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日立製作所の2024年度第2四半期決算分析:「アジアのデジタルインフラ」制覇の野望


株式投資を始めようと考えている方、あるいはすでに投資を始めている方にとって、「どの企業に投資すべきか」という判断は常に大きな課題ではないでしょうか。とくに個別株投資では、企業の事業内容や成長性を正確に理解することが、投資の成否を左右する重要な要素となります。

本記事では、日本を代表する企業の一つである日立製作所の最新決算を詳しく分析します。なぜ今、日立製作所なのでしょうか。そこには大きな理由があります。従来の総合電機メーカーから、デジタル技術と社会インフラを融合させた「インフラテクノロジー企業」へと変革を進めることで、投資家にとって新たな投資機会をもたらす可能性があるのです。

対話形式で展開される本記事では、難解になりがちな財務指標や事業戦略をわかりやすく解説します。その分析手法は、他の企業を評価する際にも応用できるはず。決算書の読み方や成長戦略の評価、さらにはリスク分析まで――投資判断に必要な視点を包括的に学んでみませんか。ここで学んだ知見は、今後の投資活動にもきっと役立つことでしょう。

(個別株観測所のオフィスにて)
(きらくは、窓際のソファに座り、資料を広げている)

きらく「今日は日立製作所の決算を分析していきましょう。でもその前に、最近の事業再編で変わった同社の事業構造について確認しておきましょうか」

【説明】事業再編とは、企業が収益性や効率性を高めるために、事業の売却や統合などを行うことです。例えば、業績が悪い事業を売却したり、成長が期待できる事業を強化したりすることを指します。

あおい「はい、整理してみましょう」

0.事業概要:「全セクターの共通言語」が生み出す事業構造

きらく「日立製作所は、大きく3つのセクターを中心とした事業ポートフォリオに生まれ変わったのよ」

【説明】事業ポートフォリオとは、企業が展開している事業の組み合わせのことです。例えば、ある事業が不調でも他の事業が好調であれば全体としては安定するという、リスク分散の効果があります。

銭太郎「以前より随分とすっきりしたゼニね」

きらく「ええ。では、各セクターの特徴を見ていきましょう」

デジタルシステム&サービス(DSS)

「ITやデジタル関連の中核事業ね。大きく3つの事業で構成されているの:

  • フロントビジネス:顧客企業向けのシステムソリューション、実績としては2024年度第2四半期で売上収益2,937億円、Adj. EBITA率11.1%

  • ITサービス:クラウドやセキュリティなどのサービス、売上収益2,606億円、Adj. EBITA率12.9%

  • サービス&プラットフォーム:GlobalLogicによるデジタルエンジニアリングに加え、ストレージやサーバなどのITプロダクツも展開、売上収益2,563億円、Adj. EBITA率8.9%」

【説明】Adj. EBITA率は、その事業がどれだけ効率よくもうけているかを示す指標です。

例えば、お店に例えると:

  • 売上収益100万円のお店で、

  • 仕入れ代や人件費、家賃などの必要な費用を全部引いて、

  • 10万円が手元に残ったとすると、

  • Adj. EBITA率は10%となります

数字が大きいほど、効率よく利益を出せている事業だと考えられます。

【説明】

  • フロントビジネスとは、企業のお客様に直接サービスを提供する事業です。例えば、銀行のATMシステムや企業の業務システムの構築などが含まれます。

  • クラウドとは、インターネットを通じてITリソースを提供するサービスです。

  • GlobalLogicは日立が2021年に買収した企業で、世界中の企業にスマートフォンアプリの開発やデジタルサービスの設計などを提供しています。第2四半期は米ドルベースで前年同期比14%の成長を達成しています。

きらく「特にGlobalLogicの買収により、グローバルでのデジタルソリューション提供力が強化されたわ。ただし、欧州を中心に顧客投資抑制が継続しているのが気がかりね」

【説明】デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、企業活動をデジタル技術で変革することです。例えば、紙の書類を電子化したり、人工知能を活用して業務を効率化したりすることを指します。

グリーンエナジー&モビリティ(GEM)

「環境・エネルギー関連の主力事業ね。主に:

  • 日立エナジー:パワーグリッドや送配電システム、再生可能エネルギー関連。第2四半期の売上収益は5,423億円、Adj. EBITA率10.4%と好調

  • 鉄道システム:車両や信号システム。売上収益2,856億円、Adj. EBITA率5.9%

  • 原子力・電力ソリューション:売上収益694億円、Adj. EBITA率4.7%」

【説明】

  • パワーグリッドとは電力網のことで、発電所から私たちの家庭まで電気を届けるための設備やシステム全体を指します。

  • 再生可能エネルギーとは、太陽光や風力など、環境に優しい発電方式のことです。

  • 送配電システムとは、発電所で作られた電気を家庭や工場に届けるための設備やシステムのことです。

きらく「最近ではタレス社の鉄道信号事業を買収し、モビリティ分野を強化したわ。この買収により2024年度は売上収益2,762億円、Adj. EBITA 263億円の貢献が見込まれているのよ」

【説明】世界的な脱炭素化(CO2排出削減)の流れを受けて、再生可能エネルギーや環境に優しい交通システムへの需要が高まっています。特に日立エナジーは2024年度第2四半期末時点で5.3兆円の受注残を抱えており、前年度末比で14%増加しています。

コネクティブインダストリーズ(CI)

「産業・社会インフラ関連の事業群ね:

  • ビルシステム:エレベーターやビル管理。売上収益2,422億円、Adj. EBITA率13.0%。ただし中国の不動産市場調整の影響を受けているわ

  • 生活・エコシステム:家電、空調。売上収益942億円、Adj. EBITA率8.5%

  • 計測分析システム:半導体製造装置や医療機器。売上収益1,808億円、Adj. EBITA率11.3%

  • インダストリアルデジタル:産業向けデジタルソリューション。売上収益1,012億円、Adj. EBITA率13.0%

  • 水・環境ソリューション:売上収益495億円、Adj. EBITA率10.2%

  • インダストリアルプロダクツ:産業機器や部品。売上収益1,209億円、Adj. EBITA率9.6%」

【説明】社会インフラとは、私たちの生活に必要不可欠な基盤となるシステムやサービスのことです。例えば、エレベーター、水道、医療機器などが含まれます。需要が安定していることから、継続的な収益が期待できる分野です。

あおい「自動車部品事業の日立Astemoについては、どうなったんですか?」

きらく「ええ、重要なポイントね。2023年10月に日立Astemoの株式の一部を譲渡して持分法適用会社となったの。これは収益性の高い社会インフラ事業に経営資源を集中するという戦略の一環よ」

【説明】持分法適用会社とは、議決権の20%以上を保有しているものの、支配権は持っていない関連会社のことです。例えば持分が20%の場合、その会社の利益の20%分だけが日立の連結決算に含まれることになります。

銭太郎「事業ポートフォリオの見直しが、かなり進んでいるゼニね」

きらく「その通りよ。特に注目すべきは、各セクターで『Lumada』という共通のデジタルプラットフォームを活用している点ね。2024年度第2四半期のLumada事業の売上収益は3,100億円で、前年同期比18%も成長しているのよ。さらに最近では、シンガポールの通信大手シングテルと次世代データセンターやGPUクラウド分野で戦略的提携を拡大するなど、新たな事業機会も着実に獲得しているわ」

【説明】

  • Lumadaは日立が開発したデジタル技術を活用するためのプラットフォームです。例えば、工場の機械の稼働データを分析して故障を予測したり、エネルギーの使用を最適化したりするソリューションを提供します。

  • 前年同期比18%成長とは、前年の同じ時期と比べて売上が18%増加したことを意味します。

きらく「これにより、セクター間のシナジーを着実に生み出しているわ。例えば、日立エナジーがGlobalLogicやHitachi Digital Servicesと連携して設備資産の統合管理等のデジタル事業を強化しているのよ」

【説明】シナジーとは、複数の事業や機能を組み合わせることで生まれる相乗効果のことです。例えば:

  • エレベーター事業(CI)で得た建物の利用データを、ビル管理システム(DSS)に活用

  • 鉄道システム(GEM)での経験を工場の制御システム(CI)に活かす
    といった形で、より良いサービスを提供できます。

あおい「それでは、この新しい事業構造を踏まえて、決算の分析に入っていきましょうか」

きらく「ええ、その通りね。この事業再編の効果が、どのように数字に表れているか、しっかり見ていきましょう」

【説明】決算分析では、以下の点に注目することが重要です:

  1. 売上高や利益は増えているか

  2. その増減の理由は何か

  3. 今後の見通しはどうか

  4. 事業再編の効果は出ているか

特に事業再編後は、想定していた効果(収益性の向上など)が実際の数字に表れているかを確認することが大切です。

1.全体業績:"望まれた売上ダウン"の戦略的意味

あおい「まずは全体像から見ていきましょう」

きらく「表面的には連結売上収益が2兆3,345億円で前年同期比11%減となっているの。でも、これは日立Astemoの非連結化という構造改革の結果よ。実は、この"減収"は日立にとって望ましい変化なの」

【説明】
・売上収益(売上高)は企業の営業活動による総収入を表します
・前年同期比とは、前年の同じ期間と比較した変化率のことです
・連結とは、親会社と子会社の業績を合算して集計することです
・非連結化とは、これまで連結していた子会社を連結対象から外すことです

銭太郎「どういうことゼニ?」

きらく「自動車部品事業を切り離すことで、より収益性の高い社会インフラ事業に経営資源を集中できるようになったのよ。実際、3セクターだけで見ると売上収益は11%増、Adjusted EBITAは23%増の2,493億円まで伸びているわ。これは事業ポートフォリオ改革の成果が如実に表れた数字ね」

【説明】
・経営資源とは、ヒト・モノ・カネ・情報など、企業が持つ経営上の資産のことです
・収益性とは、投資した資金に対してどれだけ利益を生み出せるかを示す指標です
・Adjusted EBITA(調整後EBITA)は、企業の実質的な収益力を示す指標です
・EBITAは「利息・税金・のれん償却前利益」の略で、本業での稼ぐ力を表します
・%増の表記(例:23%増)は、前年と比べて23%分だけ増加したことを示します

あおい「確かに収益性が大きく改善していますね」

きらく「そうなの。特筆すべきは、Adjusted EBITA率が1.0ポイント改善して10.7%になった点よ。これは単なるコスト削減ではなく、高付加価値事業への転換が進んでいることを示しているわ」

【説明】
・Adjusted EBITA率は、売上収益に対するAdjusted EBITAの比率です
・例えば10.7%とは、売上100円に対して10.7円の利益を上げていることを意味します
・ポイント改善(例:1.0ポイント改善)とは、率の絶対値が増加したことを示します
・コスト削減は支出を減らすことで利益を増やす方法です
・高付加価値事業とは、技術力や独自性を活かしてより高い利益率を実現できる事業のことです
・事業の転換とは、企業が主力とする事業分野を変更することを指します

2.セクター別の分析:1兆7000億円の大型受注が示す日立の変貌

セクター別分析とは、企業の各事業部門の業績を個別に分析することで、どの事業が好調か、また課題があるかを明確にする手法です。
決算分析では、以下の主要な指標に注目します:
・前年同期比:前年の同じ期間と比べての増減
・利益率:売上に対する利益の割合(高いほど効率的に利益を生み出せている)
・成長率:ある期間での伸び率
・受注高:将来の売上につながる受注済み案件の総額

デジタルシステム&サービス(DSS)

きらく「DSSの成長は、日本企業のDX投資に対する姿勢の変化を如実に表しているわ。上期の受注高が1兆5,222億円と9%増加し、売上収益も前年同期比5%増と着実な成長を示しているわ」

【説明】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して業務やビジネスモデルを変革することです。例えば、紙の書類を電子化したり、手作業の業務を自動化したりすることが含まれます。

銭太郎「なぜゼニ?」

きらく「これまで日本企業は、DX投資に慎重だったでしょう?でも、人手不足の深刻化や競争力強化の必要性から、もはやDXは"選択"ではなく"必須"になってきているの。特に注目すべきは、ITサービス部門の売上収益が6%増加していることよ。これはクラウドやセキュリティ関連等のLumada事業が好調に推移している証拠ね」

【説明】ITサービスとは、クラウドコンピューティング(インターネットを通じたサービス提供)やセキュリティ対策など、企業のIT活用を支援するサービスのことです。

あおい「Adjusted EBITA率も13.4%と高水準ですね」

【説明】Adjusted EBITA率は、事業の収益性を示す重要な指標です。この数値が高いほど、売上に対してより多くの利益を生み出せていることを意味します。13.4%という数値は、売上100円あたり13.4円の利益を生み出していることを示します。

きらく「ええ。これは単なるシステム開発ではなく、Lumadaを活用した高付加価値ソリューションの提供が増えているからよ。つまり、"作る"から"解決する"へとビジネスモデルが進化している証拠ね」

グリーンエナジー&モビリティ(GEM)

きらく「GEMの急成長は、世界的なエネルギー転換の動きを捉えた結果なの。第2四半期の受注高が前年同期比84%増の1兆7,093億円という数字は衝撃的ね」

銭太郎「かなりの伸びゼニね。どういう背景があるゼニ?」

きらく「3つの要因があるわ。第一に、送電網設備等の更新需要。第二に、再生可能エネルギー関連の需要拡大。そして第三に、データセンター関連ソリューションの伸長よ。さらに、タレス社GTS部門の買収も大きく貢献しているわ。具体的には、この買収により売上収益で768億円、Adjusted EBITAで46億円のプラス効果が出ているのよ」

あおい「Adjusted EBITA率が2.3ポイント改善して7.4%になっていますが、これはまだ改善余地がありそうですね」

きらく「その通りよ。これは投資家にとって重要なポイントなの。現在は事業統合の過程にあり、タレス社GTS部門の統合関連費用なども発生している段階。これらが収束し、統合効果が本格化すれば、さらなる収益性の向上が期待できるわ」

コネクティブインダストリーズ(CI)

きらく「CIは売上収益が前年同期比2%増と着実な成長を見せているわ。特に注目したいのは、計測分析システム部門ね」

銭太郎「どういうところがゼニ?」

きらく「計測分析システムが前年同期比3%の成長を達成しているの。特に生化学免疫自動分析装置の売上増は、医療のデジタル化という大きなトレンドを捉えているわ。その結果、セグメント全体のAdjusted EBITA率も11.2%まで上昇し、前年同期比で1.1ポイント改善したのよ」

【用語解説】
・計測分析システム:様々なデータを測定・分析する装置やシステムのことです。
・生化学免疫自動分析装置:血液などの検体から様々な検査項目を自動で分析する医療機器です。
・医療のデジタル化:従来のアナログな医療機器や記録をデジタル化し、より効率的で精度の高い医療サービスを実現することです。
・統合効果:買収した企業との事業統合により得られる効率化や相乗効果のことです。

3.地域戦略:欧州と北米で急成長する日立製作所

きらく「地域別の数字を見ると、日立の地域戦略の変化が見えてくるわ。3セクター合計で欧州が+26%、北米が+17%という成長を見せている一方、中国は+3%に留まっているの」

【説明】地域別の売上高は、企業の地域ごとの事業展開の状況を示す重要な指標です。成長率の違いは、各地域の経済状況や企業の戦略的判断を反映しています。

あおい「地政学的リスクへの対応でしょうか?」

【説明】地政学的リスクとは、国際政治や外交関係が企業活動に与える影響のことです。例えば、米中対立による貿易制限や、ロシア・ウクライナ情勢による原材料価格の上昇などが該当します。企業は、こうしたリスクを考慮して事業展開を決定する必要があります。

きらく「その通り。特に欧州での成長は、エネルギー安全保障への関心の高まりと、グリーン化投資の加速を捉えた結果よ。一方、中国市場では不動産市場の調整もあって慎重なスタンスを取っているの。これは賢明な判断ね」

【説明】エネルギー安全保障とは、安定的なエネルギー供給を確保することです。特に欧州では、地政学的な緊張を背景に、エネルギーの安定供給と環境配慮型のエネルギーシステムへの投資が加速しています。

【説明】グリーン化投資とは、環境に配慮した設備やシステムへの投資のことです。例えば、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー設備、省エネルギー機器などが該当します。

【説明】不動産市場の調整とは、不動産価格や取引が適正水準に向かって変動することを指します。中国では近年、不動産セクターの過熱感が問題視されており、その調整局面が続いています。

4.成長戦略:「アジアのデジタルインフラ」制覇の野望

成長戦略とは、企業が将来的な発展のために立てる計画のことです。市場動向や技術革新を見据えた中長期的な視点が重要となります。投資家は、その戦略の実現可能性や市場の成長性を評価して投資判断を行います。

きらく「シングテルとの提携は、単なるデータセンター事業の拡大以上の意味があるわ」

【説明】シングテル(Singapore Telecommunications Limited)は、シンガポール最大の通信事業者で、アジア太平洋地域で主導的な地位を持つ企業です。シンガポール政府系投資会社テマセク・ホールディングスが主要株主となっています。
同社は:

  • シンガポールの通信インフラの約8割を運営

  • オーストラリア、インドネシア、タイ、フィリピンなどでも事業を展開

  • アジアのデジタルトランスフォーメーションを牽引する存在として注目されている

【説明】データセンターとは、サーバーやネットワーク機器を設置し、大量のデータを処理・保管する施設のことです。デジタル社会の重要なインフラとなっています。近年の電子商取引(EC)やクラウドサービスの普及により、データセンターへの需要は急増しています。

【説明】企業提携とは、複数の企業が協力関係を結び、それぞれの強みを活かして事業を展開することです。競争が激しいグローバル市場では、このような提携が重要な戦略となっています。

銭太郎「どういうことゼニ?」

きらく(真剣な表情で)「これはアジアにおけるデジタルインフラの主導権を握るための戦略的な動きよ。シングテルとの提携では、特にGPUクラウド分野での協業を通じて顧客企業のAI導入支援を強化していく。日立が目指すのは、社会インフラとデジタルの融合。その具体例として、日立エナジーがGlobalLogicやHitachi Digital Servicesと連携した設備資産の統合管理や、鉄道システムでのNVIDIA AIテクノロジーを活用したデジタルソリューション『HMAX』の展開があるわ」

【説明】GPUとは、Graphics Processing Unit(画像処理装置)の略で、画像処理に特化した演算装置です。最近では、AI(人工知能)の処理にも不可欠な技術となっており、NVIDIA社などGPUメーカーの株価上昇につながっています。

【説明】クラウドとは、インターネットを通じてコンピューターリソース(サーバー、ストレージ、ソフトウェアなど)を提供するサービスのことです。企業はクラウドを利用することで、大規模なIT投資を抑えながら必要な機能を利用できます。

【説明】デジタルインフラとは、デジタル社会を支える基盤となる設備やシステムのことです。データセンター、通信網、各種プラットフォームなどが含まれ、今後の経済成長に不可欠な要素として注目されています。実際に、日立のLumada事業は2024年度に売上収益2兆7,500億円(前年比18%増)を見込むなど、着実な成長を示しています。

【説明】「主導権を握る」という表現は、その市場やビジネス領域で中心的な役割を果たし、高い市場シェアや収益性を確保することを意味します。投資判断においては、企業がどの分野で主導権を握れる可能性があるかを見極めることが重要です。

5. 通期見通し:「想定以上に早い」成果

通期見通しとは、その事業年度(1年間)全体の業績予想のことです。上半期実績を踏まえて修正されることが多く、企業の今後の見通しを理解する上で重要な情報となります。

きらく「通期見通しの上方修正は、単なる業績好調以上の意味があるわ。3セクターで売上収益1,500億円増、Adjusted EBITA 195億円増という修正は、構造改革の成果が想定以上に早く顕在化していることを示しているの」

【説明】売上収益とは、企業の本業による売り上げを示す数値です。日本では「売上高」とも呼ばれ、企業規模や成長性を測る基本的な指標です。

【説明】構造改革とは、企業が収益性や競争力を高めるために、事業構造や組織を抜本的に見直すことです。短期的にはコストが発生しますが、中長期的な成長のために重要な取り組みとされています。

【説明】Adjusted EBITAとは、事業の実質的な収益力を示す指標です。一時的な要因を除いた本業の収益性を評価する際に重要視されます。

あおい「各事業セグメントの収益性の改善が顕著ですね。特にグリーンエナジー&モビリティのAdjusted EBITA率が8.7%まで改善している点が印象的です」

【説明】事業セグメントとは、企業の事業を種類や地域などで区分したものです。セグメント別の分析により、どの事業が好調か、どの事業に課題があるかを把握することができます。

【説明】EBITA率は、売上高に対する利益の割合を示します。この数値が高いほど、効率よく利益を生み出せていることを意味します。

きらく「ええ。日立エナジーでは受注残が5.3兆円まで積み上がり、生産効率向上で収益性も改善しているわ。デジタルシステム&サービスでも、国内ITにおけるDX・モダナイゼーション需要を着実に取り込んでいるのが分かるわね」

【説明】受注残とは、受注済みだが未だ売上計上されていない案件の総額です。将来の売上を予測する上で重要な指標となります。

【説明】生産効率とは、投入した経営資源(人員、設備など)に対してどれだけの生産成果が得られたかを示す指標です。効率が改善されると、同じコストでより多くの製品・サービスを提供できるようになります。

きらく「結論として、この決算から見えてくるのは、日立が"インフラテクノロジー企業"として着実に進化している姿よ。その中でもGlobalLogicが前年同期比18%増と成長を続け、グリーン化、デジタル化の需要を的確に捉えている点は、特に評価できるわ」

【説明】前年同期比とは、前年の同じ期間と比較した増減を示す指標です。季節要因を除いた実質的な成長率を把握するために用いられます。

【説明】企業評価では、現在の業績だけでなく、成長市場での事業展開や、その成功度合いも重要な判断材料となります。特に環境(グリーン)とデジタル分野は、今後の成長が期待される市場です。

銭太郎「今後の株価材料としても期待できるゼニね!」

【説明】株価材料とは、株価の上昇または下落の要因となる情報のことです。業績改善や成長戦略の進展は、一般的に好材料として評価されます。

あおい「はい。デジタルシステム&サービスのAdjusted EBITA率13.5%、コネクティブインダストリーズも11.5%と、収益性の改善トレンドが続いていることは、市場でも好意的に評価されそうですね」

【説明】トレンドとは、一定期間における数値の傾向のことです。収益性の改善トレンドとは、利益率が継続的に向上している状態を指します。

きらく「ただし、為替変動リスクや地政学的リスクには要注意。特に欧州での成長が目立つ一方で、中国ではビルシステムの需要減少が見られるなど、地域によって状況が異なるのよ。このような事業環境の変化への対応力が、今後ますます重要になってくるわ」

【説明】為替変動リスクとは、外国為替相場の変動が企業業績に影響を与えるリスクのことです。海外売上比率が高い企業ほど、このリスクの影響を受けやすくなります。

【説明】地政学的リスクとは、国際政治や各国の関係性に起因する事業リスクのことです。貿易規制や政治的対立などが、企業活動に影響を与える可能性があります。

【説明】事業環境とは、企業を取り巻く外部環境のことで、経済状況、競合状況、規制環境、技術革新などが含まれます。これらの変化に適切に対応できるかどうかが、企業の競争力を左右します。

【説明】投資判断では、このように成長性(売上の伸び)や収益性(利益率)といったプラス要因だけでなく、様々なリスク要因も総合的に考慮する必要があります。

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【続きの内容】
6. 日立製作所の辛口評価:日立製作所の事業戦略を採点

きらく(エスプレッソを飲み干しながら)「では最後に、各項目について辛口で評価をしてみましょうか」

あおい「お願いします。きらくさんの率直な評価を聞かせてください」

きらく「それでは、主要な評価項目について、5段階で評価していくわ」

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