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「REGENERATION 銃弾のスラム 再生の記録」 (NHKスペシャル ドキュメンタリー)


世界でも殺人事件が多発するエリア、危険なギャングの縄張りにカメラが潜入する。南アフリカ・ケープタウン。数十ものギャングが抗争を繰り返すスラムに一人通い続ける、牧師のアンディ・スティールスミス。極度の貧困から犯罪に手を染めるギャングたちの更生を模索してきた。パンデミックを逆手に取り、ある巨大ギャングの幹部の更生に乗り出すが、抗争の激化で幹部の男の身に危険が迫っていた。知られざる人間再生の物語。
(公式HPより引用)

興味本位で録画して見たが、非常に興味深いドキュメンタリーだった。

現地での若年層ギャングによる殺人、流血、武器売買、麻薬の密売など、いわゆる「警察密着24時間」みたいな内容から始まる。
日本におけるそれとは比較にならないほど、深刻で根深いものがある事は直ぐに判るのだが、解決する手段なんてあるのか?
無理よね、と思うスラム街のギャング達と視聴者に挑むのがアンディ牧師。

私と同年代の彼は投資家として巨万の富みを築いていながら、真逆の世界へ身を投じる。
「そりゃお金持ちだもん、怖いものなんてないよね」と思いかけた。
何故彼が発砲されたり刺殺されないのか、若干不思議な気もしたが、そこは明日の生命をも保証されない最悪の場所。
それなりの覚悟を持ってギャングと相対するアンディ牧師には、やはり頭が下がる。
偽善では遂行できない真摯な姿勢には、彼の真心を感じた。

「まだまだ白人優位な南アフリカで、下位の黒人貧民層が歪みあって殺し合ってはいけない」と、敵対するギャング同士の和解を画策するアンディが、薩長同盟に賭けた坂本龍馬と重なって見えた。

ギャング団のボスに希望を託し、それに応えようとする彼らの姿も感動的だった。
違法な手段でしか稼げず、静けさを生命の危険ととらえ、恐怖と隣り合わせで生きていくしかない彼ら。他人の役に立つことを喜びと感じられる心があるのならば、普通の人間らしく生きていくこともできると思う。

それを可能にするのが、アンディ牧師の熱い心と潤沢な資産であるならば、思う存分やって欲しい。私たち凡人にはできない事だからこそ、遠く離れた日本で応援のエールを送りたい。

全ての人が生きがいを持つために、まずは心身の安心と平和が何より大切なのだと、改めて思い知った番組だった。
再放送もあるようなので、是非多くの方に見てほしいと思う。


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