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人はなぜミニチュアな世界に惹かれるのか?

はじめに

私は展望台巡りが趣味で、よく展望台に行ってはそこからの景色を写真に収めている。

その際、どうしてもミニチュア風の写真を撮りたくなってしまう。
例えばこんなかんじ。

これらは、いずれも東京スカイツリーから撮影した東京の街並みである。

いつも見ている街が、まるでおもちゃみたいに見える。
この不思議で面白くて可愛らしいかんじが、とにかくたまらない。


思い返せば、私は幼い頃からミニチュアなものを見るのが好きだった。

毎年夏になると、父親に近所の市民プールへ連れて行ってもらっていた。
建物の入り口にその市民プールを模したジオラマが飾ってあり、泳いだ帰りに買ってもらうアイスと同じくらいそれを見るのが楽しみだった。

展望台にハマった理由もそうだ。
もともと景色を見ることとミニチュアが好きで、それを同時に楽しめる展望台は私にとって最高のスポットだった。


では、「ミニチュアなものが好き!」というこの感覚は、私だけのものなのだろうか?

私が展望台からミニチュア風に撮った写真を良いと言ってくださる方がいるし、同じようにミニチュア風に撮影している方も結構たくさんいらっしゃる。

そもそも私は、本城直季さんの写真集に影響を受けてこの撮影方法を始めた。
詳しくはこちらの記事で書いているのでぜひご覧ください。


さらに、ミニチュアをテーマにした施設もある。

スモールワールズ 公式サイト|世界最大級の屋内型ミニチュア・テーマパーク (smallworlds.jp)

2020年にオープンした「SMALL WORLDS TOKYO」は、様々なミニチュアが飾られている世界最大級の屋内型ミニチュアテーマパークである。

残念ながら私は行ったことがないが、今行きたい場所トップ3に入っている。
近いうちに必ず行きます。


もしかして、ミニチュアが好きな人って結構多いんじゃないだろうか。
ミニチュアに関するものが世の中にこんなにも存在しているということが何よりの証拠だ。

では、ミニチュアって、どうしてこんなに魅力的なんだろう?
私が思うミニチュアの魅力について改めて考えてみた。


「ミニチュア」と「ジオラマ」の違いとは?

本題に入る前に、似たように使われがちなこれら2つの言葉の違いを明確にしておきたい。
(というか、私がこの2つの言葉の違いを理解していなかったので、この機会に調べてみた。)

ミニチュア(miniature)
小型のもの。小さなもの。特に、精巧な小型模型。
「コトバンク」より引用
ジオラマ(diorama)
背景画の前に人物や動物などの立体模型を置き、照明を当てて、現実の光景のようにみせかける装置、見せ物。
「コトバンク」より引用

ジオラマって思ってた意味とちょっと違った……
Wikipediaによると、ジオラマは「展示物とその周辺環境・背景を立体的に表現する方法で、博物館展示方法の一つである。」とあるので、「メインの展示物+その周辺の景色を含めた模型」みたいな理解でいいのだろうか。

とりあえず、今回の記事では「ジオラマ」よりも包括的な意味の「ミニチュア」という言葉を用いて書いていきたいと思う。


最近のミニチュアに関する思い出

さらに本題に入る前に、私が最近体験したミニチュアに関する思い出を紹介させてほしい。

「早く本題に入れよ!」という声が聞こえてきそうだが、これらは私がミニチュアの魅力について考えるきっかけになった出来事なので、そこそこ重要なのである。


「MINIATURE LIFE展」

先日、ミニチュア写真家・田中達也さんの「MINIATURE LIFE展」へ行ってきた。

MINIATURE CALENDAR (miniature-calendar.com)

田中さんの作品は、Twitterで拝見することがあり、なんとなく知っている程度だった。
知人に誘われ、詳しく調べもせずに行ったところ、会場に着いてびっくり。
想像以上に大盛況であった。

田中さんの作品は、2017年に放送されていた朝ドラ「ひよっこ」のオープニングに使用されていたこともあり幅広い層から注目を集めているのだろう。


このイベントでは、実際に撮影で使われたミニチュアたちを交え、田中さんの作品が数多く展示されている。

実物を見てみると、作品によって大きさの違いはあるものの、想像以上に小さいもので出来ていることに驚いた。

手先が不器用な私には到底作ることの出来ないような細かい作品の数々。
また、登場する一人一人の人物の表情やポーズはそれぞれで、まるでその世界の中で生きているかのように見える。

会場では子供から大人まで幅広い年齢層のお客さんが写真を撮ったり、作品をまじまじと見つめて「すごいねぇ」と感想を言い合ったり、とても楽しそうだった。
やはり、ミニチュアは老若男女に人気があるようだ。


「WHAT MUSEUM」

東京都品川区の天王洲アイルにある「WHAT MUSEUM」。

WHAT MUSEUM | 寺田倉庫 (warehouseofart.org)

ここには建築家や設計事務所の建築模型が保管されている模型保管庫があり、事前に申し込むとその保管庫の見学が出来る。

普段どんな人が参加しているのかは分からないが、やはり建築関係の人が多いのだろうか。
「こんな建築ド素人が行っていいのかな…」という気持ちはあったが、「きっと素敵なジオラマがたくさん見れるんだろう」という興味の方が勝ったため参加してきた。

集合時間になると係の方が保管庫まで案内してくれる。
どんな場所なのかとドキドキしながら部屋の中に入ると、そこには膨大な数の建築模型が所狭しと並べられていた。

WHAT MUSEUMで過去に開催された展覧会のイメージ模型(?)や、実際に存在する建造物のコンペに使用された模型など様々。

きっと建築関係者なら「ここのデザインが斬新で素晴らしい」とか「こんな技術を使うなんてすごい」みたいな深みのある感想が出てくるんだと思うが、あいにく私は建築の知識がゼロだ。

それでもとても面白くて興味深くて楽しすぎた。
細かいところまでじっくり見てしまい、時間が全然足りなかったほどだ。

私のように建築のことを知らない方でも、ミニチュア好きならきっと楽しめるオススメのスポットである。
(保管庫の中は撮影禁止なので、写真を載せられないのが残念……)


ちょうど開催されていた建築模型展も、読んで字の如く建築関係の模型が展示されていて非常に楽しかった。
10月まで行われているようなので、興味のある方はぜひ足を運んでほしい。


ミニチュアの持つ魅力とは

では、ここからが本題。
なぜ人はミニチュアが好きなのだろうか。
思いついた理由をいくつか挙げ、ひとつずつ深掘りしていく。

小さくて可愛い

これは、ほとんどの人に共感してもらえる感覚だと思う。
小さいものは可愛い。

「小さい=可愛い」の歴史は長い。
清少納言の『枕草子』には、小さいものは可愛いということに触れている部分がある。
平安時代を生きた清少納言でさえそう感じていたのだと思うと、なんだか急に親近感を覚える……

というか、人は本能的に小さいものを可愛く感じる生き物なのだ。

それゆえ、小さくて可愛いミニチュアに魅力を感じるのではないか。


緻密で繊細な技術

これも比較的共感してもらえる感覚ではないだろうか。

伝統工芸品、1/12スケールのドールハウス、米粒サイズの折り鶴などなど…自分では出来ないような、緻密で繊細な技術を見せられた時、人は感動を覚える。

それがミニチュアを見た時にも感じられるのだと思う。
めちゃくちゃざっくりした言葉で表すと「よく出来てるね〜」ってかんじだ。


また、ただ小さいだけでなく、細部まで精巧に作られている作品は特に評価される。

「MINIATURE LIFE展」で展示されていたミニチュアも非常に小さい。
ゆで卵と比較すれば、その小ささは一目瞭然だろう。

しかし、それらは頭から爪先まで細かく作られており、まるで生きているかのように感じられる。

そんな緻密で繊細な技術の詰まったミニチュアに魅力を感じるのは至極当然なことだ。


自分とは別の世界を覗き見している感覚

これは、私がミニチュアを好きな理由である。

ミニチュア作品やミニチュア風の写真を見ていると、自分が生きているのとは別世界を見ているかのような、不思議な気持ちになる。

「MINIATURE LIFE展」で見たミニチュアの人形たちも、自分とは異なる世界の住人のように見えた。
一人一人に今まで生きてきたバックボーンがあり、意志を持ってその世界に存在しているように思えたできた。

そんな想像を巡らすことができるところが、ミニチュアの面白さであり魅力のひとつだ。


では、なぜそんな風に感じるのか。
その理由のひとつに、幼少期のごっこ遊びがあるのではないかと思う。

私は子供の頃、シルバニアファミリーやリカちゃん人形を使ったごっこ遊びをしていた。
他にも、レゴブロック、トミカ、プラレールなどを使って同じような経験をした人がほとんどだと思う。

子供たちは自分で人形を動かし、自分で作り上げた小さな世界でストーリーを繰り広げて遊ぶ。
ミニチュアを見た際、小さい頃から備わっているその想像力が働き、別世界を覗いているような感覚を味わえるのではないだろうか。


まとめ

今回は人々を魅了するミニチュアの魅力について考えてきた。
その結果、ミニチュアには様々な観点からの魅力があるということが改めて分かった。

この記事では私が思いつく理由を挙げてるところまでしか書けなかったが、今後は学術的な知識を踏まえた「なぜ人はミニチュアな世界に惹かれるのか?」を探ってみたい。

人間の深層心理とかに迫ったら、もっと面白い発見がありそうな気がする。

特に3つ目に挙げた「自分とは別の世界を覗き見している感覚」に関しては、私の憶測で書いていることばかりなので、もっと科学的根拠が欲しい。
詳しいことをご存知の方がいたら教えてください…!


ミニチュアな世界の可能性

最後に、WHAT MUSEUMの「建築模型展」で出会ったこちらのジオラマ模型をご紹介したい。

こちらは、東日本大震災と大津波によって失われた東北地方の街並みが、ジオラマ模型として復元されたものである。

ミニチュア(ジオラマ)は、建物をつくる前の計画に使われるイメージだった。
しかしこの模型を通して、今はなき過去の景色や人々の思い出を、形あるものとしてコンパクトに保存することも出来るのだと気付かされた。


現実、空想、過去、未来……

ミニチュアな世界が持つ可能性は、その見た目よりもはるかに大きい。

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