シューマンのオーボエ協奏曲を実現すると決めた。その3

 シューマンについてそれほど思い入れもないのに、なぜ協奏曲を演奏すると、いや「実現する」と決めたのか?

 まずそのような曲は存在しない。当然ながら誰も演奏していないので、実現するという言葉を使った。とはいえ元にするべき曲はある。チェロ協奏曲である。当時演奏されるにあたって一騒動起こった曲、そして喜ばしいことに全く素晴らしい曲。

 そしてシューマンの特性として、演奏される楽器の音色にそれ程こだわりが無いこと。どの音色で奏でられようと、私の音楽が伝われば良いのだというような方向性、それは室内楽曲からも理解できる。

 さらに時代区分的に初期ロマン派であること。まだチェロの独奏の可能性は開発途上であり、例えばヴァイオリン曲のような技巧的な音使いは出てこないのでオーボエでも技術上演奏不可能とまでは言えないと思われることもある。

 もう一つ、イ短調という調性が私の特別な仕様のオーボエに適している。通常の楽器より半音低いA,ラまで演奏できる仕様なのはこの調性にとって大変重要である。
 
 全部挙げられたか分からないけれどとにかく、見つけた!という感覚で私はこの曲の譜面を眺めた記憶がある。そして最初のフレーズを吹いて思ったのだ。この曲はオーボエに向いていると。

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