まだ汚れていない怪獣

今日はクリスマス。
クリスマスにはトルーマン・カポーティの短編を読むのが好き。

『もし何でも出来るなら私は、私たちの惑星、地球の中心に出かけていって、ウラニウムやルビーや金を探したいです。まだ汚れていない怪獣を探したいです。それから田舎に引越したいです。フロリー・ロトンド。八歳。』

これはカポーティの文章の中でわたしがいちばん好きな一文。「叶えられた祈り」より引用。

真夜中、京さんから伝えたいことがあると、電話をもらった。昨晩のことだ。それはとても親密で温かな伝言だった。京さんと知り合ったのは28歳の頃。広告代理店に勤めていた時のことだ。旧・日本郵政公社の仕事を現代作家・湯沢薫に依頼したことがそのきっかけだった。京さんと一緒にキャンペーンのキャラクターを作った。手紙啓蒙キャンペーンのこのプロジェクトは東京インタラクティブアドアワードのサイト部門で受賞もした。懐かしい、2007年のことだ。もう12年も前の話し。

京さんとの縁は深く、もちろん彼女のモデル時代・湯沢京として活躍していた頃からのいちファンだっただけではなく、こんなこと書いていいのだろうか、わたしは当時、京さんのボーイフレンドだった写真家の若木信吾さんが編集発刊を行なっていた「youngtree press」*1のvol.3に写真家の内田亜里と共に『IZANAGI MANNER』*2という短編を発表したことがある。このことが縁でのちに、現代作家となった京さんに仕事を依頼することになる。若木さんも、京さんも、いわばわたしの立会人のような人である。人生の割と大きめなターニングポイントで出会い、見守ってくれた存在。そして、すっかり忘れていた! すっかりとわたしは、忘れていたのだよ、昨晩まで。

生まれて初めて広告賞に触れ、短編を発表し、この短編はやがて中沢新一*3との出会いに繋がるのだが、すっかりとわたしは忘れていた。京さんからの伝言はこうだ。「ほっしー、書きなよ。書いた方がいい。」

今日はクリスマス。京さんからの伝言に、クリスマスプレゼントをもらった気分になった。毎日というわけにはいかないだろうが、これまで発表したものや、書きためたものなども含め、アップする予定。新しいものも少しずつ、書いていこうと思う。

*1 youngtree press
写真家・若木信吾さんが発行者をつとめる、年2回発行の写真と文とを交えたドキュメンタリースタイルマガジン "youngtree press" (ヤングトゥリープレス)。ある日のこと、ある瞬間のこと、ある場所のこと。それぞれの日常から普遍的なテーマを手がかりに、勢いあふれる記事の数々。

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*2 IZANAGI MANNER 
youngtree press vol.3に文・星野亜紀子 写真・内田亜里「ちにつくて てりつくち てんつくてん」を発表。英題の「IZANAGI MANNER」は若木さん自身がつけてくれた。わたしと内田亜里が行なった香美郡物部村のいざなぎ流の突撃レポート。荒俣宏の書籍「陰陽師 ―安倍晴明の末裔たち」 (集英社新書) には、わたしがいざなぎ流の太夫にスカウトされた話が登場する。

*3 中沢新一
中沢先生の初めての本格的なフィールドワークは物部村だったそう。中沢先生とは村上秀貴(ex旦那)を介して出会う。講談社のクルーと共に大阪アースダイバーに着いていき、わたしは運転手を務めた。運転していた大型のバンをぶつけ、NOC代は多摩美術大学・芸術人類学研究所が支払った。

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