.

When does intuition come down?

To explain this, let me quote from a letter that Einstein wrote to his friend Solovine. In it, Einstein explains his "way of seeing things".

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In it, there is the following description.

...there exists no logical path that leading from the E to A, only an intuitive (psychological) connection, which is always merely "until further notice."
(Albert Einstein)

Einstein is famous for discovering theories that are core to modern physics, such as the theory of relativity, but he noted that there is no logical path that leads to such theories, only intuitive connections, and that they do not come immediately, but with a time lag, "until further notice."

The intuition for a "quest"(question) may come down today, or a month, or a year from now.

This is one of the major differences from the approach of analyzing and logically constructing ideas with thinking consciousness. Basically, the more we analyze and build logic with our thinking consciousness, the more progress we will make. Of course, there may be times when our thoughts go in circles, but in the big picture, the more we do, the more progress we will make.

However, this is not the case with intuitive consciousness. When the intuition doesn't come, there is no sense of progress at all, and we may feel anxious about whether we will really get some kind of solution. It is not something that progresses steadily with the passage of time.

On the other hand, when the intuition comes down, we get a vivid image of what we have in mind, with a shock as if we could see all the solutions. It's like seeing a powerful light in a dark room that leads to the exit.

The important thing to remember is that without good "quests"(questions), intuition is unlikely to come down.

The important thing to remember is that good "quests"(questions) lead to good intuition. And by using thinking awareness, anyone can have good "quests"(questions) and be ready for intuition to come to them at any time. So, anyone can utilize their intuition.

Therefore, I recommend that once we have a good question, we should wait patiently until we receive further notice. This is similar to the image of "God helps those who help themselves."

In the metaphor of a computer, it is like having a program running in the background that takes a lot of computation time while we do the work we need to do at hand. Someday, it will give us an answer.

In this article, I talked about 'Developing "quests"(questions) and using our intuition' as a continuation of the visioning process. In the next article, I will talk about the final part of the visioning process.

Here are the quests of the day. (If you'd like, please share your thoughts in the comments.)

・What experiences, if any, have you had where intuition has come to you, or where something has sparked in you?

・What "quests"(questions) do you think you consciously or unconsciously asked yourself as a background to such intuition and inspiration?

Bunshiro Ochiai


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