ダサい。#ファーストデートの思い出

林伸次さんの小説『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』全文公開記念「#ファーストデートの思い出」を募集!|note公式|note(ノート)https://note.mu/info/n/nd45834aa663a

このnoteはnoteお題企画 #ファーストデートの思い出 に参加しています。
決して血迷って自らの昔の恋愛について酔いしれながら書いているものではない。

もともとこのハッシュタグ企画には参加しないつもりだった。
書くほど面白いことも書きたいと思うこともなかったから。

しかし、それは僕が思い出したくない記憶を都合よく忘れようとしていただけだった。
これから書く内容を思い出した引き金は机を整理していた時にポロっと出てきた映画の半券だった。

僕は机に敷いてあるビニールマットと机の間に写真などの思い出や大事な連絡先を挟んでいる。そこにはこれまでみた映画の半券も全部ではないが挟まっている、記録用だ。

特別面白かったとか。ずっと観たくてやっと観れたとか。大事な人と観たとか。捨てるとこなくて家まで綺麗に持って帰ってしまったとか。
そういう時の映画の半券をそこにしまっている。

この時点でまぁまぁ気持ちが悪いが、それをやってる僕からしたら周りにもそういう人間はいると思っている。

話を戻してなんの映画の半券だったか。
「インシテミル」という映画。

8年前の映画でその当時は他にやっている映画もパッとしたものはなくまぁまぁ人が入っていたイメージがある。

僕には初めてできた彼女がいて、その子と初めてのデートは照れ隠しのためかダブルデートだったおぼえがある。そうじゃなかったらごめん。
池袋の映画館で全くデート向きでないこの映画をそのもう一方のカップルのせいで観ることになる。

僕はいまだにこの手の映画が嫌いだ。
殺し合い系の映画で密室で極限状態のバトル・ロワイアル的な映画が嫌いだ。
当時も例外なく好きではない、でも他に面白そうなものもないし、という文言の一点張りで意見が押しきられ観ることとなる。

映画は淡々と始まり一人二人とどんどん殺されていく。
3人目で限界だった。
静かなシーンで銃声だけが鳴り響き、人間の身体は蜂の巣のように穴だらけ、なんとも見ていられない。

そしてあろうことか僕は彼女の耳元で「お腹痛い、トイレいってくる。」とだけ伝えトイレに逃げ込んだ。
理由はただひとつ映画が思ったより怖かったのだ。
今観ることはないとは思うが、これのどこが?と今では思う具合の映画だが観れなかった。

ラスト10分くらいで席に戻り、ラストシーンを見届け、エンドロールが流れ映画が終わり場内が明るくなると優しい彼女はすかさず「大丈夫?」と聞いてくれたが、僕の心のなかではどうにか映画を乗り切れた喜びに満ち溢れていた。

もちろん、その子は僕が怖くて席を立ったということには気づいていたと思う。

なぜかって。
同じ部活の同級生の女の子に「映画怖くて途中で帰ったって本当?」と週明けの月曜に聞かれたからだ。
噂は尾を付けヒレを付けて誇張され僕のダサさはひそかに広まっていった。

改めて文字に起こすと本当にダサい。
これがファーストデートの思い出。

誰でも何事にも最初ってあるけどあらゆる最初のなかでこれがきっと一番ダサい。
でもこれを機に思い出せてよかったのかも。

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