運命という名のもとに第2話

~妄想という名の短編小説~

第2話『煌めく朝に』

今日はやけに早い目覚めだった。汗がむしばむこの季節は、夏生まれの私でも好きにはなれなかった。登校前のシャワーを浴びる。甘いトリートメントの香りだけがその嫌な朝をかき消してくれた。

今日も暑いな。

いつもの通学路……。代わり映えもない通学路。毎日、毎日、私は一体何のために学校に行ってるんだろう。同じことを何度も何度も考えては……出ることのない答えを探していた。きっと、そのトボトボ歩くスピードは……その辺の小学生よりもずっとずっと……遅かったに違いない。そんな時だった。

ガツーンッ!!

『痛っ……。な、なに?!』

『黄昏お嬢ーちゃん♡おは~よッ!!』

見事に後頭部直撃した私の頭は微かによろめいたものの……それよりも、あの高山美咲が朝から登校してること自体に驚きを隠せなかった。いや、それよりも、おはよ?私に?おはよ…って、言った???な、な、な…なんで?!

『黄昏ちゃん?どーしたの?朝から黄昏てんなぁ~と思ったら、そこまで目を丸くしなくても、いいじゃん!ん???』

そうして、美咲はまた……笑った。

『あ、ごめん。・・・お、おはよ…う』

『ははは。痛かった?つい……さぁ?黄昏ちゃんを見つけちゃったから、驚かせたくなってしまったのよぉ!』

そう言うと、美咲はいきなり私の腕を掴んで……やや半ば無理矢理引っぱって……歩き出した。

どうしよう。みんなが見てる。私と高山美咲が一緒に歩いてる。私が……女王と歩いてる。そして…何故か胸の奥に高鳴る鼓動を感じていた。

『黄昏ちゃんってさ?名前なんて言うの?』

『あ、私?わたしは……空(そら)。野見山 空。』

『空(ソラ)?・・・やっぱり、黄昏ちゃんだね?!いい名前だよ。私もさ?何か…そういうのがよかったなぁ。』

美咲は…私の分まで、色んなことを話してくれた。会話が止まらないように。沈黙すら…笑い飛ばして。そのうち、私たちは…学校の目の前にまで来ていた。いつもの通学路。代わり映えのないものだと思い込んでいた……ついさっきまでの感情を打ち消すかのように……。そのひとときは……とても楽しかった。

この明るい朝がまた……私の心を潤してくれたんだ。

美咲……。私はね?あの日の朝がどんな時間よりも幸せだって、感じてたんだよ。わかるかなぁ?美咲。

この日の朝、知ったこと。
美咲は学校を辞めようとしていた。けど、辞めることを止めたらしい。何故かは……、教えてくれなかったのだけど、それでも……私に見せてくれる笑顔だけは、いつも優しく、そこに色づいていた。
美咲の笑う顔が…心地よかった。

──ずっと…続いたらいいのにな…

あの頃は、ぼっちが嫌な訳ではなかった。けれど、心のどこかで…求めていたのかもしれない。
掛けてはいけない期待をいつの間にか心が求めて居たのかもしれない。何となく…込み上げてくる複雑な感情。

でもね?
今ならわかるよ。きっと…求めていたんだね。

詩を書いたり、色紙に直筆メッセージ書いたり、メッセージカードを作ったりすることが好きです♡ついつい、音楽の歌詞の意味について、黙々と考え込んで(笑)自分の世界に入り込んでしまうけど、そんな一時も大切な自分時間です。