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【企画レポート】入管法「改正」案は問題だらけ!~排除ではなく共生を〜

こんにちは!ピースボートセンターなごやボランティアスタッフをしている、かとれなです。
今年の春頃ニュースになったこの話題。メディアが取り上げたことにより知った方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。今回は入管法の改正法について児玉晃一先生(東京弁護士会)のお話を一部ご紹介していきたいと思います。(2021年5月25日の企画のレポートです。)

はじめに

外国の方と関わることがないとあまり身近に感じるのは難しいかもしれませんが、外国の方が日本で生活するためには必ず入国管理局へ訪れなければなりません。今回はその入国管理局で取り扱われている入管法の現行法と改正案にどのような課題があるのかに焦点を当てています。

現行法では、外国人が収容されるときに第三者の意見なく収容されてしまう、収容の期限が設けられていないという実態があります。
改正案は、その実態は変わらず新たに監理人を設定することが盛り込まれました。これは被収容者を助けたいと思っている人たちが生活状況をチェックし入国管理局へ報告するというものです。そのため、さまざまな支援団体が反対をし事実上廃案となりました。

また日本の難民認定率が低いことは皆さん一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。この現状も数字で表しているので、見ていただければ幸いです。

1.そもそも入管法って??

正式名称は、出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)本邦に入国し、または本邦から出国する全ての人の出入国及び本王に在留する全ての外国人の在留の公正な管理を図るとともに、難民の認定手続きを整備することを目的とする。(第一条)
実施主体は法務省出入国在留管理庁。

2.難民について

・難民とは?
日本の難民認定制度は国際条約である難民条約の定義と同じであり、人種、宗教、国籍、特定の社会的集団、政治的意見、少なくともいずれか一つを理由として迫害を受ける恐れがある人たちのことをいう。

・難民認定率

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日本の難民認定率は他国よりも圧倒的に低い。韓国も難民認定率は低いが、これは日本の法律を参考にしたためだと考えられる。他国も批准している難民条約に基づいて難民の定義がされているのにも関わらず、難民認定率が他国に比べて著しく低いのは日本政府に問題がある。

3.入管収容について

・入管収容とは?
個室や集団部屋で一日のうち十数時間は閉じ込められること。

・収容施設
全国で17か所あり、収容可能人数は4400人程度で常時1,2千人は収容されている。現在は新型コロナウイルスの影響もあり245名が収容されている。

・収容の根拠/期間
どのような根拠で収容されるのか。

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・現行法の課題
【現行法の課題1】
収容令書は主任審査官(国家公務員の役職)の一存で発付される。刑事事件の場合、逮捕状は裁判官が審査/発付し起訴するまで最長23日間の拘束ができる。一方入管法では最長刑事事件の3倍、60日間の拘束が可能で、主任審査官のみの判断であり第三者が関与していない。第三者の裁判所の意見を入れるべきだと国連の恣意的拘禁作業部会でも指摘されている。

【現行法の課題2】
退去強制令書を出されると送還可能な時まで無期限収容になる。5年、中には9年長期収容される場合もある。これは法律上、収容期間の上限が決められていないからである。全体の70%は半年以上収容されている(2019年12月現在)

【現行法の課題3】
収容の必要性を明確な要件としていない。刑事事件の場合、犯罪をした容疑だけでは拘束できず、その人が証拠隠滅、逃亡する危険があるなど拘束する必要性があった場合に拘束できる。入管の場合、全件収容主義(法39条)はこの拘束する必要性を考えずに拘束が可能と言うことが条文で定められている。その人がすでに不法滞在者であれば証拠隠滅などは不可能で逃亡することも難しいのだが、何も考慮されずに拘束されてしまう。以前は、小学生も収容されていた。

4.入管法改正案について

・入管法改正案(出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案)の背景
【2016年】
入管局内で東京オリンピックの年(2020年)までに不法滞在者や社会に不安を与える外国人を大幅に縮小することが喫緊の課題であると内部通達されていた。そのため不法滞在者を早く出国させなければならないという空気が流れていた。元々存在していたルール(現行法)例:収容に期限が設けられていないことや難民認定率の低さにより入管に収容しなければならない人が増えてしまう課題に対して外国人を受け入れるのではなく、排除の方向で進められていたことが考えられる。

【2021年2月19日】
入管法改正案が閣議決定される。

【2021年5月18日】
入管法改正案が事実上廃案となる。
難民支援に関わっている市民団体、研究者の団体、弁護士の団体より声明文が出された。そしてネットメディアで取り上げられ、多くの人が知る機会となり、市民の力が政治の力を動かし、事実上改正案は廃案となった。
今回の入管法改正案では、国際人権規約や難民条約を覆すような案が出ていた。入管法について、元々国連UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)からは、人権の観点から問題があると採算指摘されている。

・入管法改正案の内容
収容令書・退去強制令書の発付後から送還時まで収容することが原則とされる現在の制度を改め、収容に代わる監理措置の新設が提案された。

【改正法の問題点1】
 監理措置の判断は主任審査官の一存で判断されてしまう。収容令書の発付同様、第三者の関与がない。

【改正法の問題点2】
監理措置の要件を決めたことになっていない。逃亡や証拠隠滅、不法就労の恐れの程度、その他の事情を考慮して判断される(44条の2第1項、52条の2第1項)判断する主任審査官がその他の事情だと判断すれば、何かと理由をつけて監理措置とすることができてしまう。

【改正法の問題点3】
監理措置ができると「監理人」が設定される。これまで被収容者の仮放免(保証金を払って外に出る)をした場合、保証人が必要でほとんどは知り合いや家族、弁護士、支援団体、牧師が行っている。この人たちは被収容者を助けたいという思いで相互の信頼を基礎にしている。その保証人が「監理人」となり被収容者の生活状況をチェックし、報告しなければならなくなる。そして義務を怠った場合は罰金が発生する。このような制裁をするとなると、信頼関係ではなく支配・被支配の関係に変容してしまう。入国管理局の手下として保証人は「監理人」をしなければならなくなる。

5.感想

グローバル社会が進み、日本のどこに行っても外国人を見かけるようになった今日。在日外国人の数は年々増加し現在日本に住む外国人は、288万5,904人です。(令和2年6月末現在 出入国在留管理庁HP)この数字は広島県の総人口よりも多い値です。少子高齢化の日本は、今や外国人なしでは生きられない時代になっています。

こんなにも多くの外国人が住んでいながらどのような生活をしているのか、どのような制度があるのか私は全然知りませんでした。今回勉強したいと思い、この入管法改正案についての企画のレポートを書きました。

この入管法を知り、日本が外国人の人権を侵害している事実に信じがたい思いとただただショックを受けました。基本的人権は誰もが保障されなければならないことです。もちろん法律違反はいけないことですが、その法律がそもそも人権を無視していないでしょうか。事実上廃案となった改正案は、現行法の見直しはされず収容者を減らすための措置のように思えてなりません。私は外国人も含め誰もが同じ日本に住む「一人の日本人」として同等の権利を望みます。入管法は日常生活でなかなか触れることがないですが、多くの日本人の方に入管法の実態を知っていただきたいと思いました。

【登壇者情報】 
児玉晃一氏(東京弁護士会)
弁護士歴26年。人権・難民問題に長年にわたり取り組む。収容問題を多数手がけてきた。外国人の権利に関する委員会元委員長、全国難民弁護団連絡会議の世話人なども務める。

▼難民支援協会について


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