2024年度第2四半期 商船三井の決算を読み解く:「純利益2,466億円」は一過性か構造変化か、海運最大手が語る真相
[事業概要]
銭太郎「きらく所長、今日は商船三井の決算分析をお願いしたいゼニ。その前に、改めて事業構造を教えてほしいゼニ」
きらく「商船三井の事業は、大きく4つの柱で構成されているわ」
<商船三井の事業構造>
1. ドライバルク事業:鉄鉱石や石炭、穀物などの原材料輸送
2. エネルギー事業:原油タンカーやLNG船による資源輸送
3. 製品輸送事業:コンテナ船(ONE社)と自動車船による完成品輸送
4. ウェルビーイングライフ事業:不動産、フェリーなど
あおい「それぞれの事業の特徴は違うんですか?」
きらく「ええ。例えば、ドライバルク事業は市況の変動が大きく、エネルギー事業は長期契約が中心。製品輸送は景気動向の影響を受けやすいという特徴があるわ。これは決算を見る上で重要なポイントになるの」
[決算分析]
銭太郎「2024年度第2四半期の決算を見ていきたいゼニ。純利益が2,466億円というのは、どういう意味ゼニか?」
きらく(エスプレッソを淹れながら)「この数字を理解するには、まず海運業界特有の用語と、決算上の指標を理解する必要があるわね」
<用語解説>
・経常利益:本業とそれに付随する金融収支などを含めた利益
・純利益:経常利益から特別損益と税金を加減した最終的な利益
・消席率:船舶の積載可能容量に対する実際の貨物量の割合
・運賃指数:特定の基準時点を100とした運賃水準の変化を示す指標
[製品輸送事業の分析]
きらく「製品輸送事業の利益を詳しく見ていきましょう。第2四半期累計で1,800億円の利益を計上し、前年同期から1,084億円の増加。特に注目すべきは、持分法適用会社であるONE社からの投資利益が1,309億円に達したことよ。これは前年同期と比べて975億円の大幅な増加ね」
銭太郎「なぜそんなに増えたゼニか?」
きらく「喜望峰経由の輸送継続により、欧米向け貨物の船腹需給が逼迫し、スポット運賃が大幅に上昇したのが主な要因よ。実際、アジア発北米向け航路の7月、8月の荷動きは前年同期比18%増を記録したわ」
<用語解説>
・持分法適用会社:出資比率が20%以上の関連会社。業績の一部を出資比率に応じて取り込む
・スポット運賃:その時々の市況で決まる運賃
・船腹需給:船舶の供給量と貨物の需要量のバランス
あおい「他の要因はあるんですか?」
きらく「ええ。円安の進行も大きいわ。第2四半期の平均為替レートは1ドル=153.71円で、前年同期と比べて15円の円安。海運会社は外貨収入が多いため、これが大きなプラス要因になったの。さらに、米国の個人消費が予想以上に堅調で、アジアからの輸出需要が強かったことも追い風になったわね」
[ドライバルク事業の分析]
銭太郎「ドライバルク事業は減益だったゼニよね?」
きらく「ええ。ドライバルク市場の動向を船型別に見ていくと、興味深い傾向が見えるわ。パナマックスは、南米からの穀物出荷最盛期が7月に終わったことで船腹需給が緩和し、全水域で市況が下落したの。一方で、スープラマックス以下の中小型船は、ミネラルや木材製品、鋼材の荷動きが堅調で、底堅く推移したわ」
<用語解説>
・パナマックス:パナマ運河を通航できる最大級の大きさの船舶
・スープラマックス:パナマックスより小型の船舶
・荷動き:貨物の輸送量の動向
[エネルギー事業の分析]
あおい「エネルギー事業はどうだったんですか?」
きらく「エネルギー事業は第2四半期累計で627億円の利益を計上し、前年同期から250億円の増益を達成したの。LNG船事業は長期契約と新造船竣工により安定利益を積み上げ、ケミカル船も好市況を維持したわ」
[下期見通し]
銭太郎「来期の見通しはどうなってるゼニ?」
きらく「2024年度の見通しについて、より具体的に見ていきましょう。下期の経常利益予想は1,159億円と、上期の2,490億円から大幅な減少を見込んでいるの。この慎重な見方の背景には3つの要因があるわ」
あおい「どんな要因なんですか?」
きらく「第一に、2024年は大規模な新造コンテナ船の竣工が続くことで、需給バランスが緩む可能性が高いの。第二に、中国経済の減速による輸入減の影響。特にエネルギー分野では、中国の原油輸入減少の影響が既に表れ始め
ているわ。そして第三に、年明け以降の市況動向の不透明感ね」
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