桃鉄と友情

こないだ新宿で行われた高校の友人との飲み会で思い出したことがある。
（会の詳細はこちら）新年と新宿｜落合。 https://note.mu/ochiai_note/n/n100f97601bfc

それは一度はやったことのある人も多い桃太郎電鉄通称"桃鉄"に関する話。

知らない人に軽く紹介すると日本を舞台に行うすごろくで地域がマス目になっており、マスごとに不動産が買えたり、アイテムやお金がもらえたりする。

ゴールはランダムで選ばれた地名のマス。最初に着いたプレイヤーが賞金等をもらえ、また次のゴールがランダムで決められる。

そして、誰かがゴールした際にゴールから遠い位置にいるプレイヤーには"ボンビー"と呼ばれる貧乏神が憑き、考え付く悪いことがまぁまぁ起きる。
ボンビーは他プレイヤーとすれ違うとそっちに乗り移る。

ゲームの勝敗は決まった年数がゲーム内で経ったときのプレイヤーの総資産額の順位で決まる。

詳しくはこれを見ていただいてhttps://youtu.be/mkNkNfs1hGc

新宿で新年集まったメンツにプラス3人ほどで桃鉄を30年分やった。なぜこのメンツなのかと思うほど学校以外での交流はその桃鉄が最初で最後だった。

元からそこまでの関係だったのかもしれない。しかし桃鉄をしてから3年経つ今集まっていないどころか顔すら合わしていない理由はあの日やった桃鉄かもしれないということに気づいた。

30年耐久桃鉄は最初の5年くらいまではいい勝負だった。
しかしツキが回ってこなく、10年を過ぎる頃には僕が動かす電車の後ろにずっとボンビーがついている状態だった。そのあとも状況は変わらずよくなるどころか状況は悪化していた。というのもボンビーが変身し最凶最悪のキングボンビーに変わってしまい、借金が200億を越えていた。

200億の借金なんて現世だったら自殺案件かもしれない。ゲームでよかった。諦めも着いた頃、ゲーム側に同情され、色々紆余曲折あり他のプレイヤーの近くに飛ばされ、そしてキングボンビーをある一人に擦り付けることが成功したのだった。

しかし事件はここから始まる。

擦り付けられた彼は僕とはそこまでの仲でもないが、友人は多く顔も広くとても面白く取っつきやすい"いいやつ"だった。

擦り付けられたキングボンビーは資産がただただマイナスになっていく僕のときとはうって代わり生き生きと3位につけていた彼の資産を数ターンの間にどんどんと減らしていった。

実世界の彼はその間目も当てられない雰囲気だった。
明らかにさっきより言葉数が減り、場の雰囲気は最悪、この空間を作ってしまったのは紛れもなくキングボンビーであり、それを擦り付けた僕であった。

キングボンビーは時間がたち通常のボンビーに変わったがそれでも彼を取り巻く闇はなくならない。
コントローラーを操作する手からは苛立ちが読み取れ、小さな声で「クソが」「マジあり得ない」「殺す」などと呟き、そして僕とは全く目が合わない。

ほんとにWiiの電源を切りたかった。
悪いのは僕だった、すぐに面と向かって「ごめん」と謝るべきだった。
その前に借金200億でキングボンビーを終わりまで手なずけるべきだった、勝てもしないのに擦り付けることなんてしなきゃよかった。

そんな僕もひとつ言いたいことがあった。

それは

「ゲームじゃん」

それも
「"たかが" ゲームじゃん」
もっと言うとしたら
「たかがゲームでなに本気になってるの？」

これだ、あの場で一番言ってはいけない言葉だとは思う。でもそのあと3年以上顔も合わせないのなら言えばよかった、「たかがゲームじゃん」
あぁ言いたかった。グッと圧し殺した僕はきっと大人だったのだろう、だって借金200億でも普通に淡々と楽しそうにプレイしてたんだから。

僕のなかでは友達も多く、話しやすい彼の株は大暴落。
彼のなかでも「桃鉄でキングボンビーを擦り付けた」僕の株は大暴落したのだとは思う。そして、３年も経ってこんなことを今さらSNSに長々と書きつらねているような器の小さい僕は彼とは友達にはなれないだろう。

たかがゲームにあそこまで本気になれた彼は借金200億でも死のうともしなかった僕に比べ、あのゲームを作った人間からしたらリアルに楽しみそして悲しんだ「良い顧客」なのだと思う。

そうかんがえるとよかったと思えてくる。
僕がただあのゲームにドライなだけだったのだろう、ごめん。

新宿での新年会でこの出来事を思い出したがこの事件の後から確実に僕のなかでは「桃鉄で本気になる人とは友達になれない」という項目が人付き合いの上でできたと思う。

これから先、彼の人生に僕は一切現れないだろう。
とりあえずこの場では彼が中くらいの幸せをつかみ少しでも長生きすることを願っている。

以上。